第13話 初めての面接

 めんせつ【面接】

 直接人に会うこと。特に、入社試験・入学試験などで、直接会って人柄などを知ること。



「まず年齢を教えてくれないか?」


「・・・なんかキャラ変わってないか?」


「冗談です」


 筆記テストの直後、フェネックと面接の練習を始めたツチノコ。


「では真面目に。年齢は?」


「・・・何歳だろ」


「ダメですよツチノコさん。そんなこと言ったら落ちちゃいます」


「でも、分からんものは分からん」


うーん、と顎に手を当てて斜め上を見つめるツチノコ。その様子にフェネックは質問をする。


「なんで知らないんですか?」


「ずっと社会とかけ離れた場所で生活してたから・・・人里で生活を始めて三週間弱ぐらいなんだ」


「あぁ~なるほどです。じゃあ、そう説明した方がいいですね」

「次。好きな事は?」


「ん~・・・歌を聴くこと」


「へぇ、意外ですね?どんな歌を聴くんですか?」


「・・・なんて言えばいいかな、親友の個性的な歌が好きなんだ」


「親友・・・いいですね、私は友達が少ないもので」


 遠い方を向いてフェネックが語る。その時、少し寂しいものを感じたがどうしてやればいいのかわからない。まるで過去のトキに出会う前の自分に似ていた。


「次、フェネックさん」


 ドアの向こうから声がした。どうやら次はフェネックの番のようだ。


「ごめんなさい、私行きますね」


 そう言って彼女が部屋を出る。

 不安に駆られながら、時間を待つ。





 ところ変わってここは喫茶店。


「面接ですか・・・ツチノコ、全く練習してませんよ?大丈夫かなぁ?」


「まぁ、彼女もやる時はやるんじゃん?人見知りは相変わらずっぽいけど」


「不安ですね、まぁツチノコなら面接ゼロ点でも受かりそうですけど」


「そんな頭いいの?」


「聞いた話には一週間で八年分の勉強をしたとか」


「おっそろしいねぇ・・・楽器教えたら一瞬で覚えちゃいそうだなぁ」


 その時、二人きりだった店内に騒がしい二人組が入ってきた。


「菜々~ここなんなの?肉まんある?」


「無いんじゃないかな・・・ゆっくりする所だから静かにしてね」


「えぇ~」


 ピンク色の髪の女性と、金色の髪に細長い耳を生やしたフレンズ。二人ともトキにとって知っている人物である。


「あれぇ、菜々ちゃん?」


「ふぇっ!?奈羽さん!?」


 緑ジャケの二人は驚いた様子で顔を見合わせる。


「お茶飲みに来たんですか?キタキツネ」


「さぁ?トキはこんなとこで何してんのよ」


「時間つぶしてます。ちょっと親友のために」


「アンタ、親友なんていたの?」


 フレンズ二人は慣れた様子で会話を始める。

 例のフレンズの名はキタキツネ。肉まんが好きなおてんば娘である。


「奈羽さん、こんなところで何を?」


 そう言ったのはピンクの彼女。名前を菜々という。新人飼育員で、キタキツネとサーバルキャットを担当しているが、おてんばなキタキツネにいつも世話を焼いている。


「コーヒーブレイクよ、菜々ちゃん。まぁ、実を言えば担当ちゃんのパス試験待ちなんだけど」


「奈羽さん、担当増えたんですか?どんな子を?」


「・・・UMA」


「ゆ、ゆーま?どんな鳥さんですか?」


「『UMA』だよ、ツチノコのフレンズ。」


「え、鳥の子じゃないんですか!?なんでそんな・・・」


 フンッ、と鼻を鳴らしナウが言う。


「エ ラ イ か ら」


「あっはいすいません・・・」


 その時、横からキタキツネが会話に入った。


「ねぇねぇ、今ツチノコって言った?」


「え?うん言ったよ?えと・・・キタキツネちゃん」


「アイツ洞窟から出てきたの?」


「なんでそれを?」


「まぁ、こうして立ち話もアレですし、相席いいですか?」


「「どうぞどうぞ」」


 そうして、キタキツネによるツチノコとの出会いの物語が始まった。





「ただいまですーツチノコさん」


「お、お疲れ。練習続きさせてくれ」


「え?次はツチノコさんですよ?」


「え・・・そんn「次、ツチノコさん」


「ね?」


「おう、行ってくる・・・」


 そう言って、部屋を出るツチノコ。

 ポケットの中の御守りを握りしめ、男に案内された部屋に入る。


 ↓ここから面接ノーカット↓


「ではまず年齢を」


「今まで社会から離れた場所で生活してたので不明です・・・」


「ふむ、じゃあどんな生活をしてましたか?」


「誰もいない洞窟で、水とかは自分で作ったりしてました・・・寂しかったです・・・」


「すみません、話題を変えましょう」

「趣味は?」


「友人の歌を聴くことです。あと今度楽器を始めようと思ってます」


「最後に。」

「道端でフレンズが倒れていました。あなたはどうしますか?」


「・・・近くの飼育員を探して呼ぶ?」


「・・・はい、ありがとうございました。退出してどうぞ」


「ありがとうございました」



 扉を開き、廊下に出て、元の部屋に戻る。


「どうでしたか?ツチノコさん」


「やってみたら割と簡単だったかな?最後は少し悩んだが」


「取り敢えず、お互い合格すればいいですね?」


「そうだな?」


 次のフレンズが呼ばれ、外に出ていく。

 この分だとしばらくかかりそうだった。





 喫茶店。


「それで~。洞窟で迷ってたらツチノコと出会ったのよ」

「外の道を聞いてもわからなかったから、一緒に付いてきてもらったの」


「それで?」


「まぁ、その後は話してただけね。ツチノコがどう生活してるかとか、外は楽しいぞって言ったり。あとは肉まんの話もしたわね」


「え、ツチノコに肉まんのこと教えたのキタキツネなんですか?」


「そうよ。ところでアンタ、ツチノコと知り合いなの?」


「知り合いも何も、一緒に生活してます。初めて地上に出たって言ってたところを心配で連れてきました」


「へぇ?まぁ私には関係ないけど」


「キタキツネ、そういうこと言わないの」


 キタキツネの素っ気ない態度を菜々が咎める。

 その間に時計を確認したナウが言った。


「お、そろそろツチノコちゃん終わりかな?迎えにいこっか」


「はーい」


「菜々、私も行ってくるわ」


「え、ダメだよ。取り敢えずなんか飲まなきゃ」


「えぇ~面倒な・・・トキ、また後で」


 そんなやり取りを後に、喫茶店を出て会場に向かう。





「はい、これにて全日程終了です。お疲れ様でした。発表は明後日になります」

「では、解散してください」


「お疲れ様です、ツチノコさん」


「フェネックもな?外に出るか」


 二人で外に出ると、飼育員のジャケットを着た男性がベンチに腰掛けていた。


「お、フェネック。終わったか」


「はい、アルトさん」


「なんだ?そいつ。お前に友達なんてつくれたのか?」

「とっととこっちに来い」


男の乱暴な口調を聞いて、ツチノコがフェネックの耳許でコソッと質問する。


(なんだ?あの感じ悪いやつ)


(私の担当さんです。嫌な人ですよね、私、早く自立したくてスクールじゃなくて試験にしたんです)


「はーいただいま」


 アルトと呼ばれた男について行くフェネック。少し申し訳なさそうな顔でこっちを振り向き手を振る。


「おーいツチノコちゃん」


 遠くからナウの声がした。

 どうやら迎えに来てくれたようだ。


「どうでしたか?ツチノコ」


「まあまあ、かな。あ、これありがとうな」


 そう言ってポケットの御守りを返す。


「あ、どうも」


 そう言って受け取った彼女はすぐさま右側の垂れ下がった赤い髪に括り付ける。


「そういえばそれ、どしたのぉ?」


「お揃いで買いました、ほら」


 ツチノコはリボンに付けたブローチを見せる。


「へぇ、可愛いじゃん」


 そのとき遠くから聞き覚えのある声。


「ツチノコー!」


 ものすごい勢いで走ってくるオレンジの影。キタキツネである。


「お前・・・どうしてここに?」


「いや、トキに聞いて。どうだった?肉まん」


「あ、おう美味しかったぞ」


「それなら良かった。じゃ」


 それだけを確認して180度回り歩き始めるキタキツネ。


「・・・何だったんだ・・・?」


「肉まんの感想が聞きたかったんですかね?」

「取り敢えずお疲れ様でした。ツチノコ」


「うん、お疲れ様!今日もファミレスに連れて行ってあげよう!もうお昼の時間だし!」


 そう言って、ナウに連れられて二人はファミレスに向かった。

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