第43話 罪

どんなにポジティブに考えようとも、罪の意識から逃れることは出来ない。

永遠に…

例え、愛する人の言葉で励まされたとしても、自身から罪は消えず、罪は自分にとって重荷となるのだ。


「いつまでそんな暗い顔してるのさ~、メイさーん。」

「…仕方ないでしょ。」

「アライさんにそんな顔見せられるの?」

「…見せられないけどさ、ほんと俺ってダメだなって思うんだよね…」


ダメだ、ポジティブに考えられないせいで全てが暗く感じる…

笑うことすらできない。

わかってる。

こんな態度取ってたら、アライさんをいつまでも不安にさせてしまう…

でも、それでもやはり罪の意識は消えない。

消えてしまう方がおかしいのだが…


「…まぁじっくり考えなよー、その悩み事を1人で…でも、悩み事を他人に打ち明けた方がいいって言ったのは誰かな~?」

「確かに俺だけど、悩み事の規模違うだろうよ…」

「…まぁいいや、メイさんの悩み事…忘れてしまうほど、忙しくて、楽しい毎日にすればいいよ。」

「…無理でしょ、こんな状態で。」

「いい加減にしなよ~?そんなに暗く考えて何か得はあるの?」

「…ごめんなさい。」


そうだ、ポジティブ、ポジティブに…

頭からすっかりツバキの事を忘れてしまえばいい…

女の子に励まされるなんて、カッコ悪いもんな、うん。


「そうだ、ミライさんだ。今俺の体に起ってる異常を調べてもらうんだった…」

「あー、ミライさんね~、この前会ったんだけどさ~、電話番号、教えてもらったからさ、かけてみる?」


いつの間にそんな事を…


「ありがとう、フェネック。」

「んー、じゃあ私はアライさん迎えに行くから~。」


プルルルル…


『もしもし、ミライです。』

「あ、ミライさんですか?お久しぶりです、メイです。」

『あら、メイさんですか?…どうやって電話番号を手に入れたかは聞きませんが、お久しぶりです~。今日は何か用ですか?』

「はい、実は体に異常が起こっていて…それで、ミライさんの知り合いに調べてもらおうかな、と思って。電話番号持ってないので…」

『カコさんの事ですね?とりあえずメモ帳持ってくるので少し待っててください。』


へぇ、カコさんっていう人なんだ…

ミライとカコ…

偶然だけど、対義語みたいになってるわ…


『お待たせしました、では症状をお願いします。』

「はい、幻聴が聞こえたり、なにかを忘れていくような感じがします…」

『何かを…ってなんですか?』

「わかりません…わからないほど忘れてしまったのかもしれません。」

『症状になにか心当たりはありますか?』

「確か…一回トラックに惹かれました。」

『…大丈夫ですか?』

「大丈夫です、頑丈なので。」

『とりあえず、カコさんに伝えてみます。もしわからないことがあったら、検査します。あと…耳と尻尾を揉ませて』

「切りますねー」

『ちょっと!?メイさん!?』


ツー、ツー…

さて、どんな結果が出るか…

それにしてもアライさん、朝からどこに行ったんだろう?


「いてっ!」


まだ治りかけの胸の傷が少し痛んだ。





ドドーッ!!


「なんだ!?」


どうやら火山が二度目の噴火を起こしたらしい…

またセルリアンが発生するかも…

やばい、早くアライさんを探さなきゃ!


乱暴にドアを開け、駆け足で探しに行く。

デジャヴを感じる。

今回は野生解放をしないが…

道中、何体かのセルリアンに遭遇した。

極力戦闘を避けながらも、襲われてるフレンズがいたら助けてあげた。

しかし、アライさんが見つからない。


「なんなのだー!?こいつらはー!」

「アライさん!?」


もしかしたらと思い、公園に行ってみたら案の定いた。

アライさんの側に寄ってくる小さめのセルリアンの石を、パッカーンと割る。


「こ、怖かったのだ…」

「あれぐらいのサイズなら普通にアライさんでも倒せると思うんだけど…」


うん、自己防衛も学ばせないとダメだな。

そういえば、さっき迎えに行くといったフェネックがいない。

どこへ行ったのだろうか?


「あれ、フェネックは?」

「来てないのだ…」

「さっき迎えにいくって言ってたんだけど…」


もしかしたら、迎えに行ってる途中に何かあったのかもしれない。


「大変だ、今すぐ探しに行かないと!」

「あ、来たのだ!フェネックぅ~!」

「ごめんね~?遅くなっちゃってー」


いや来るんかーい!

確かになんも無いようで良かったけどさ…

ふと、フェネックの腕を見てみると、何やら後ろに隠してあるようだった。

本…?


「あれ、フェネック、その本は?」

「な、なんでもないよ~、ちょっと面白そうな本があったから、図書館で借りただけ。」

「ふーん。」


ならなんでそんな隠すように持つんだろ…

何か秘密があるのかな?

まぁいいや、あまり深く探るとろくな事がないってこの前学んだばかりだ。


「二人共、今日はどこいくの?」

「うーん…決めてないのだ。」

「私は最近出来たクレープ屋に行きたいなぁ。」

「なんなのだ!?それ!食べたいのだ!アライさんも一緒に行くのだ~!」

「そっか、でも気をつけてよ?セルリアンが出てるからさ。できるだけ、見たら逃げるようにね?小さめのやつなら後ろの石割れば普通に倒せるからね?」

「ふっふーん!言われなくてもわかってるのだ!」

「心配だなぁ…」


先程襲われていたのは何処の何方でしょうか…


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