二代目は大戦略家

いわゆる二代目が初代や三代目より目立たないことが多い理由は初代より苦労もしていないが、三代目のような気楽さもないという中途半端に見られる所が理由なのだろう。




駿河の大名今川いまがわ家は、その年ようやく跡目争い、後に『はなくらの乱』と呼ばれる混乱から脱したばかりであった。

さて、新たに今川家の当主となった義元よしもとのもとにその報告が来たのは、乱から半年ほどたった乱のほとぼりがまだ冷めないころであった。

「にゃに、伊豆に?」

「は、北条ほうじょうの軍勢が攻めてきました」

「しかし、北条はわが旗下ではにゃかった?」

北条は初代であるそううん坊のころから、今川の関東における代官という立場であった。

「いや、どうやら奴等、独立をくわだているようですにゃ」

と、言ったのはせっさいという坊さんで、義元の片腕どころか両腕として獅子奮迅の活躍をしている。

「にゃんだって、まさかそのような……」

「どうやら、今川の混乱を狙って独立宣言のつもりですにゃ。

殿みずから出れば、おそらくそこまで本気ではにゃいでしょうから撤退しましょう」

「にゃるほど~」

と、義元は関心している。

「では」

「よし、数日中に出陣にゃ!!」




義元の当主としての采配を見ながら、雪斎は、北条の意図を想像している。

(あるいは、今回の跡目争いの原因である、先代とそのお子様の死に、北条が絡んでいるにゃもしれにゃいな。

全てが北条ののまま進みすぎてる気がするにゃ)




今川の派兵が決まった次の日。

ふう小太郎こたろうは、自分の雇い主である北条家の当主であるうじつなに、件の評定に関する報告をしている。

「どうやら、今川の方も動きだしたようですにゃ」

「ふむ、ご苦労にゃった」

氏綱は頷くと、傍らにいた部下に、こう命じた。

「今川が来たら、適当に戦って、すぐ退却するにゃ。

今回は、こちらのが伝わればよいにゃ」

「了解ですにゃ」




こうして、いわゆる後北条家と呼ばれる戦国大名が正式に出立スタートしたのであった。

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