鶴姫らすとらいぶ
西国の大大名、
特に、大内の領土は、九州と四国をつなぐ玄関口であり、四方を攻めやすく、また攻められやすい地勢であった。
そのため大内は、交易で得た圧倒的な力の代償に、多方面からの敵と戦わなければならなかった。
特に、戦国初期には、今まで戦ってきた九州勢や
さて、毛利の一族で、大内と共に瀬戸内で戦っていた
「ほう、
「ええ、ごぞんじにゃいですかにゃ?」
と、彼を助けてくれている、
来島は、瀬戸内海をナワバリにする海賊の1人である。
彼は、続けて
「彼女はもともと、
と、言う。
大三島の水軍は、そこにある
通称を『三島水軍』という。
大内家の当主である
幾度にもわたる戦いの末、水軍の男達がボロボロになる中、鶴姫は
「あたしにまかせるにゃ」
と、すっと立ち上がった。
彼女は、全身白い猫であった。
眼帯というかアイパッチというか、そういうモノを付けていて、それが本人のかわいらしい容姿とのアンバランスさとあいまって、不思議な魅力をかもし出していた。
彼女は、そのまま小舟で、大内の軍勢に向かっていく。
「鶴姫たん、な、何をする気にゃ!?」
「うん、何にゃ、あれは?」
と、敵味方問わず皆が驚いているのをしり目に、彼女は小舟の上で歌を唄いはじめた。
その歌は、敵将であった
「義隆さまが、あいどるまにあで、こういう歌はたくさん(強制的に)聴かされていたが、これほどの歌は聴いたことがないにゃ」
と、称賛されていたという。
「で、その鶴姫たんがですにぇ、らすとらいぶを開催するらしいですのにゃ」
来島は、そう続ける。
「ふにゃ、で?」
「で、と言いますと、にゃんですにゃ?」
「ただわたしに、そのあいどるの話をするってことにゃにゃいにゃろ、ってことにゃ」
「ほう、さすが毛利では当主であにゃれる
「褒めても、にゃんもあげないにゃよ」
「へへ、まあ話を続けにゃすとね、実はあれにゃんですよ、彼女はらすとらいぶで、引退を宣言するんですにゃ」
「ふむふむ」
「でもね、そこを大内の連中が、邪魔しようとしているのにゃすにゃ」
「なるほどにゃ、つまりわたしに、大内の方々を抑えておけ、ということにゃろ」
「察しが早くて助かりにゃす」
「うむ、しかし
「はあ」
「まあ、にゃんとかするしかにゃいよなあ」
と、隆景はため息をついた。
それより、3日たち、とうとう、『鶴姫らすとらいぶ』がおこなわれることになった。
海上に設置された観客席の前に、一艘の小舟がしずしずとあらわれた。
その小舟の上には、鶴姫。
彼女は
「今まで、ホントにありがとうにゃ!」
と、涙を流しながら、唄いはじめる。
観客たちも、彼女の熱唱にココロがゆさぶられ、
「鶴姫にゃ~ん」
と、応援している。
中には、いわゆるPPPN(パンパパンニャー)のような、おた芸をしている、熱狂的なふぁんもいた。
しかし、観客席の下。
そこでは、大内の手下が、観客ごと鶴姫を爆殺しようと、爆薬をしかけている。
と、その時。
「おお、おお、酷い事を、やろうとするにゃあ」
自分以外の声がする。
そう思った大内の手下が、振り向こうとした。
が、その前に、声の主が、彼ののどを、
「さてさて、これでよかろうにゃ。
しかし、隆景さまも、
と、声の主、
「わかったにゃ、今回の件は、どうやら義隆さまが
と、陶隆房は、隆景に説明する。
「なるほど、そうでしたにゃ」
「今回の一件で、相良もしばらくはおとなしくなるにゃろう」
「ふむ」
「後は、わたしにまかせるにゃ」
「わかりました、隆房どのにおまかせします」
言いながら、隆景は
(おお、にゃんとまとまりのないことにゃ
これでは、大内も先が長くにゃいみたいにゃね)
と、心の底で思った。
鶴姫はらいぶ後、何処かへと姿を消した。
『わが恋は三浦の浦のうつせ貝むなしくにゃりて名をぞわずらふ』
という最後に唄った歌が残されるのみである。
大内義隆は、家中を統率出来ず、結局陶隆房に謀反をおこされ、その陶も厳島で毛利に敗れ、こうして大内は滅亡した。
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