第47話 追憶
『ねぇ、次はどこ行く?ゲーセン?』
『部活めんどくさいよねー…』
『ごめん、今日無理っ!』
日に日に幻聴が酷くなっていく。主に頻度が。
1ヶ月ぐらいで治まるんだよな…?
それにしてもこの声の主は、俺とどんな関係だったんだろう。
聞いてみたい気持ちはあるが、一方通行なので無理。
んー、残念。
「メイ様、ご夕飯の仕度が完了致しました。」
「あぁ、ありがとう。」
ネットニュースを見たところ、島の切り離しは明明後日、動物園の開園は、建物の取り壊しが完了し、自然化が充分進んだ辺りで行うそうだ。
フレンズを自然の中で遊ばせたい政府の粋な計らい、ですな?
それにしても、どうやって島を切り離すんだろ…
『考えてばっかりだね、メイったら!』
またこの人だ。
アライさんやコノハの声を聞くこともあるが、最近はもっぱらこうだ。
誰だよ…(困惑)
◆
「ん…ここは?」
俺は…何故か学校にいた。
それも小学校だ。
懐かしいな、この学校…
何年以来だっけ、ここ。
それにしてもおかしいな、俺は確かに夕飯食べて寝たはずなんだけど…
だとしたらここは夢の中…?
「全く、メイったら~。いつも昼休みにやることないからってまた寝てさ~…」
「え…」
黒髪の癖っ毛が付いた少年に話しかけられ、思わず戸惑う。
その声は、散々幻聴で悩まされたあの声である。
しかしその顔は、何故かよく見えない。
「…誰、ですか?」
「やだなぁ、寝ぼけてるの?僕だよ、君の親友の…」
「…ぁ!」
「どうしたの?メイ。」
「いや、なんでも…」
折角正体を知れるというのに、ノイズが走ってしまう。
やはり思い出すことは出来ない。
この男が親友だったのか?
◆
場面が切り替わった。
そこは思い出したくもない思い出が詰まった、中学校。
どうやら少し人目のつかない部分で言い争いをしている者達がいた。
それをのぞきこんでる形になるのかな?
「君たち!もういじめはやめなよ!」
「まぁさかぁ…俺達がぁ、いじめてるわけないじゃぁん…」
「馬鹿だな!おい!テメェ1人で何が出来るってんだよ!」
そこにいたのは、先ほどの少年と、集いの時の大男、そしてツバキだった。
どうやら俺がいじめられていたことを知っていたらしい。
「知ってるからな、君たちがメイを虐めていることを!もうやめろ!親友として言わせてもらうぞ、君たちは人間の底辺だ!」
「ほぉ…言うねぇ…お前、やっちゃいなよ。」
「そうだな、こいつ図に乗りすぎなんだよな、おい!ちょっとボコすか!」
「放せ…やめろ!」
見てらんねぇ、今すぐ野生解放して助けに行かなきゃ!
…あれ。
くそ、姿形まで中学生のままだ!
これじゃあ野生解放をするどころか、俺まで返り討ちに遭ってしまうぞ!
「はっ、口ほどにもねぇなぁ、おい!ざまぁみろ!」
「俺達に口出すからこうなるんだよぉ…✕・✕・✕・く~ん??」
またノイズが走る。
くそ、今すぐ助けに行ってやりたい!
「こいつら…!」
「おう、なんだよやる気かよ?」
「…ッ!」
バッ!
「うぁっ!」
「そんぐらいで済んでよかったな、おい!」
「じゃあまた明日ねぇぇ??」
2人組は去っていった。
すぐさま俺はその少年の元へと駆けていく。
「おい、大丈夫かよ!しっかりしろよ!」
「あ、メイ…恥ずかしいところ見られちまったな…」
「そういう問題じゃないって、早く保健室行くぞ!立てるか?肩貸してやろうか!?」
「メイはいつも優しいなぁ…自分の心配もしなって…」
何者なのだろうか、この親友と名乗る男は。
◆
更に場面は切り替わり、青春を謳歌した…とまでは行かなかった高校へ。
「はい、今日はここまで!さっさと帰った帰った!冬休みだぞ!」
「うおっしゃぁぁぁぁぁ!冬休み来たぁぁぁぁあ!俺達の冬が!ついに!」
「存分に休めるぜ…!」
「お前らいいよなー、俺バイトだぞーバイト。」
「…ちょっとは勉強したらどうですか?」「明日もきっといい天気☆」
「冬休みの祝いに、バンホーテンココア買ってきたから飲むか?やっぱりココアはバンホーテンだよな!」
教室がすっかり冬休みのムードになったが、先ほどの少年は浮かない顔をしている。
「ん…なんでそんな顔してんだ?」
「え、いやいや!?別に?強いて言うなら大学の勉強が大変なんだよねぇ。」
「受験、すんの?」
「え、メイもするんじゃないの?」
あぁ、そうだった…
たしか俺、大学行きたかったんだっけ…
でもそれよりも大切なものを見つけた。
「もう少しで卒業、だね。」
「…そうか、もうそんな季節に…」
「メイってさ、将来の夢、あるの?」
「…ないよ。」
何故かここだけ口が勝手に動いた。
将来の夢?
あるに決まってる!
反フレンズ運動をなくして、アライさんやフェネック達と一緒に幸せに暮らすんだ!
それ以上の幸福なんて無い!
って言いたいけど、そうか。
そもそもまだサンドスターは降ってきてないんだ。
「見つかったらいいね、君の夢…」
「あ……うん。」
「ねぇ、約束して。」
「え?」
「"どんな事があっても挫けないで"…そして、僕を忘れないで。」
「…その約束を、俺は…」
◆
「ん………あ?」
日差しが顔に当たり目覚める。
結局誰だったのだろうか、あの少年は。
でも何故だろう。
「…涙?」
懐かしいような気がする。
ずっと昔から一緒にいたような気がする。
それでも俺は思い出せない。
あの約束、一つは守れなかったのかもしれない…
それでも、もう一つの約束は絶対に守る。
例え世間がフレンズを否定したって、俺は決して挫けたりはしない。
どこまででも、諦めず突き進むだけだ…!
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