第46話 自然
「あらまぁ…」
自然化と聞いて、改めて辺りを見回してみたのだが、結構自然化してるじゃないかぁ…
気のせいだか暑く感じる。
草も段々長くなっていき、木も生えかけている。
なるほど、確かにこんなんじゃあ建物もいつか倒壊するな。
島切り離しまで残り僅か。
アパート取り壊しが決定した今、俺とアライさん、フェネックは引越しをしなければならない。
しかし、家賃ただにしてくれる大家さんなどいるわけが無い。
「…ということなんです、店長さん。」
「いやなんで俺に相談したし。」
「え、泊めてくれるのだ!?」
「誰も言ってないよ!?」
「嬉しいな~、店長さーん。」
「…まぁ、どこかのカフェではフレンズを預かってるって聞いたし、俺の店でも預かることにするよ。」
「やったのだー!」
「ギリギリ自然化に入ってない分ラッキーだと思ってくれ…別館と繋がってるから、そこを使ってくれて構わない。」
という事で、今日からバイト先の空き部屋(別館)で過ごすことになりました。
家具…はもう用意してあるみたい。
誰か住んでいたのかな?
「…まぁ、そろそろ開店時間だ。基本はゆっくりと部屋でくつろぐように。料金さえ払ってくれれば、喫茶は利用できるから、いつでも声をかけてくれ。あ、外に行っても構わないよ。お客様に迷惑にならないように気をつけるんだぞ。」
今日シフトだったらみっちり扱かれていたんだろうな…(妄想)
◆
「いや~、良かったね~見つかって。」
「一時はどうなることかと思ったよ…」
「これで安心なのだ!フハハハハ!」
なにわろてんねん。
ガチャ
「うわぁ!?だだだ、誰!君達!?」
「こっちのセリフだわ。」
突然入ってきたその男の子…
少し幼い見た目をしていて、若干短めの赤髪をしている。
そろそろ中学生になる頃なのだろうか?
にしても誰だこの子…
お客さんかな?
「あ、すまんすまん!説明していなかったな。」
「おじいちゃん!誰なのこの子達!?」
「いやぁ、頼まれちゃってね、ここで暮らすことになったんだよ。」
「驚かせてごめんね、俺はニホンオオカミのメイ。よろしく。」
「アライさんはアライグマのフレンズなのだ!」
「フェネックだよー、よろしく…」
戸惑った様子の彼…
孫にあたるのかな?
その彼はゆっくりと息を吸い──
「は、初めまして!お、おじいちゃんがいつも世話に、な、なってますすす!!僕は蓮(レン)って言います!よ、よろしくお願いします!!」
「あ、レンくん?そのまま頭下げるとさ…」
レンはそのまま頭を下げ、机に…
ゴンッ!
「あいたぁぁぁぁぁあ!?」
「ドジっ子だな。」
「ドジっ子だね~。」
「ドジっ子なのだ!」
「ドジっ子…ごめん、語尾被りそう。」
「乗らなくていいよ!!」
話によると、このレン君は数年前に両親を亡くし、宛が無くなったところを、母親の父親にあたる店長に引き取ってもらったらしい。
にしても…見事なドジっぷりだ。
「こんなんだからろくに仕事も任せられなくてね…」
「おじいちゃん!僕だってもう仕事出来るし!」
「さっき頭ぶつけた人が言ってもね~」
「な、何!?いいか、今に見てろ~!今から後片付けを完璧にやってやるからな!」
果たして上手くいくんだか…
レンはそう言ってこの部屋をあとにしてしまった。
「付いていかなくていいんですか?」
「まぁ今に悲鳴が聞こえてくるよ。」
「えぇ…」
~数分後~
\アァァァァァァァ!?ドンガラガッシャーン!/
「…ほらな。」
「ダメだこりゃ…」
◆
「トイレトイレ…トイレ何処だ!?」
「あちらにございます。」
「おぉ!ありがとう!」
急げ急げ…
~数分後~
「いやぁ~なんとか間に合ったぁ…は!?さっきの誰!?」
「私です。」
「いや本当に誰よ!?」
そこには、召使いのような格好をした男が佇んでいた。
メガネをかけており、何故か目を瞑っている…薄目?なのかはわからん!ぜんぜんわからん!
その髪は金に染められており、
まさに"私は召使いですよhahaha"と主張している。
「初めまして、私は召使いの神無(カンナ)と申します。以後、お見知りおきを。」
「あ、どうも…宜しくお願いします…メイです…って、この店おかしいだろ!?なんで召使いまで雇ってんだよ!?」
「あー、話してなかったねー。」
「うわっ!?後ろに突然現れるのやめて!」
店長は神出鬼没だったのか…
何度も驚かされるよ、ここ…
「いやぁ、俺って店の掃除とかに手が回らなくてね、なかなか別館の家事ができないんだよね~それで召使いを雇ったってわけ。」
「そうなんですか…」
金持ちぃ…ですねぇ?
まさかそこまで繁盛してるとは思わなかったよ…
「メイ様、御用があればなんなりと。」
「いや今なんもないよ…」
「メイー、遅いのだー…?誰なのだ?この人。」
「あ、アライさん。この人は召使いのカンナさんっていう人だよ。」
「"めしつかい"…?」
「要するに、ご主人様のために言われた事をできる範囲で"何でも"する人の事を言います。」
「"なんでも"…」
アライさんの顔が一瞬でイタズラ顔に変わったように感じた。
何かを閃いたアライさんはカンナさんに向かってこう言う。
「逆立ちして三回回って"のだ!"と言うのだ!」
「アライさぁぁぁぁぁぁぁん!?」
スタッ、クルクルクル
「のだ!」
「やったし!?本当になんでもするんですね…」
「はい、ですからメイ様も御用がありましたらなんなりと」
「だからないって。」
そこへ赤い髪の男の子──レンがやってきた。
「酷い目にあったよ…皿を割っちゃって罰として皿洗いだなんて…また皿を割ったらどうするんだよ!おじいちゃん!」
「ドジっ子だな。」
「ドジっ子なのだ!」
「ドジっ子ですね。」
「ドジっ子…ごめん、語尾被りそう。」
「二度も乗らなくてよろしい!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます