克蘇魯異聞

 台湾の南に、ゼーランジャという城があった。

 それは、オランダの台湾支配の拠点で、ここを日本の出島や、インドネシアといったオランダの交易圏の中継地となっていた。

 また、カトリックほどではないが、現地に居住していたシラヤ族を教化するために、プロテスタントの宣教師が派遣されていたのである。

 この話は、そんな宣教師の一人が遭遇した話だという。




 さて、その宣教師は数人の護衛ボディガードと明から来たという通訳をつれて、ある村を訪れていた。

 彼は、そこの村人から、彼等を襲う奇妙なひとびとの話を聞いた。

 本当は通訳を介して話しているのだが、めんどうなため、会話出来ている風に書く。

「なんか、魚かカエルみたいな顔をしてる、妙な連中にゃのです」

「ふむ、ふむ」

「彼等は何処からかやって来たのですにゃ、そしてにゃにか忌まわしいものを崇拝しているのですにゃ」

「それは、どん二ャものかね?」

「やつらに似て水掻きがあり、なのにワシラににているのですにゃ」

「その忌まわしい神の名前はなんという二ャ?」

「たしかだごんといいますにゃ」




 さて、宣教師一行はこの話に興味を持ってその異形のものが住む所にいくことにした。

「取り合えず、意思はなす疏通ことが出来るか確かめる二ャ」

と、彼等に話したものは、しかしその異形のものに殺されてしまった。

「意思疏通は無理そうだ二ャ。

 だれか、偵察にいかにゃいかね」

「では、私がいきます二ャ」

と、言ったものは、あまりに恐ろしいものをみたらしいのだが、恐怖のあまりに心を病んでしまった。

 結局、宣教師たちは一端本拠地であるゼーランジャ城へ帰り、兵隊を連れてその異形の連中と戦い、彼等を海へ追い返したという。




 この謎の種族と遭遇した記録を含めた宣教師の日記は、こくせん合戦で知られる明末期から清初期の動乱の中、なくなったとみられていたが、どうやら江戸にまでたどり着いたようで、長崎にきた宣教師の子孫が、その写本をオランダ本国に持ち帰っている。

 その写本には、本文を元にした、描いたのが北斎ほくさいとされる挿し絵があるのだが、いくつか興味深い点がある。

 例えば、この挿し絵に描かれる異形の姿は、のちに世界メリカの地名から『インスマス面』と呼ばれるそれである。

 そして、さらに興味深いのが、だごんの他に彼らがという、神像だ。

 その軟体動物があわさったそれは、後に『Cthulhu』すなわちクトゥルーとないしはクトゥルフ呼ばれることになる神とされる絵となのである。


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