第21.5話 聡明なお二人
19話あとのお話・・・
ここはパーク内のとある居酒屋。二つほどのテーブル席とカウンターの前に椅子が並んでいる。そのカウンターの端に、二人は座っていた。
「では准教授・・・いや、ミミちゃん!」
「はい、コノハちゃん」
「「乾杯!」」
ぐっとビールを口に流し込む。
今夜は図書館コンビの飲み会、という名目のコノハ教授の機嫌取り。要らないと昼間に突っぱねられたうずらの卵串をサラッと頼み、意味有りげなスマイルをコチラに向けて来たあたり、もう機嫌は大丈夫だろう。しかし、きっちりと付き合わないとまた拗ねてしまうのでちゃんと二人で飲む。
「ぷはぁ、いやぁー半年ぶりぐらいなのです、ビールはやはりいいですね」
口の周りに泡をつけ、空になったジョッキをカウンターテーブルに置くコノハ。
「コノハちゃん、わかってるであるか?二杯までであるよ、それ以上はダメである」
「わかってますよ、ミミちゃん。私も気持ち悪いのは嫌なのです」
そう言って店主におかわりを頼む。本当に大丈夫だろうか、とも思うがそれ以上は何も言うまい。
「ところで、アイツらはどうしたですかね?」
「まぁきっと、ライオンのやつにどうこう言われて仕事決まりました、って感じである。心配はいらないであるよ」
「そうですかね・・・」
「あの・・・コノハちゃんもう顔真っ赤であるが・・・」
「大丈夫ですよ、ちょっとまわってきただけです」
そう言って、また口に流し込む。
十五分ほどして・・・
「コノハちゃん?ジョッキの中が増えてる気がしますが」
「だぁいじょぶです、二杯の約束は破りませぇんよ」
「いや、増えてるって既に破ってるである・・・」
「ミミちゃん、1を四捨五入すると0で0+0は0だからまだ零杯ですよ」
謎理論をドヤ顔で披露する教授。本来の意味での教授ではないにせよそう呼ばれる者がこんなで良いのだろうか。
「・・・で、今何回その0を足しましたか?」
「・・・五回?」
「多いであるよ!すみません、店員さんお勘定お願いします!」
「えぇ〜?もう帰るんですか?まだ飲み足りないのです・・・」
「ダメです、帰りましょう!」
会計を済ませ、本来飛べるはずのコノハ教授を抱え空に飛び立つミミ准教授。
なんとか図書館まで帰ってきた。
「ほらほらほら・・・お水飲んで、寝るのである」
ミミちゃんの腕の中で力なく彼女を見つめるコノハ。
「あぁ・・・トキ達はチュウとかしたですかね?ミミちゃん・・・」
「このタイミングで何言ってるんであるか・・・アイツらがそんな急に発展するわけ無いのである、ほらお布団敷いてあげるから、少しここで横になって」
寝転ぶコノハを心配そうに見つめるミミちゃん。
「そうですね、そう簡単にはいかないのです、我々のようには」
「は?コノハちゃん何言って・・・え?」
そう言葉を吐いたかと思うと、上から見下ろしていたミミちゃんの顔に急に頭を近づけるコノハ。
そして・・・
「な、ななな何をするのであるか!?」
尻餅をつき、顔を真っ赤にして後ずさるミミ准教授。
「そんな自分の口をぺたぺた触って可愛いですねミミちゃん」
真っ赤な顔でニッコリと笑うコノハ教授。
そして、そのまま目を閉じ眠ってしまった。
「・・・!・・・?・・・!?」
声をどうにか出そうとしても出てこず、無言で脳内の情報を整理使用とする准教授。
そのままコノハに布団を被せ、自分も床についてみるが一晩中もぞもぞと動き回っていた。
翌朝。
「んん・・・おはようございます准教授・・・ってすごい隈ですね!?」
「おはようございます教授・・・」
結局一晩丸々起きていた。夜行性だったこともあり、あのあと目は冴える一方だった。
「ん?そんなに見つめて、私の顔に何か付いてますか?」
「・・・いいえ、大丈夫である」
忘れているらしい教授に、「全部あなたのせい」という言葉を噛み殺した准教授であった。
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