第18話
ピッチに寝転がっているとそこに皆がのしかかってきた。
「テメー格好つけてんじゃねーぞ!でかした!」
輝くんが頭をバシバシ叩く。
「とりあえず重いからどいてよ」
寝転ぶ俺に大ちゃんが手を伸ばす。俺は手を握り体重を預け立ち上がらせてもらう。
「サンキュー。大ちゃん試合の時顔恐いね」
「え!? それ今言うこと!?」
ゲラゲラと皆に笑われる大ちゃんは少し恥ずかしそうだ。
クロスを上げた篠原が遅れて駆け寄ってきた。
篠原は拳を胸の前に構える。
「よくやった! 狙い通り!」
俺も拳を握りちょっと強めにぶつけた。
「嘘つけ!」
「イッタいなぁ! いいじゃんアタシがあんたをヒーローにしてやったんだから感謝してよね!」
「いやいやいや。お前のミスを俺がカバーしてやったんじゃん。むしろ感謝しろよ。いや、謝れ。土下座しろ」
「あー可愛くないわーこの子全然可愛くないわー。なんなの? お姉さんに褒められて照れてんの? 頭撫でてあげようか?」
イラッ。
俺はレガース(脛当(すねあ)て)が浮き出ている部分に軽く蹴りを入れた。
「あー! 蹴った! 今蹴った!」
篠原が喚く。
「うん蹴ったよ? それが何か?」
「女を蹴ったのにその態度……」
「いや、女は蹴ってねーよ」
「おいコラ」
ピッピッピッピ
審判が警告のホイッスルを吹く。
慌てて輝くんが駆けてくる。周りを見ると皆リスタートに備え自陣に戻っていた。
「お前らなにやってんだよ! 痴話喧嘩は家でやれよ! 早く戻るぞ」
変な言い方をやめてよ。
「アンタのせいだからね」
ぼそりと篠原がぼやく。
「お前が下手くそだからだろ」
小声で言い返す。
「アンタいい加減にしなさいよ!」
ヒソヒソと喧嘩が始まる。
「お前らがいい加減にしろ!」
輝くんのゲンコツが俺たちに降り注いだ。
「あと少しで終わるんだからそれまで仲良くしろよ。負けたらぶっ飛ばすよ?」
この人笑顔がホントに恐い。
相手ボールからのスタートで最初の攻撃から失点しそうになり俺と篠原はお互いに見合いうなずき、気合いを入れ直した。
このままじゃ輝くんに殺される。
残り10分。取れても1点だな。
ひとまずほころびを探すか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます