第46話 自然

「あらまぁ…」


自然化と聞いて、改めて辺りを見回してみたのだが、結構自然化してるじゃないかぁ…

気のせいだか暑く感じる。

草も段々長くなっていき、木も生えかけている。

なるほど、確かにこんなんじゃあ建物もいつか倒壊するな。

島切り離しまで残り僅か。

アパート取り壊しが決定した今、俺とアライさん、フェネックは引越しをしなければならない。

しかし、家賃ただにしてくれる大家さんなどいるわけが無い。


「…ということなんです、店長さん。」

「いやなんで俺に相談したし。」

「え、泊めてくれるのだ!?」

「誰も言ってないよ!?」

「嬉しいな~、店長さーん。」

「…まぁ、どこかのカフェではフレンズを預かってるって聞いたし、俺の店でも預かることにするよ。」

「やったのだー!」

「ギリギリ自然化に入ってない分ラッキーだと思ってくれ…別館と繋がってるから、そこを使ってくれて構わない。」


という事で、今日からバイト先の空き部屋(別館)で過ごすことになりました。

家具…はもう用意してあるみたい。

誰か住んでいたのかな?


「…まぁ、そろそろ開店時間だ。基本はゆっくりと部屋でくつろぐように。料金さえ払ってくれれば、喫茶は利用できるから、いつでも声をかけてくれ。あ、外に行っても構わないよ。お客様に迷惑にならないように気をつけるんだぞ。」


今日シフトだったらみっちり扱かれていたんだろうな…(妄想)





「いや~、良かったね~見つかって。」

「一時はどうなることかと思ったよ…」

「これで安心なのだ!フハハハハ!」


なにわろてんねん。


ガチャ

「うわぁ!?だだだ、誰!君達!?」

「こっちのセリフだわ。」


突然入ってきたその男の子…

少し幼い見た目をしていて、若干短めの赤髪をしている。

そろそろ中学生になる頃なのだろうか?

にしても誰だこの子…

お客さんかな?


「あ、すまんすまん!説明していなかったな。」

「おじいちゃん!誰なのこの子達!?」

「いやぁ、頼まれちゃってね、ここで暮らすことになったんだよ。」

「驚かせてごめんね、俺はニホンオオカミのメイ。よろしく。」

「アライさんはアライグマのフレンズなのだ!」

「フェネックだよー、よろしく…」


戸惑った様子の彼…

孫にあたるのかな?

その彼はゆっくりと息を吸い──


「は、初めまして!お、おじいちゃんがいつも世話に、な、なってますすす!!僕は蓮(レン)って言います!よ、よろしくお願いします!!」

「あ、レンくん?そのまま頭下げるとさ…」


レンはそのまま頭を下げ、机に…

ゴンッ!


「あいたぁぁぁぁぁあ!?」

「ドジっ子だな。」

「ドジっ子だね~。」

「ドジっ子なのだ!」

「ドジっ子…ごめん、語尾被りそう。」

「乗らなくていいよ!!」


話によると、このレン君は数年前に両親を亡くし、宛が無くなったところを、母親の父親にあたる店長に引き取ってもらったらしい。

にしても…見事なドジっぷりだ。


「こんなんだからろくに仕事も任せられなくてね…」

「おじいちゃん!僕だってもう仕事出来るし!」

「さっき頭ぶつけた人が言ってもね~」

「な、何!?いいか、今に見てろ~!今から後片付けを完璧にやってやるからな!」


果たして上手くいくんだか…

レンはそう言ってこの部屋をあとにしてしまった。


「付いていかなくていいんですか?」

「まぁ今に悲鳴が聞こえてくるよ。」

「えぇ…」


~数分後~


\アァァァァァァァ!?ドンガラガッシャーン!/

「…ほらな。」

「ダメだこりゃ…」





「トイレトイレ…トイレ何処だ!?」

「あちらにございます。」

「おぉ!ありがとう!」


急げ急げ…

~数分後~


「いやぁ~なんとか間に合ったぁ…は!?さっきの誰!?」

「私です。」

「いや本当に誰よ!?」


そこには、召使いのような格好をした男が佇んでいた。

メガネをかけており、何故か目を瞑っている…薄目?なのかはわからん!ぜんぜんわからん!

その髪は金に染められており、

まさに"私は召使いですよhahaha"と主張している。


「初めまして、私は召使いの神無(カンナ)と申します。以後、お見知りおきを。」

「あ、どうも…宜しくお願いします…メイです…って、この店おかしいだろ!?なんで召使いまで雇ってんだよ!?」

「あー、話してなかったねー。」

「うわっ!?後ろに突然現れるのやめて!」


店長は神出鬼没だったのか…

何度も驚かされるよ、ここ…


「いやぁ、俺って店の掃除とかに手が回らなくてね、なかなか別館の家事ができないんだよね~それで召使いを雇ったってわけ。」

「そうなんですか…」


金持ちぃ…ですねぇ?

まさかそこまで繁盛してるとは思わなかったよ…


「メイ様、御用があればなんなりと。」

「いや今なんもないよ…」

「メイー、遅いのだー…?誰なのだ?この人。」

「あ、アライさん。この人は召使いのカンナさんっていう人だよ。」

「"めしつかい"…?」

「要するに、ご主人様のために言われた事をできる範囲で"何でも"する人の事を言います。」

「"なんでも"…」


アライさんの顔が一瞬でイタズラ顔に変わったように感じた。

何かを閃いたアライさんはカンナさんに向かってこう言う。


「逆立ちして三回回って"のだ!"と言うのだ!」

「アライさぁぁぁぁぁぁぁん!?」


スタッ、クルクルクル

「のだ!」

「やったし!?本当になんでもするんですね…」

「はい、ですからメイ様も御用がありましたらなんなりと」

「だからないって。」


そこへ赤い髪の男の子──レンがやってきた。


「酷い目にあったよ…皿を割っちゃって罰として皿洗いだなんて…また皿を割ったらどうするんだよ!おじいちゃん!」

「ドジっ子だな。」

「ドジっ子なのだ!」

「ドジっ子ですね。」

「ドジっ子…ごめん、語尾被りそう。」

「二度も乗らなくてよろしい!!」

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