第39話 集い
ガヤガヤ…ガヤガヤ…
店内はとても騒々しく、酔っ払いも見られる。
昼は親子が訪れるレストランだが、夜になると居酒屋のようになる、そんなレストラン。
俺はツバキ、アライさんと共に集いの会場へ来ていた。
「いざ来てみると緊張するんだがそれは…」
「いや、大丈夫でしょ。なんたって元クラスメートだよ?」
「…ツバキ、それ俺の待遇を知って言ってるか?」
「早く入るのだ!」
自動ドアを開け、いざ入店。
酔っ払いで溢れるレストランへ…
◆
「よぉ、メイ。久しぶりだな…ってなんだその姿!?(驚愕)」
「お、なんだ?その子?彼女出来たのか?」
「うぃぃぃぃぃぃぃっす!」
意外にも暖かく受け入れられる。
中学生の時はそこまで賑やかに感じなかった教室だったが、今は賑やかに思える。
「オッスオッス!とりあえずそこ座っていいか?」
「べ、別にいいけど…」
「んじゃ俺達はここに座らせてもらうよー」
「いいぞ!ドンと来い!」
「稽古じゃねぇよ。」
俺の席の周りにはかつてのクラスメイトの姿、とても楽しそうな姿があった。
中学生の時も、頑張ればもっと楽しめたんじゃないかな?
一方ツバキの方は…あれ、そんなに賑やかじゃないな。
根暗さん大集合しちゃった?
「ところでさ…お前といつも一緒にいたやつ、来ないの?」
「え」
「中学生の時にいつもいたじゃんか。」
「いやぁ…最近物忘れがひどくてね、忘れちゃったかなぁ…」
「お前はジジイか。ビシッ」
「なんでツッコミすんねん。ビシッ」
ツッコミ合いが始まってしまった。
まさしくこれが欧米…
「メイ、もう頼んでいいのかー?」
「アライさん、もうちょっと待ちな?まだ誰か待ってるみたいだしさー。」
「いや、いいよ?頼んじゃって。…主犯がさ、これ以上来られると困るからさ、さっさと頼んで帰ろ?」
「あ、うん…アライさん、何食べたい?」
「これ食べたいのだ!」
「んじゃ、俺ピザかなんか頼んどくね…」
悲しいなぁ…
主犯のために集いを早く切り上げなくちゃならないなんて…
でも、無駄な争いが起きないことはいいことだと思う。
「可愛いね~」
「君、どこの子?」
「ふぇ!?…アライさんが可愛いはずがないのだ!アライさんはな、獰猛な肉食獣なんだぞ!」
「にくしょく…?」
「あぁ、言ってなかったね。この子はアライさん。アライグマのフレンズなんだ。」
「フレンズって言えばさ、メイ…それどうしたの?」
「いやぁ、訳あってこうなっちゃったんだよね。」
「あ、ふーん…」
とりあえずアライさんの紹介も済んだし、あとは穏便に終わってくれれば…
「よぉてめぇら、元気してたカ?」
「げっ、主犯だぞ、メイ。コソコソ」
平和だった集いに、突如大男が参戦した。
タトゥーを所々付けており、まさに"ヤンキーです"と自分から告白している。
穏便に終わるはずがないよな、そりゃ。
そんな都合の良い絵本みたいな話ないし…
「あぁ?獣くせぇな?おい!…んぁ?見慣れねぇやつが二人いるじゃねぇかよ!誰だこいつら!」
「…俺はメイだが。」
「あ、アライさんなのだ…」
「メイ…?あぁ、あいつか、このオレサマに!いじめられてたやつかァ?ったく、何年か会わなかっただけでこんなに変わるんだなぁ?」
「別に関係ねぇ…ボソッ」
賑やかだった集いの空気は一気に最悪なものと化していた。
根暗組よりも最悪な空気だ…
「料理まだかよー?おい!ここの店ノロマしかいねぇんじゃねぇのかァ??」
主犯だった彼は横暴な態度で椅子に座り込む。
机に足を乗せて。
ここだけじゃなく、店内の空気も最悪なものとなっていた。
「お、お客様。そのような態度は他のお客様に迷惑がかかりますので、止めて頂けないでしょうか?」
「あァ?これがオレサマの普通の態度だよ!馬鹿野郎!」
「も、申し訳ありません!」
「店長呼べ!店長を!」
「は、はい!」
店員さん、災難ですね…
アライさんのほうを覗いてみると、ブルブルと震えていた。
こりゃ料理がどうとか言ってる場合じゃないよ…
「いい加減にしなよ!こっちはあんたのためにこの会を開いてんじゃないんだかんね!」
あれは…元風紀委員長じゃないか。
「そうだよ!やめなよ!こんな事!」
元風紀副委員長も…
そうだ、止めろ、止めろ…
止まるんじゃねぇぞとか言ってる場合じゃないぞ…
止まるんだぞ…
「うっせぇなぁ!」
彼は風紀副委員長に殴りかかる。
副委員長はその馬鹿力に思わず倒れてしまう。
「キャーッ!」
「おい!もうやめろよ!」
「お客様、おやめ下さい!」
「そうだ、警察警察…しまった、電話を忘れてしまった!」
あぁ、なんとなく予想してたけど…
誰か止めてくれ…
止まれ…止まれ…
…誰かに頼るのはもうやめだ。
「おい!お前、そろそろいい加減にしろよ!」
「うわ、雑魚が立ち上がってやがんの!ばっかじゃねぇの?ケラケラ」
そいつは嘲笑いながら俺を見下す。
ここにいるみんなのためにも…
アライさんのためにも…
不快な思いはさせたくない。
「表出ろ。ここじゃ迷惑だからなァ?」
「仕方ねぇな、雑魚が。泣いて詫びても許さねぇからな?」
「め、メイ!」
心配したのか、アライさんが俺に声をかける。
そんなにひ弱に見えるか?
「安心して、アライさん…俺は人間よりも、丈夫で強い、フレンズだから…」
「…」
「…早く出るぞ!」
そう言って店を出た。
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