第23話 初めての任務

 にんむ【任務】

 課せられた仕事。果たすべきつとめ。



「ではでは。今日の先生はコチラの方!」


 翌朝、ロバが紹介したのはまた初めましてのフレンズ。クロジャに似た風貌だが対照的に真っ白。耳は丸ではなくツンと尖った三角型をしている。


「ツンドラオオカミ、特に通称はない、よろしく・・・」


 少し顔を赤くし、目線を逸らしながら挨拶をするツンドラオオカミ。


「よろしくお願いします!」


「よろしく」


「ツンドラオオカミさぁん?このロバがせっかく付けてあげた呼び名忘れちゃったんですかぁ?」


 横からニヤニヤと飛び出して来たロバが、何やらツンドラオオカミに話しかける。


「いいいやだって!あれは・・・流石に恥ずかしいし・・・」


「はぁいツチノコさん、トキさん?コチラが」本日の先生、ツンちゃんで〜す!」


「ちょ、ロバ!もぉ、今度こそクールキャラを定着させようと思ってたのに!」


「ダメです、ツンちゃんはロバがツンデレキャラに育て上げるんです」


 ニコニコと体を左右に揺らしながらツンドラオオカミことツンちゃんをいじるロバ。


「・・・ツンデレオオカミのツンちゃん?」


「ツチノコ、ダメですよそれ、言わないでください」


「・・・はい、改めてツンです、ツンちゃんでもいいよ、諦めるから・・・」


「あ〜っと・・・ツン先輩?」


 ぎこちなくトキがそう読んでみると、耳をぴくんとさせてツンが反応した。


「ツン先輩・・・?いいねそれ、気に入った!ツン先輩、うん、それがいいかな?」


「じゃあツン先輩、今日はよろしくお願いします!」


「うん、よろしく!」





「ではまず、パトロールについて。基本はそのフレンズ事に好きな地域をやってもらうよ。僕なんかは雪山を担当してる。でも、同じ地域を二グループ以上でやる必要は無いから、必然と空いているところをやることになるね」

「君達、住みはどこだい?」


「あ、街中です、ほかのちほーでは無いですね」


「ツチノコは?」


「あ、トキと共同生活だ。同じ」


 意外そうな顔してツンが応える。


「へぇ・・・道理で全く同じタイミングに入ってきたのね。なるほど、そしたら多分ペアで仕事してもらうことになるかな?とりあえず、担当地域とかは別に考えるから」


 そう言って、少し席を外し何やら大きな箱を一つ、小さな箱を二つ持って来たツン。それらを机の上に置き、大きい箱の蓋を開ける。

 中には、手のひらより少し大きいかというサイズの機械が黒と白でひとつずつ入っていた。


「これはトランシーバー。説明より見せた方がはやいかな?じゃあ、二人でこれを持ちながら待っててごらん」


 そう言って、片方を持ち外に行ってしまうツン。


「何があるんですかね?」


「さぁ・・・これがどうなるんだ?」


 残された白いトランシーバーを手に取るツチノコ。その時・・・


『やぁ、聞こえてるかい?』


「わぁぁぁぁあ!?」


「喋ったぁぁぁ!?・・・って、ツン先輩?」


『ふふふ、そうだよ?こんな感じで、離れてても会話が出来るんだ。今戻るね』


 そんなこんなでツンが帰ってきた。


「はい、これは君達に一つずつあげよう。二人で使ってくれ」


「え、いいんですか?」


「そもそも私達に使えるのか・・・?」


「そんな心配しないでも、グループ内での連絡手段は必要だからね。操作も簡単だよ。次はこっちだ」


 小さい箱を開けるツン。中には小さな黒い棒が入っていた。先端には何やら丸っこい物が付いている。


「これもトランシーバーみたいなの道具なんだが・・・これの使い方はこうだ」


 そう言ってトキの耳にその丸の部分を取り付け、棒を顔の形に合わせクイッと曲げるツン。


「これは・・・?」


「これは全体連絡用。これを使うとロバに繋がるから、そこから誰に繋いで欲しいか頼めばロバがそっちと話せるようにしてくれるよ。ちなみに会場警備とかの任務だと基本は全員で繋ぎっぱなしになる」

「これもあげる。パトロールの時はちゃんと付けてね?」


「あ、ありがとうございます・・・」


「えっと、付け方はこうでいいのか?」


 受け取ったのをトキの付けているのを見ながら装着してみるツチノコ。


「おけおけ、じゃあ使い方なんだけど・・・」


 そんなこんなで受け取った機器の使い方を教わった所で、十二時の鐘がなった。


「お、お昼か。じゃあとりあえず今日はここまでかな」


「あ、あの実際の動き方みたいなのは?」


「んー、教えるつもりだったけどきっとブラッk・・・黒酢に教えてもらうといいよ、あの二人と君達のスタイルは似るだろうからね」


 そんな話をしていると、正面の扉から見覚えのある人影が・・・


「あ、ライオンさんお疲れ様です・・・」


「んーただいまツンちゃん」


「やめてください・・・」


「ははは、本当にツンツンしてんな?ロバ居るよな?」


「はーい!ココに」


 奥の機械の置いてある机の影からひょっこりと顔を出すロバ。


「いたいた・・・相談があってな?」


「はい、何でしょう?」


 近づいて小さな声で何やらやり取りをする二人。そして取り残された三人。


「何話してるんでしょう?」


「さぁ・・・ああいうのは大事な話なんじゃないか?」


「いや、こういうときは大抵・・・」



 〜一方ライオン達〜



「何でしょう?」


「いや・・・もう十二月の二十二だって・・・クリスマスパーティやりたいんだけど」


「唐突だなぁ・・・私はいいですよ?」


「おけおけ、今晩大丈夫かな?」


「連絡はしてみますが・・・」


「ありがとう、俺はアイツらに聞いてくる」





「お、終わったみたいだな」


 話を終えたらしいライオンがこちらに近寄ってくる。


「なぁなぁお前ら、今日の夜クリスマスパーティやりたいんだけど来れる?」


「あ、私達は行けます!」


「ぱーてぃ・・・?」


 パーティという単語が初めてなツチノコは、首を傾げている。


「楽しいから、来ればわかるさ。ツンちゃんは?」


「・・・」ムスッ


「・・・ツンは?」


「・・・行きますっ!行きますよっ!」


「よし、じゃあ後でまた連絡するからな!」

「ロバー、こっちは全員参加!そっちは?」


 機会をいじりながらロバが応える。


「大丈夫・・・です、みんなで行きましょう!」

「ところで、会場はココ、お酒はストックをおろすとして・・・ケーキどうします?」


「ケーキか・・・」


 チラッと二人同時にツチノコとトキの方を向く。


「あの・・・なにか?」


「どどど、どうしたんだ・・・?」


 ライオン達は何も言わずじぃっと二人を見つめている。それに対し何かしてしまったかと焦る二人を見かねてツンが口を出す。


「二人の初任務はケーキの調達だって、頑張ってね!」

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