第51話 ヨゴレ
「…お前、それってどういう…」
「私ね、好きな人ができたみたいなんだ~…あ、友達としてじゃないよ~?その…"特別"、的な?」
「ほぅ…私はそんな感情、抱いたことも無かったな。」
「意外だね~、花に詳しいのに~?」
「う、うるさいな!」
2匹のフレンズは公園で話に花を咲かせる。
これが恋話というものなのだろう。
フレンズというのは不思議な生き物で、動物の頃よりも複雑な感情を…動物が人間になった時に抱く。
また、草食、肉食の壁も無く、互いに共存している。
正にこれが、"けものはいてものけものはいない"という事なのだろう。
「私ね、なんか…その…実は…ア──」
キキーッ!
突然、黒塗りの車が公園入口前に止まる。
相当スピードを上げていたのか、ブレーキ音が鳴り響く。
その黒塗りの車が止まった場所…ちょうどフェネック達の前の方だ。
車の中から、スーツに包まれた人間達が出てくる。
普通に街中を歩いていたら"不審者"と呼ばれそうな格好である。
「ボス。2匹のフレンズを確認。片方はフェネックと呼ばれるフレンズで、動物だととても高価であります。片方はヒグマと呼ばれ、日本最強の動物と呼ばれています。」
『了解。フェネックを直ちに捕獲せよ。
ヒグマは放っておけ。抵抗してくるようなら発砲しても構わない。』
「イエッサー、ボス。」
「フェネック、気を付けろ。こいつら何か仕掛けてくるつもりだぞ…」
「はいよ~…私を狙ってるみたいだねぇ…」
謎の男達に思わず動揺するが、本能的な危機を察知し戦闘態勢に入る。
そして1人の男が前に出てくる。
その手には金属の塊──銃が握られている。
「あなたはフェネックのフレンズで間違いないですね?」
「別に…それがどうしたというのさ。」
「私達と一緒に付いて来てください。拒否権はありません。抵抗するようなら…どうなるか分かりますね?」
フェネックの額に銃が当てられる。
汗が吹き出る。
断ったら即殺されるであろう。
「お、お前ら!フェネックに何をする気だ!」
「ヒグマさ~ん…大丈夫だよ~、すぐに戻ってくるからさ~…」
「…ッ!」
「では、あそこの車に乗りましょう。お前達、こいつを連れていきなさい。」
「「「イエッサー!」」」
目の前でフェネックが連れ去られていく。
私はこんなにも力があるのに、何も出来ないのか?
何が最強の動物だ、笑わせてくれるよ。
(このまま黙っていられるか!)
「フェネックを返せぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ヒグマは怒号と共に駆ける。
その大きな熊手を手に持ちながら。
パァン!
「あぐっ!」
「ヒグマさん!」
銃声が響き渡り、耳が痛くなる。
銃弾はヒグマの肩に命中した。
あまりの激痛に耐えられなくなり、座り込んでしまう。
「グァァ!!………ウァ……」
「抵抗するなと言ったはずだ。全く、愚かな動物よ…」
「ほら、早く乗れ!」
「…ヒグマさん…」
「ま………て…!…」
車はフェネックを乗せて去ってしまった。
「…………アァ、ウゥ……ガァ……」
「ち、畜生………なんてやつらだ……」
早くメイに……伝えなければ。
◆
「はぁ~楽しかったのだ!」
「いやぁ、疲れたねぇ…」
1日ぶりにこの部屋見たわ…
なんでだろ、懐かしいや。
「おかえりなさいませ。メイ様。アライグマ様。」
「うわぁ!?いつも神出鬼没ですね!?」
「ただいま帰ったのだ!」
いつも通りカンナさんが何処からか現れる。
うん、懐かしい(錯乱)
ところで…フェネックの姿が見えない。
またいつも通り図書館に行ってしまったのだろうか?
「…どうやら来客のようです。私が様子を見に行きます故、ここでお待ちください。」
この別館に誰か来たようだ。
客とは限らないと思うんだけど…
君は足音で聞きわけてるのかな?
超能力かな?カンナさん???
「…遅いな。」
「ちょっと様子を見に行った方がいいんじゃないか?」
「そうだね…」
◆
ガチャ
「はぁ………はぁ………ぅ!」
「メイ様に何か御用……ってヒグマ様!?どうしたのですか!何故そのようなご格好に!?」
いつもと違う格好をしたヒグマに動揺をするカンナ。
無理もない。
肩から血を流しながら歩いてくる人など普段いるわけないのだから。
「私のことはどうだっていい……ぁ………今は大変なんだ…!」
「カンナさーん、ちょっと遅く……って!?ヒグマ!どうしたんだよそれ!」
「は、早く止血しなきゃなのだ!えぇと!救急キット!包帯!消毒液!風邪薬!予防接種!抗がん剤!」
「な、なんでもいい!早く持ってきて!話は俺が聞く!」
どうして、ヒグマがこんな事に…
なんで、どうして…誰がやった!
俺のいない間に…
「だから私のことは……ッ!」
「無理すんなって!今応急処置をすっからな!」
「いいか、さっき大変なことが起こったんだ……!落ち着いて聞け!」
ヒグマは深呼吸し、静かに言い放つ。
「──フェネックが攫われた…私がいたのにも関わらず、本当にすまない……ァグッ!」
ヒグマの口から告げられた事実は、俺を怒りの道へと導き、同時に俺を絶望のどん底へと突き落とした。
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