第44話 順番待ち

結局アライさん達に付いていく形になった。

途中でセルリアンに会ったら危ないし…

でもやっぱり自己防衛はさせた方がいいのかな…

ん~、悩む!

やっぱりアライさんもフレンズだし、身体能力は普通に高いと思うんだよね…


「行列だね~」

「おいおい、山が噴火したのに呑気でしょこの人たち…」


そう言いつつ列に並び、辺りを見回してみると、どうやらあまりセルリアンは出てなかったようだ。

今回は少なくてよかった…


「それにしても…」

「長いのだ~!?」


なんだこの列!?

これ普通に待ったら二十、三十分はかかるよ…

もしかしたら、いつもはこれの倍以上いるんじゃ…

やべぇ、やべぇよ!


「まぁ、騒ぐことでもないか…」

「いやいやいや!さすがにこれは厳しいのだぁ!」

「何か暇潰し出来ればいいんだけどね~まぁ、私は本でも読んでるよ~」

「あ、フェネックだけ暇潰しをしてるのだ!メイ!アライさん達も何か暇つぶしをするのだ!」

「暇潰しってそんなに積極的にするものなのかなぁ…ハハハ」


暇潰しをしよう!と迫ってくるアライさんに思わず苦笑いをしてしまう。

無理もないだろう、こんなに暇潰しをしたい子は初めてだ。

これから一生こんな子は見つからないだろう…


「というか、ここのクレープってそんなに美味しいんだぁ…」

「アライさんも…早く…食べたいのだ…」

「やっぱり暇潰しをしないと!」

「フェネック!何かいい暇潰しはないのか!?」


しかし、フェネックは本を読んだまま返事をしない。

余程ハマる本だったのだろう。

ちょっと気になるな…


「何の本を読んでるの?」

「あ、ちょ!メイさーん、人が読んでる本は勝手に見るもんじゃないよ~…」


残念!メイの本チラ見の旅はここで終わってしまった!

他人に見られたくないほどハマる本なんだな?


「仕方ない、"しりとり"でもしようか。」

「「"しりとり"…」」

「…って、なんなのだ?」


いや知らないんかーい!

てっきり他のフレンズと普通にやってるのかなぁと思ったよ!

しりとりを説明って結構斬新よ…?


「"しりとり"は、まず"り"から始まる言葉を最初に誰かが言って、その言った言葉の最後の文字から始まる言葉を、次の人が言うんだ。"ん"が付いたら負けだよ。」

「例えば、"りんご"、"ごりら"、って感じだね~」

「なるほど、なのだ!でも、もし言えなかったらどうするのだ…?」

「パスを使っていいよ。二回までは次の人に言わなくても順番を回せるよ。」

「よーし!アライさんが絶対に最後まで残るのだ!」

「デスゲームじゃないんだから…」


負けられない戦いが、ここにある…!!

いざ開幕!しりとりデスマッチ…





「じゃあ俺からだ。」


初手は"り"から始まる言葉。

ここはあえて、ベタな"りんご"や"りす"で行くのもありだが、それだと答えやすいだろう。

答えにくい言葉で攻めていく。

これがしりとりの勝利への道…!!


「"リモートコントローラー"」


"ら"で始まる言葉だ…

"ら"はしりとりでもあまり来ない文字!

さぁ、どう来るよアライさん!


「"ラッキー"!アライさんにピッタリの言葉なのだ!次は"き"なのだ!フェネックぅ!」


幸運で結構です…

今のこの状況はラッキーじゃないけどね。


「"き"かぁ…んー…」


次の一手で俺の存続が決まる、と言っても過言ではないだろう。

まぁ大丈夫だ。

特に答えにくい"ぷ"が来なければな…!!


「"keep" "キープ" ぷだよ、メイさん。」


なっ…!どこで覚えた、その単語!

keep 保存する

フェネック…賢いですね?


「"ぷ"…"ぷ"?"ぷ"から始まる言葉…始まる言葉…!」


まさかこんなことになるなんて…

…あっ!


「"プロ"!」

「あ、もう私たちの番だよ~」

「早く食べたいのだ~!」

「無視すな!?」


意外にも俺たちの番は早く来た。

しりとりは…お預け、ってことですね?





「ん~!このクリームとイチゴがとても甘いのだ!中に入ってるアイスもいい感じにとろけてて…さいっこうなのだ!」

「並んでてよかったね~」

「アライさん、生クリーム付いてるよ?

フキフキ」

「アライさんはいっつも口いっぱいに頬張るねぇ~」


アライさんに付いていたクリームを拭いて、俺もクレープを一口頬張る。

ん…甘いじゃないか…

チョコソースが生クリームにとても合ってて…

バナナとクッキーでアクセントを加えてて…

やばい、これはハマる。


「メイ…少しは、楽になったのだ?」

「最近暗いからね~…」

「あ…」


そうだ、あまりの楽しさに自分の罪と、傷の痛みですら忘れてしまっていた。

戒めるべき罪を償わなければ…


「また暗くなってきてるのだ~…でも、やっぱりメイは楽しいことがあればそんな暗いことも気にならないと思うのだ!アライさん達が付いているから大丈夫、な~のだ!」

「難しく考えなくていいんだよ~?メイさーん。」

「…そっか、やっぱ楽しいね、みんなといると…」


やっぱり、楽しく過ごせるというのは良いことだと思う。

辛いことだって、みんなといれば分かち合えるような気がする。

さすがに反省するべきことはあるが…

今は…忘れた!


『楽しむ時は楽しんだ方がいいよ、メイ!』


そんな幻聴が聞こえた。

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