第25話 初めてのパーティ
初めてのパーティ
パーティ【party】
① 社交的な集まり・会合。
② 仲間。一行。特に登山で、行動をともにするグループ。
「あの・・・なんですか?コレ」
「前が見えないぞどうなってんだ」
「しーっ!もう結構会ってる人いるけどお初の人もいるから!」
ライオンに呼ばれ、声の先に行ってみたら着くなりロバとライオンに真っ黒な布を被せられた二人。どうやら今まであったことのない先輩達にはこの布をとってお披露目するようだ。
「おーい、エジプトガン、そっちどうだー?大丈夫そうかぁー?」
「OK、準備整った!始めるか?」
「よーし、お膳立て頼むぞ!今俺も行く」
その声の直後ドタドタという足音が聞こえ、シーンとする。
「今どうなってるんだ・・・?わからん・・・全然わからん!」
「さっきも言ってましたね、ハマってるんですか?」
「いや、言ってみたら気持ち良くて・・・」
「ほらほら、静かにしなさい二人共。もうすぐしたら出番だから」
「あ、ロバいたんだ」
「いましたよ!?」
その頃会場(カーテンで仕切っただけ)
メンバー一同、十人弱程のフレンズが縦長に並べられたテーブルに座り、一人前に立つエジプトガンを見つめていた。
(何コレ怖い怖い怖い!?なんで司会なんて俺がやらなきゃぁ・・・下っ端だからか、そうでした)
「よしっ始めよう!ほら、エジプトガン!はやくはやく!」
パンっとライオンが手を鳴らし呼びかける。
「ッハイ!えーでは、これよりクリスマスパーティを始めます!という前に・・・先日、我々の新しく加わった仲間を紹介しようと思います!」
「では、どうぞ!」
カーテンからまず出てきたのはロバ。二つの黒い物体を引き連れている。
「・・・なにあれ」
そう発したのはまだ二人を知らないフレンズ。
グレーを基調としたブレザー風の服と、独特な目付きに大きな尻尾が特徴的である。
「あ、チベたん初めてだっけぇ?」
「・・・そう。知らない子達・・・カグヤは知ってるの?」
「知ってるよぉ、ね?クロジャ」
「ああ、良さそうな新人だ。ほら、もう布取るらしいぞ」
前にを向くと二人の布が取られようとしている。
「では、お披露目〜!」
ロバがそう言って、エジプトガンとそれぞれ布を外す。
「では、二人とも自己紹介」
「は、はい!トキです、よろしくお願いします!」
「ツチノコだ、よろしく頼む」
パチパチと拍手が起こる。トキ達は照れくさそうな顔で鼻を撫でたり頭をかいたりしている。
そんな時、スッと立ち上がる一つの影。
「チベたん・・・?」
立ち上がったチベたんと呼ばれた彼女。ズイズイと新入り二人に近づいて行き、目の前で止まる。
対してトキは見つめられビクビク怯え、ツチノコはなんだろうかと不思議そうな顔をする。
十数秒の沈黙の後、彼女がハッとして口を開く。
「・・・私、はじめまして。チベットスナギツネ・・・監視班。チベスナでもなんでもいいよ・・・」
「ええと、チベスナ先輩?よろしくお願いします!」
「・・・それなら・・・チベ先輩の方がいいかな・・・?」
「す、すいません!チベ先輩、改めてよろしくお願いします!」
「よろしく、チベ先輩?」
「・・・よろしく、仲良くしてね・・・?」
そう言ってトコトコと元の席に戻るチベスナ。
その様子を見たエジプトガンが口を開く。
「・・・では、改めてクリスマスパーティ兼、二人の歓迎会を始めまーす!」
一同から歓声が上がり、パーティが始まる。
「お酒飲む方ー」
ロバが声掛けすると、トキ以外のみんなが手を挙げる。
「トキさんは?」
「私は弱いらしくて・・・遠慮しときます」
「ふーん、まぁ今日は主役の一人だから強制だけど」
「えぇ!?」
「なーロバー、クリスマスパーティなのにビール?シャンパンとかワイン無いのー?」
「あのね、ライオンさん。貴方が今日って急に決めたの。そんな洒落たものはウチにありませんよ。それとも日本酒がいいですか?」
「ちぇ、ビールでいいけど・・・」
そんな会話をしながらロバがくるくると席を周りビールを注いでいく。トキのグラスには少しだ。
「はい、ツンちゃんはコレ」
そう言ってロバがツンのグラスに注いだのはオレンジの液体。
「あれ?僕もビールがいいんだけど・・・」
「ダメです。ツンちゃんが酔うとえらいことにりますから、オレンジジュースで」
「ひどい!?」
「全員回りましたかね?じゃあ、メリクリで乾杯!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
そこからは早かった。みんなビールをぐびぐびと流し込み、だんだんと酔って楽しいムードが濃くなっていく。
「あっれぇ?トキちゃん飲まないのぉ?」
「カグヤ先輩・・・やっぱりその、飲んでいいものか・・・」
「大丈夫だよぉ、ね?ロバ」
「そうですよ、飲んじゃって飲んじゃって!」
そう言って二人に挟まれるトキ。すると、後から白い影。
「そうそう!トキっちも飲め飲め!」
「ツン先輩!?キャラ違いません!?」
「なんでツンちゃんも飲んでるのかなぁ・・・?」
ツンの声を聞くなり怖い顔をするロバ。
「エジプトガンにくれって言ったらくれた!」
「エジプトガン、なんであげちゃうの?」
「いや・・・先輩だし・・・」
「もうダメですよ?先輩でも断ることは断ってね?」
「はぁい・・・」
「で!で!トキちゃんも飲めって!」
そう言って強引にトキの口にグラスを運ぶツン。
「や、やめてください!・・・んっ・・・んぐ・・・」
ついに飲んでしまう。口を離す暇さえ与えられずに全部飲みきってしまう。
「えへへ、どう?」
「うー、やめてくださいよツン先輩・・・」
「おいしい?」
「好きですけど・・・飲んだ後が・・・」
「あっはっはっ!トキ、顔真っ赤!よっわーい!」
「ツンちゃん・・・?明日、覚悟してくださいね?」
「ロバこわーい!」
「はぁ・・・これだから飲ますなって・・・トキさん、大丈夫?」
本当に顔がまっかっかになっているトキにロバが語りかける。
「ふぁ・・・ろばしゃん・・・?」
「あらぁ・・・いけないなぁコレ?ツチノコさーん、トキさん酔っぱらっちゃったんだけど対処法わかる?」
遠くでライオン達に大量に飲まされていたツチノコが振り返る。
「トキが?私も初めてだが・・・」
「診てあげてー?」
「了解」
ロバと場所を交代してぺちぺちとトキの顔をはたくツチノコ。
「大丈夫かぁ?」
「はれ・・・つちのこ、きょうはいつもよりかわいいですね・・・?」
「・・・何言ってんだ、ほら、何本に見える?」
人差し指だけを立ててトキに見せる。
「・・・つちのこ」
「違う、何本か聞いてるんだ」
「つちのこがふたり・・・?」
(ダメだ・・・)
「つちのこ、ぎゅー」
そう言ったかと思えば両手を使い抱きしめてくるトキ。
「わわっ、何を・・・」
「つちのこしゅき・・・」
「・・・本当に大丈夫か?」
「ツチノコ強いなぁ・・・」
ライオンが漏らす。トキをツチノコに任せロバはライオン、黒酢の二人と四人で輪になっていた。
「そうなんですか?確かにさっき見た所全然酔って無かったですけど」
「すごいよぉあの子。わたしだったらもうダウンしてるかなぁ」
「私もだ。既に潰れて横になってる」
「パトロール一番の酒豪クロジャがダメなレベルですか・・・」
そう言ってグッとグラスを空にする。
「ロバ、お前が一番強いよ・・・酔ったの見たことないもん」
「えぇ〜?ライオンさんそれ本気で言ってます?」
「本気」 「同意」 「カグヤもそう思いますぅ」
「・・・あーお酒おいし」
(((認めようとしない!?)))
そんな時、遠くからツチノコの声。
「誰か・・・ちょっと助けて」
「どうしました?」
「トキが・・・」
「やれやれ、見にいくか」
「ロバが行くから大丈夫ですよ、飲んでてください」
ロバが見に行くとツチノコの腕にひしと抱きつき肩に頭をのせるトキの姿があった。
「あららー・・・」
「どうしよう」
「つちのこだいすき・・・つちのこはわたしのことすき?」
「うん、そりゃ好きだけどとりあえず離れて?」
「ちゅーする?」
「トキ!?」
「すいません、ロバは戻ります。あとはお楽しみください」
「待って!?」
ロバはニコニコと踵を返しライオン達のグループに戻って行ってしまった。
取り残されたツチノコと彼女をぼうっとした顔で見つめるトキ。
「・・・しないの?」
「あのなトキ。さっき言ってたろ?人前ではしないって」
「いまだれもみてない・・・」
「確かにそれはそうだけど・・・だからって人がまわりにいるんだぞ?」
「うん・・・わかった」
「ああ・・・それに、女同士だとおかしいんだろう?わざわざそんなことしなくてもいいさ」
そう言ってトキの顔を見る。すると、どこか悲しげな顔をしていた。
「・・・やだ・・・?」
「いや、その嫌とかじゃなくて!あくまで人前だし・・・トキ?」
肩のトキは夢の中に行ってしまったようだった。
「寝ちゃったか・・・」
その時、背後から急に声がかかる。
「・・・続き、聞かせて・・・?」
「うわ!?・・・チベ先輩?」
「・・・あなたとトキ・・・どんな関係・・・?」
「・・・同居人で親友。なんだけど・・・最近、なんか変に見られることが多いんだよな」
チベスナが正面に座り目を合わせてくる。
「・・・そうじゃない。・・・貴方は彼女をどう思ってるの・・・?」
「好き。だけど、好きだっていろんな種類があるだろ?」
じいっとその独特な目付きで見つめてくるチベスナ。周りはガヤガヤと騒いでいるのに時計の音が聞こえそうな程の緊張が走る。
「・・・ツチノコ、あなたはまだ自分の気持ちに気がついてない。はやく気がつくと・・・いいね」
「気がついてない?」
「・・・経験者が言うから多分間違いない。後悔しないようにね・・・私みたいに」
そう言ってチベスナは元いたエジプトガンやツン達の席に戻ってしまった。
「気がついてない・・・何にだ?」
「ケーキ食べよう!」
ライオンが唐突に声をあげる。それを聞いたロバが慣れた手つきでケーキを人数分切り分け、配っていく。
「トキ?ケーキ食べるぞ?」
「けえき?」
寝ている間に体制を膝枕に変えたツチノコがトキに語りかける。
「そう、私達で買ってきたやつ。あ、ありがとうロバ」
ロバが優しげな顔でコトンとケーキを二切れ置いていく。
「たべたいけど・・・おきあがれない。ちからはいらない・・・」
「はいはい、ほら、あーん」
「あーん・・・」
口を開けるトキにいつぞやのようにケーキを乗せたフォークを入れる。ぱくんと口を閉じたのを確認して、フォークを引き抜き、もぐもぐと口を動かす彼女を見つめる。
「おいしぃ・・・」
幸せそうににっこり笑ってトキは目を閉じてまた寝息を立て始めてしまった。
「また寝ちゃったかー、私が貰っちゃお・・・」
そう言ってトキを膝に乗せたままツチノコもケーキを食べ始めた。
しばらくし、みんなが酔いつぶれ、パーティは自然解散。もう日付けは変わっていた。
ロバが酔っていないロバとツチノコ、チベスナの三人で片付けをする。
「チベスナは酔わないのか?」
「・・・私は・・・あんまり飲んでないから・・・」
「チベたんも酔うとすごいよ〜?『
「・・・らしいから、あんまり飲まない。・・・ロバもすごいけどね・・・?」
「え〜?嘘つき、ロバは酔ったことないですよ〜?」
「・・・知らなくていいよ・・・ほんと・・・凶暴だから」
「・・・片付け片付け」
(逸らした!?)
「あらかた終わりですね、二人とも泊まってきます?どうせみんなここで寝てくから」
「・・・私は帰る。おやすみ、お疲れ・・・」
「私もだな、トキ担いでくよ」
「あら、そうなんですか?じゃあさよなら、おやすみね」
ロバに見送られ、すやすや眠るトキをおぶり手に健闘賞で貰ったケーキを持って事務所を出る。
「ただいま」
誰もいない家に帰り、トキをベッドに下ろす。ケーキを備え付けの小さな冷蔵庫に入れ、トキに並んで横になる。
ふと、さっきチベスナが話していたことを思い出す。
「気がついてない気持ちか・・・わからんな」
「なにが?」
「わっ!?起きたのか?」
横を向くと薄く目を開いたトキ。
まだ酔いが醒めないのか、顔がほんのり赤い。
「ねぇつちのこ・・・ふたりだけだね」
「? 急にどうした?」
「ひとまえじゃないから・・・いい?」
「え?」
いつの間にか、夕方のように頬にトキの顔があった。トクンと胸が跳ねる。顔が熱い。
「かわいい・・・」
「トトトトキ?急に何を・・・?」
「おやすみ・・・」
そう言って彼女はまた目を閉じる。
「なんか・・・ずるいな」
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