第36話 カラオケ
「メイ、"からおけ"ってなんなのだ?」
アライさんの言葉に思わず戸惑う。
アライさんはまだカラオケのことを知らなかったのか。
興味深そうに、目を輝かせて尋ねるアライさん。
「んー…カラオケっていうのはね、歌う所だね。お金かかるけど、その分みんなで歌って楽しめる場所だよ。」
「…わざわざお金を払って歌うのか?ヒトってよく分からないのだ…」
「まぁまぁ…そうだ、今夜行ってみようか?みんなも誘ってさ。近所に安い所あるし。」
「行くのだ!もちろん!」
やっぱり歌いたかったんじゃないか…
アライさんの目は、質問した時よりもずっと輝いていた。
◆
「はい、カラオケです。」
「突然どうしたのだ?」
「ご飯はないのですか?」
「歌って何が楽しいのですか…」
「私はあまり歌が得意じゃないぞ?」
「まーまー、ゆっくりしてこうよー」
「私、歌いたい!」
みんなを誘ってカラオケにやって来た。
まずは俺がお手本を見せないと分からないよな。
とりあえずこのマイクと…なんていうんだ?予約する機械みたいなやつ紹介しなきゃね。
「まずこれはマイクって言うんだ。」
「興味深い形をしてますね…」
「これは何に使うのですか?」
「見てなよ?」
マイクを口の前に持っていく。
「あ(エコー)」
「わぁ!?」
みんな思わず驚いてしまう。
コノハなんて細くなってる…
あれ…フェネックさん?
驚いてませんね?
「すっごーい!なにこれなにこれー!」
「これを使って歌うんだよ。」
「知ってるよー、私前にも来たことあるんだよー?」
もしかして教えたのあなたですか…
じゃあなぜ意味も教えてあげなかったんだ…
「とりあえず、歌うか。この機械を使って、歌いたい歌の名前を打つんだよ。」
「歌…ねぇ、私はあまり歌を知らないが…」
「まぁ、とりあえず見てなよ。」
さて、久しぶりに歌うぜ!
俺の十八番!
♪残酷な天使のテ〇ゼ
◆
82点
「なぁ…メイ、これっていい方なのか?」
「アハハ…イイホウダトオモウヨ」
「棒読みなのだ!?」
久しぶりに歌ったとはいえ、流石にひどすぎる!
こんな…こんな仕打ちってありますか!?
「歌はいいのですが…」
「…お腹が減ったのです。グー」
「そんな時はね…」
メニューを見ながら電話をかけ、注文する。
そう、ここは格安、そしてご飯も食べれる至福のカラオケ…!!
「すぐに届くよ。」
「「本当なのですか!?」」
「ご飯もあるなんて…このカラオケすごいのだ♪」
◆
そこから俺達はいっぱい、いっぱい歌った。
アライさんと一緒に歌ってみたり、サーバルちゃんが自分の声に驚いて思わずマイク落としたり、ヒグマさんが実はめっちゃ歌がうまかったり…
「楽しかったなぁ。」
「またメイと来たいのだ!」
今度は、二人で…
「メイさ~ん?」
「ん…あれ、フェネックじゃん?さっき帰ったんじゃなかった?」
「その事なんだけどね~…」
◆
反フレンズ運動は高まっていくばかりだった。
何故俺達人間が大分を出ていかなきゃダメなんだ!という声も上がり、かなり弾圧されている。
フェネックはそんな中、運動の影響もあり、住まわせてもらってる場所を特定され、毎日郵便物が届いたそうだ…
「…ということで、泊めさせてもらってもいーかなー?」
「…もちろんだよ、そんなことになってたなんて…」
「フェネックが泊まるのだ!?嬉しいのだ!フェネック、帰ったら何をするのだ?」
「う~ん、何しようかなぁ~」
仲良き事はいい事だ。
仲良しの二匹の後ろ姿は、かつての親友と俺を思い出させてくれる。
そう、俺の親友の、カエ…
…?
「メイ?ぼーっとしてないで早く行くのだ!」
「あぁ、ごめんごめん、今行くよー!」
「二人共ー、信号赤になるから気をつけてー。」
◆
同居人が増えた。
新しい同居人が。
アライさんと仲が良い友達だ。
親友、というレベルでも良いだろう。
本当に仲良しだ…
アライさんとフェネックは隣同士で寝ている。
これはまた朝が大変だぞ…
主に食事の準備が。
ノックする音が聞こえた。
「メイ?そこにいるんだろう?」
聞き覚えのある声だった。
その声は最近聞いていなかった声。
別れたはずのあの"人"。
呼吸が早くなるのがわかる。
胸がドキドキするのがわかる。
そうだ、今自分は緊張しているんだな。
ゆっくりと、ドアを開ける。
そこには…
──誰もいなかった。
「…?」
おかしいな、確かに"アイツ"の声だったのに…
疲れてるのかな、もう寝た方が良さそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます