第34話 前日
最近アライさんが変だ。
なにか話しかけると凄く動揺するし、出かける頻度も増しているし、何よりも距離を置かれている感じがする。
俺はなにか気に障るようなことをしてしまったのだろうか?
それともなにか悩みが…
「アライさーん、また出かけるのー?」
「そ、そうなのだ!公園に行って遊んでくるのだ!」
「俺もついていこっか?」
「べ、べつに大丈夫なのだ!」
独立したいのだろうか?
それとも俺が傷つけてしまったのだろうか?
アライさんは足早に家を去ってしまった。
「なにか…仲直りできるものは無いのか?」
◆
一方公園では、五体のフレンズが集っていた。
「ということで、メイにサプライズをするのです。」
「プランは前々から用意してあるのだ!明日はメイの大切な日、だから絶対に失敗できないのだ!」
「でもさ~」
みんなが一斉に振り返る。
このプランに何か意見があるのだろうか?
「誕生日といえばさ…プレゼント、用意しなくていいの?」
「「「「あ…」」」」
なんということでしょう。
誕生日のプランを用意していたのにも関わらずプレゼントを用意していなかったのだ。
「ど、どうするのだー!?もう明日まで時間がないのだ!」
「誕生日にお花をプレゼントする人もいるって聞いたことあるよー!お花をプレゼントしてあげたらいいんじゃないかな?」
「花…」
無論、そこら辺で拾ってきた花などをあげることは出来ない。
花屋に行けば花はあるだろうが、どういう花を選べばいいかもわからない。
一向は行き詰まってしまったのであった…
◆
「アライさんと仲直り出来るもの…出来るものはないのか…?」
未だに俺は迷っていた。
その時、テレビの音声が俺の耳に入った。
『花には花言葉があるのはご存知ですね?花言葉にちなんだ花をプレゼントするのは良い事です。ただ、悪い花言葉を含む花もあるので、そこは気をつけた方がいいですよね~。』
…"花"。
大切な人に送る花。
そうだ、花だ。
花を渡してキチンと謝ろう。
そしてまた、いつもみたいに話したい…!
「花屋…行くか。」
◆
「ヒグマ!」
「ん…なんだお前ら、今日は揃いに揃って…」
「明日はメイの誕生日なのです。」
「誕生日に花を贈るのです。」
「我々では分からないことがあるので仕方なく花のことをお前に聞いているのです。」
「突然ごめんね~?でも私達じゃどの花を贈ればいいか分からなくて~…」
誰にだってどうしてもわからない時というのはある。
行き詰まってしまった一行は、誕生日のことを知らなかったヒグマの元へ向かった。
「花、ねぇ…」
「なんでもいいのだ!」
「…花言葉って知ってるか?」
「私知ってるー!なんか…お花に意味?があるんだよねー?」
「まぁそんなものだ。」
◆
だめだ…思いつかない!
そもそもなぜ俺はアライさんを怒らせてしまったのだろうか?
というかそもそも原因はなんだ?
その時、テレビの音声が俺の耳に入った。
『花には花言葉があるのはご存知ですね?大切な日に花を贈る人は、決して少なくはありません。今日は花言葉についてご紹介します…』
「これだ!」
アライさんに花を買ってあげるんだ。
花言葉で想いを伝える…
そしてその後に自分の口からも自分の想いを伝えるんだ。
また前みたいに笑顔で暮らしたいから。
「花屋に行くか…」
◆
「ただいま~」
花を買った。
アライさんに贈る花を。
でもこれは明日…サプライズで贈る。
どんな顔をするのかな?
笑ってくれるかな?
仲直りしてくれるかな?
なんだか今から緊張してくる…
「お、おかえりなさい!なのだ!」
「アライさん、また動揺してるけど…」
「べ、別に何でもないのだ?」
「そう?」
アライさんはそう言って足早に部屋に行ってしまった。
やっぱ嫌われちゃったのかな…
絶対に仲直り、しなきゃ。
◆
やっぱメイの前にいると緊張するのだ…
明日のサプライズは絶対に成功させなければいけないのだ。だからアライさんはメイから離れないといけないのだ…
近くにいたら思わずサプライズのことを喋ってしまいそう。彼女はそう思っているのだが、メイに素っ気ない態度をとって離れてしまっている自分を情けなく感じていた。
ダメなのだ!もっと自然に接しないと…!
「アライさ~ん?」
「!」
「どうしたの?最近変だよ?」
「べ、別になんでもないのだ…」
「大丈夫?本当に」
「何でもないのだ!だからメイはあっちにいっててほしいのだ!」
「え…」
「…ごめん。」
メイは部屋のドアを閉め、夕飯の支度を始めてしまった。
ごめんなさい…なのだ…
彼女はバレないように枕を涙で濡らす。
明日のサプライズがバレないためにとはいえ、あんな態度を取ってしまうだなんて、彼女自身も予想はできなかったのだろう。
メイは…アライさんのことが嫌いになっちゃったのかもしれないのだ…
本当に…ごめんなさいなのだ。
今すぐメイに謝りたいが、自分が誤ってるうちに何か言ってしまうのではないか?サプライズを台無しにしてしまうのではないか?
そんな心配で謝ることは…できなかった。
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