第2章 新たな始まり

第59話 ようこそ!

これからの生活の場となる地…多分だが、

に到着した。

カンナさんとのお別れも済まし、

車を降り、中へ向かう。

その動物園の入口──

"パーク・セントラル"と言われる玄関口の

目の前に立つ。


「ちょ、ちょっと緊張してきたのだ…」


初めての場所、今までと一変するであろう

生活に、緊張しているのはアライさん。

そんなアライさんに、「大丈夫だよ」と

声をかけ緊張をほぐす。


もちろん、俺だって緊張している。

何が起こるかもわからないし、

これからどうなるかだなんて、

想像もできないよ…


「お二人共!待っていました!」


出迎えたのは…何故かミライさんである。

どうやら彼女は、今日から

"パークガイド"としてここに

就任することとなったらしい。

まだ初日だが──


「えぇと、ミライさん…俺達、これから

何をすればいいんでしょうかね…」

「そんなに改まらなくてもいいですよ♪

付いてきてください…グヘヘー」


彼女は相変わらずの獣好き、いや変態だ。

今日から開園するとの事で、

かなりテンションが上がっているようだ。

ミライさんに導かれるまま、

俺達はその中へと入っていった。





「都市エリアとの出入りは基本的に自由です!ただ、後で紹介するあなた達の飼育員のいう事はしっかり聞くことと、規定時間になったらちゃんと帰ってきることを

心がけておいてください!」


「さっきの感動的な別れはなんだったんだか…」


まぁどちらにせよ、あの店はここからかなり遠いのだ。

結局滅多に行けないことは確かである…


「こちらがサバンナエリアになります!

サバンナに適した様々なフレンズさん達が

ここで遊んだり、休憩したり…

とにかく!色んな事をやっているのです…

ウヒー」


「あ、暑いのだ!なんでここはこんなに

暑いのだ?」

「単純な話だよー。サバンナ…一般的にはサバナ気候と呼ばれるんだけど、ここは熱帯に属してるから暑いのさー。

それに今は真昼時だしねー。」


「ねったい…?それはなんなのだー?」

「まぁ暑いところってとこだねー。」


フェネックがどこから得てきたかも

分からない知識でサバンナについて語る。

本人曰く「図書館で調べた」らしい。


俺ももうちょっと頭がよければ、なぁ…


「それとあそこに雪山、あそこに森林が

あります。

他のエリアもありますので、是非探索してみてください!それと、重要なお話が…」


「重要な、話って…?」


「ここではフレンズ一人、または二人以上につき担当の人が付くことになってるのですが…悲しい事に、アライさんとメイさんペア、フェネックさんは一人ということに

なってしまったんです…」


数年暮らした仲間と別れるのは寂しいのだが、フェネックは意外とそこまで落ち込んでないようだ。


「まぁまぁ、いつでも遊びに行けるでしょー?多分大丈夫だよー。」


確かにそうなのだが…


「ではフェネックさんはこちらの飼育員さんに付いていってください!」

「じゃあ二人共またね〜」


「また後でなのだー!」


いやいや、軽いなぁおい。


「それでは今からあなた達担当になる飼育員さんを紹介します!

ちょっと癖がありますが…」


困惑した表情でミライさんは言う。

「ミライさんよりも癖が強い人はいない」

と言いたいところなのだが、そんなこと

言ったら余計に困らせるだろうからやめておこう。


一方アライさんは何故かワクワクしている。

新しい出会いが楽しみなようだ。

仲良く出来たらいいけど…


「では出てきてください!」


ミライさんの声とともに、その場が

白い煙で包まれた。

ゴホッ、ゴホッと咳払いの音がする。


もちろん、アライさんや俺も咳払いをするのはそうなのだが、ミライさん。

あなた、こうなること分かってましたよね。

絶対にわかっていましたよね。

ガスマスクの一つや二つは持っておいた方がいいんじゃないんですか?


やがて煙が晴れてくると、そこには一つの影があった。

完全に晴れた時、俺は思わず二度見してしまいそうだった。

黒い忍者のような服装、おまけに顔までも

黒い布のようなもので覆っている。


「えぇと…あなたは?」

「本日より貴殿の担当となった…赤城(アカギ)と申す…趣味で忍術を学んでいるのでござる…」


「怖い!怖いよ!」


色々ツッコミどころが多い人が

担当となってしまった…

あれですか、ガチャ引いて最高レアリティ

だったけど、スキルに癖があるパターンですか。


「まぁ堅苦しい口調はやめよう。

これから宜しく頼むぞ。」

「よ、よろしくなのだー!」


戸惑いつつも興味津々で寄るアライさんに、

握手を仕掛けるアカギさん。

いやいや、この人本当に大丈夫か…?

手に撒菱マキビシとか仕掛けてあったら

ガチで危ないぞ…


「いっだぁぁぁぁぁぁいのだぁぁぁぁ!?」


ほら、絶対に仕掛けてあると思ったよ。

銃刀法違反とかにならないのかね、君。


「ハハハ、プチ雷遁でござる。

初めて会う人にはこうしてドッキリを

仕掛けているでござるよ。」

「あんたどこの世界の人だよ…」


てかすげぇな!?

雷の魔法使いなんですかね…


「メイさんと同じぐらい癖が強いですが、

こうしたお茶目な部分があるので、

きっと仲良くなれると思います!」

「いや、お茶目レベルじゃないから。」


「ということでメイ殿も握手するでござるよ。」

「いや、俺はいい…俺はいいから…」


それでも歩み寄ってくるアカギさんに

俺はどう言えばいいんですかね…

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