第61話 家族

ジャパリパークは開園直後から物凄い人気である。

それなりに人がいたこの島に、トーキョー並の人、いやそれ以上の人がこのパークに訪れているであろう。


ギュッ


何者かが俺の袖を掴む。

誰かと思ったら、先程まであそこで料理の実演をしていたアライさんではないか。

火を恐れない、料理のできる珍しいフレンズとして、ミライさんに紹介されたところ実演をすることになったそうな。


ご苦労様です、アライさん。


「すっごい疲れたのだ…アライさんは一休みするのだ」


言葉通りすっごい疲れているアライさんを目の前に、ちょっとした悪戯を仕掛けることにした。


「ん〜、いっぱい人が来るってことは、それくらいアライさんが人気者って事なんだよね、アライさんのファンがいっぱいいるってことは…」


「あぁ!?待たせちゃいけないのだ〜!」


うん、面白い。

というか反応がいちいち可愛いし、

悪戯を仕掛けている自分がちょっと情けなるくらいに彼女は純粋だ。


アライさんは人の群に入っていたかと思えば、またこちらへと戻ってきた。

なにか忘れ物でもあったのだろうか?


「…でも、メイといる方がずっと楽しいのだ!よぉし、アライさんとメイで色んなところで遊びに行くのだ〜!」


「アライさん…//」


視線を少し斜め下にズラす。

こんな事言われたら誰だって照れちゃうじゃん…

ちょっと、どうしてくれるんですか。

目の前の小悪魔は純粋な笑顔で俺を誘う。

その笑顔に、俺は似合うのだろうか?


ポンッ


アライさんの頭の上に手を乗せる。

その手には、一つの帽子が。


「?これは…帽子、なのだ?」


「そうだよ、アライさん。これから暑くなるからね、夏にピッタリの麦わら帽子さ。

アライさ〜ん、とても似合ってるよ〜?」


「わぁ…!!とっても嬉しいのだ!大好きなのだ〜!」


「ちょ、アライさん…そういうことは

大声で言うもんじゃないよ…//」


世界の中心で愛を叫ぶってか、やかましい。

夏に向かっていくにつれ、段々と暑さが増していくこの時期。

既に半袖の人も少し見られるが、まだまだ衣替えには少し早いかな?


そんなこんなでイチャイチャしていた俺達の元へ、家族連れがやってくる。


「あら、仲の良い事ねぇ」


「あ…いや、その…!」


しまった、こんなイチャイチャ(小)をしていたところを見られたもんじゃ、明日ミライさんに何を言われるかわかったもんじゃない…!!

クッ、"ジャパリパークのイチャイチャ担当"とか、"明確なカップル、メイだけに"

なんて言われたら氷河期だぞ、氷河期!


ここはどうにかして「アライさんとメイはとっても仲良しなのだ〜!なんたってアライさんとメイは」


これはいけない、言わせてはならない。


「ア・ラ・イ・さぁぁぁぁぁあん????」


「な、なにをするのだぁぁぁあ!?ムグググググググ」


「あらあら…所で、話が変わりますが…」


楽しそうな家族連れであったが、突然真面目な面持ちとなった。

特に、俺よりも3歳ほど年下であろう男は特にそうである。

その男が、口を開く。


「単刀直入に聞くぞ、てめぇ、うちの馬鹿兄貴の友達だな?」


「馬鹿…兄貴?」


突然飛び出してきたワードに、俺も戸惑いを隠せない。

その馬鹿兄貴とやらが誰かもわからないし、

あんた誰やねん。


「まぁさすがにわかんねぇか…うちの馬鹿兄貴の名前は──







──カエデっつうんだけど、知らねぇかな?」


全く聞いたことのない名前が口から飛び出す。

俺自身ちょっと記憶も曖昧な部分があるが、さすがに友達の名前までは忘れないものだ。

つまり、聞いたことがないということは

俺はそいつを知らない、ということだ。


「カエ…デ?って、誰ですかそれ…」


「アライさんも分からないのだ…」


「あぁ?間違いだっけかな?いいや、てめぇが忘れてるだけかもしんねぇし、そこら辺のfriends(ネイティブ)に聞いてみるわ」


やけに発音が良い方ですね…(困惑)

まぁそれはそれとして、本当に誰だい?

俺もアライさんも知らないとなれば、

誰も知らないと思うんですが…


「ごめんあそばせ、オホホホホホ」


本当にあんな笑い方する人いんのな。

なお、父親は終始無言だった模様。

まぁ誰かは分からないけど、こうやって

パークに遊びに来てくれる人が多いのは

良いことだ!


さて、俺達も別のエリアに行ってみようかな?


「アライさん、フェネックのところ行ってみる?」


「行く行く!行くのだ〜!」ギュッ


アライさんが俺にくっつく。今日はやけに攻めますね?

でもね、ここ今開園してるでしょ?

だから他の人からの目を気にしないと…

あ、やばい理性崩壊しそう。


「あっ、ちょ、そんなにくっつくと他の人が…」


「会話外から失礼するでござる」スルリ


「壁に同化する男!?」


ほら、こんなクレイジーな人が来てしまったよ…





フレンズというのは不思議なものだ。

更に、それらを取り巻く物質、物体もそうである。

例えばフレンズ達の毛皮。

あれを取っても数時間したら再生してしまうのだ。

毛皮を形成している物質はなんなのだろう?


私は気になってしょうがない。

しかし、私は見つけた。

切れ味の鋭いこのナイフは、砕いても砕いても再生するのだ。

きっと、同じ物質で構成されているに違いない。

そう思い、研究を続けているのだがなかなか成果がでない…


もう三日も徹夜している、眠い。

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