第40話 裏切り
「ふぅ…」
フレンズと人間ではまず身体能力の差がある。
生身の人間がフレンズに勝てるわけがない。
とりあえず勝った。
「はぁ…はぁ…なんだ、よ!中学の時よりも強くなりやがって…はぁ…」
「そりゃあ、フレンズだから。」
「反則かよ…おい…」
とりあえずさっさと店に戻ってみんなに伝えよう。
"あいつは帰った"って。
そして料理食って楽しく集いを…むふ~。
「おい!待てよ!」
「なんだよ…今頃用かよ?」
「いじめて悪かったな…」
「お、おう…」
「気をつけろよ!」
「あ、うん…」
何に気をつけるというのだろうか。
ちょっと意味がわからない。
◆
「ただいま~…」
「大変だったな~、メイ?」
「いや、どうってことないって。フレンズは丈夫だからね!」
「あ、そっかぁ。ところでさ、アライさんとツバキがそっちに行ったと思うけど、見なかった?」
「え?」
言われてから気づいたが、アライさんとツバキがいない。
どこに行ったんだ?
「"メイを迎えにいく"って、ツバキがいってたからさ。それでアライさんも連れてって。…ほんとに見なかったか?」
嫌な予感がする。
心臓の鼓動が早くなるのがわかる。
アライさん…一体どこに。
「俺…探しに行ってくる!」
「あ、ちょ!メイ!?」
「騒がしいやつだな…やれやれ。」
「それ、元ムードメーカーのお前が言うか?」
「そうだな…では1発!」
「待ってました!」
「さんしゃいいいいいいいいいん!!いぃぃぃぃぃぃけ!ざぁぁぁぁ」
「それにしても料理遅いねー。」
「無視すんな!?」
◆
雨が降っていた。
来る時は降っていなかったのに。
土砂降りだった。
俺は土砂降りの中、野生解放で、走る。
街中を駆ける。
店にはいなかったのだから、きっと街にいるんだろう?
アライさん…アライさん!
通行人を避けて走る、走る。
車を飛び越え、走る。
「ハァ…ハァ…!」
ダメだ、見つからん…
どこにいるのかぜんぜんわからん!
もうサンドスターも尽きてきたようだ。
もちろん、俺の家にもいなかった。
バイト先にもいるわけでもない。
「どこに…いるんだ…よ!」
息切れが激しい。
あぁ、もう。
あいつは一体どこに連れていってしまったんだ。
ツバキ…!
「!」
俺の耳が、微かだけど、ほんの微かだけど、アライさんの声を捉えた。
路地裏…にいるようだ。
最近路地裏に関わること多いんじゃないか…?
◆
「メイはどこなのだ?こんなところまで来たのか?」
「…」
「なんか言うのだ!ツバキ!」
「…そ」
「ん?」
「嘘だよ~…ハハハ、こんな簡単に騙されるなんてねぇ!」
「つ、ツバキ…?」
その時。
ツバキはアライさんを押し倒した。
二人の息が交じる。
「馬鹿だよねぇ…?君も…メイも…この俺に騙されちゃってさぁ…?」
「な、何をするつもり…なのだ?」
「フフフフ…ハハ…」
薄気味悪く笑うツバキ。
いつも人付き合いが良い彼の姿からは、とても想像出来なかった。
「な、なんの冗談だか知らないけど、は、早く離すのだ!」
「冗談じゃないよぉ?フフフ…」
そして、ツバキは強引にアライさんの唇を奪う。
気持ちの悪い感触が口の中を這う。
あの時とは違う。
キス…
メイはそう言ってた気がする。
大切な人とする…
いや、これは違う。
「フフ…アライさぁん…」
「い、いや…助けて欲しい…のだ!メイ…ムグゥ!?」
「ちょっと黙っていようね~?」
「んぅーー!」
強引に口に綿を詰められる。
最初からこうするつもりだったんだろうか?
ダメだ、もう無理だ…
ごめんなさい、なのだ…メイ…
「アライさん!」
◆
「チッ、もう来たか…」
目の前に広がる光景は現実、だろうか?
いや、有り得ないよね。
そうだ、幻聴を度々聞くんだ。
幻覚だって見ても不思議ではない。
…現実逃避はやめよう。
「おい、ツバキ…俺の彼女に何してやがんだよ…」
「何って?なんのことかなぁ…?」
「しらばっくれんじゃねぇよ…裏切り者が。」
ツバキはゆっくりと立ち上がり…ポケットから"刃物"を取り出した。
「このナイフで…邪魔者を切り裂いてあげるよぉ…?フフ…」
「サイコパスかよ、おい!」
ツバキは最初からそうするつもりだったんだろうか?
やるしかない。アライさんを裏切り者の手から取り戻すために。
「初めからねぇ…?君を裏切るつもりだったんだァ…ヘヘ♪君がどんな顔をするのかなぁ、ってさ!裏切られた時の顔!大事なものを取られた時の顔をねぇ!」
このタイミングで俺は幻聴を聞いた。
後ろから、懐かしい声が聞こえる。
『あいつら、ほんと許せないよね…二人でよってたかっていじめてさ。メイもなんか言ったらいいのに!』
懐かしい親友の声が聞こえた。
そうだ、必ずしも主犯は1人とは限らないんだ。
思い出した。
主犯はあの大男だけじゃなかったんだ…
『これ以上主犯がこられたら困るからさ。』
この言葉の意味、ようやく理解したよ。
「ツバキ、お前…」
──いじめの主犯の1人、だな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます