第4話

叫ばれたら敵わないので窓の鍵を回してカーテンをした。よく眠っているのをもう一度確認して、彼女の脇の下あたりに顔を寄せた。大きく息を吸った。


やはり、不思議なほど凡庸な匂いであった。彼女からは疲労感のようなものを感じないのだ。


しかし、背徳といった非日常のシチュエーション(コントめいていることが重要)に協力しないことに腹が立った。


便器に糞をこびりつかせ私の活力ある快の邪魔をしておいた罰、なぞというエゴイ考えではなく、たまたま彼女の喪服が前開きであり眠りについたときにうっかり開いちゃうこともあるよねという、しごく論理的なものもある。目覚めなければ、「あぁらやだわぁ、寝てる間に開いちゃったみたい」などと思ってくれればよし。目が覚めたら、起こした風を装えばいい。



襖の向こうからリン そして一段階上の音のリン と続く音が聞こえた。鈴のようなの音である。彼女のスマホに着信が入ったようである。


ここで起きられては困るから、私は慌ててスマホの電源を切った。しかし、電源を切ったことによりどう転んでも怪しまれるしかない状況を作ってしまった。


鐘をうつような心拍で息が苦しくなる、そして心音が直接耳に聴こえるくらいまで大きくなると視界がくらむ。ぼんやりとした焦点で、それでも胸の膨らみは明確であった。眼から離れることがなかった。



決意をして、喪服のファスナーに手をかけ、下にさげた。


グレーの下着が見え隠れしたとき、轟音が鼓膜を破るほど響き、ストロボのような明かりがさした。そして、皮膚の全てを焼き払うかのような強烈な痛みが襲った。タンパク質が燃えるときの独特のすえた臭いが鼻をツンとさしたため、燃えているようだ。


私の意識は一旦、ここで失う。

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