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煙草の火を消して、ビールを飲む。
煙草を吸うと、口の中が気持ち悪いけど
ビールも匂いがキライ。
ぐいぐい飲んで急いで空にして
チュウハイを開けた。
頭の中は、ちょっとふわっとする。
冬人は、まったくお酒が飲めない人だった。
だから部屋では普段、私も飲まない。
冬人がいない時だけ飲んでた。
大丈夫。他のひとのところに行ったんじゃない。
朝、電話で起こしてって言ってたし。
違う ちがう。ちがう····
必死になりながら。
だけど、冬人の部屋へ行けば
あのひとのマニキュアやヘアピンがあったし
また別の女のひとから電話をもらったこともある。私からかけたこともある。
そうしながら、つき合い始めて4年が経った時に
好きにしたらいいわ と、私は言った。
『もう、行きたいところに行けばいいわ』
冬人は当然、怒って部屋を出たけど
私はもう、電話もメールもしなかった。
放っておいた。
3日後、冬人は戻って来た。
『まだ怒ってる?』って。
笑ってしまって、いつも通りになる。
それからは、冬人は私にお金を出させることはなくなった。
週に一度は帰って来なかったけど
そういう夜は、私も遊びに出かけてた。
こうして、部屋でひとりで飲むのは久しぶり。
冬人と別れて1ヵ月。
2週間前に、一度冬人からメールがきたけど
私は返事をしなかった。
もっと つらいと思ってた。
普通にバイトに行って、普通にご飯も食べてる。
レモンライムって書いてあるチュウハイを飲みながら、煙草に火をつける。
レモンの味もライムの味もしない、と
思いながら。
いいんだけどね そんなこと。
短いと思ってた夜は、意外と長かった。
********
炭酸のお酒なんて、飲むんじゃなかった。
起きたのは、午後2時頃。
ダルいし、顔もむくんでる。
カーテンのすき間が明るくなる頃に
タオルケットと毛布に もぐって寝たけど
汗をかくほどの室温じゃない。
煙草を吸って、シャワーを浴びる。
すっかり身体も冷えていたし。
エアコンを消せばいいのに、どうしてか
それはしない。
たっぷり熱めのお湯を浴びたから
むくみは少しマシになった。
背中の中ごろまで伸ばした髪が乾くまで
タオルを肩にひっかけたまま
肌の手入れをして、お香に火をつける。
爪をぬり直さないと。
たまには桜みたいな色にしようかな。
迷ったけど、ベージュにする。
トップコートまでぬると、気をつけながら
コーヒーを入れて煙草に火をつけた。
煙草の先からの煙より
口から吐き出す煙の方が汚く見える。
このまま、ごろごろしてたいな
藍月は、今日バイト出るのかな?
突然休んだりすることもあるし、メールを入れてみると、すこし間が空いて
爪が乾くころに『行くよ』って返信が入る。
そっか。
じゃあ、私も出よう。
私も気分で休むことがあったけど
のんびり化粧を始めることにした。
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