第33話 アルバイト

「失礼しまーす。」


うわぁ、久しぶりのバイトだ。

あぁ、こんな所に傷があったりしたよなぁ。

新入りも結構いるな?

でもやっぱ相変わらず変わってないなぁ…


「もしもーし?」

「はい?」


突然後ろから話しかけられたので振り返ると、うーん、誰だ?

バイトの制服着てるからどう考えても新入りなのは分かるけど…


「あなたがメイさんですね!初めまして。葵(アオイ)と申します!今日はメイさんが初日のアルバイトということで、先輩として教えるべき事を教えていきます!」

「いや、俺はそうじゃなくて」

「では早速行きましょう!」


話を聞きなさい…アオイさん。

アオイと名乗った少女…歳は17,8ぐらいかな?はカウンターの向こうに行ってしまった。

仕方ないので付いていくことにした…





「まずは皿洗いです!初日は皿洗いをするんです!多分!」

「多分て…あと俺は初日じゃなくて」

「では見ていてください!私の高速皿洗いを!」


話を聞けと言うとるでしょうが。

あ、でもめっちゃ皿洗うの速い…

すっごーい!あなたは皿洗いが得意なフレンズなんだね!


バリィン!

「あ!またやっちゃった!」

「おい!またやったのかアオイ!」

「ひぇぇ…すいません先輩。」


日常茶飯事なのか…

もうちょい丁寧にやれば完璧なのに…





「慣れたら料理や飲み物を運んでもらいます!こうやってお盆を使うんですよ!」

「だから俺は」

「では運んでいきますよ!よいしょ…と。」


うわ!?すごいな!?

四つのお盆を一気に持ってるよ…

バランス力もすごい。

今度こそ期待できますよこれは。

にしてもホント話聞かないな…?


「おい!注文したのと違うぞ!」

「申し訳ありません!間違えました!今持ってきます!」

「それにそこのフレンズ!邪魔だ!どけ!」


思わぬ声にキレそうになるがここはぐっと堪える。

メイ、お前はアルバイト店員だ。

お客様は神様であるのだぞ。

クレームを付けてくるミジンコになぞ構ってはいられないのだぞ。


「はぁい…すいませんでした。」

「な、なに睨んでんだよ…」





「最後はこれです!コーヒーを入れるんです!これ憧れてる人多いんですよねぇ…では、早速やっていきます!」

「だから俺は…もういいや。」

「何か言いました?」

「いえ、何も。」


なんでこんな時に限って聞いてるんだこの人は…!!

にしても…

もう見慣れたがテクニックは良いんだよなぁ…

問題はこの後なんだけど…


「出来ました!では早速味見してみてください!」

「あ、はい…」


ゴクッ


「あぁぁぁぁ!?辛い!?」

「え!まさか!そんなはずは…ないですよ!」


嘘でしょ?

どうやったらあの行程で辛くできたの?

失敗パターン斜め上、明後日の方向に行ったよ?

アライさんもビックリだよ?

てっきり甘い落ちかと思っていたのに…!

口が!口が痛い!





「すいません…私、失敗ばかりで…全然参考にならないですよね…」

「落ち込まないでください。誰にだって失敗はありますよ。」


落ち込むアオイさんを慰める。

確かに彼女はスピードはいいのだが、どこかで失敗してしまう。

原因が分からなければ治らないし…


「あ、メイくんじゃないか!来ていたなら真っ先にこっちに来てくれないと…」

「店長!すいません。ちょっと用事があって…」

「え、お2人とも知り合いなんですか?」

「メイくん?話してなかったのかい?」

「俺は何度も話そうとしたんですけどね…」


絶対こうなると思ったよ。





「そうなんですね!メイさんは前にもここでバイト経験があったなんて…知りませんでした!偉そうにしてごめんなさい!」

「いや、いいんだよ?別に。」


…という事で。

俺には愉快な後輩ができました。

失敗ばかりしてしまう人ですが…

原因が分かればすぐにでも直してあげなければ…!


「改めまして!青月 葵(アオツキ アオイ)と申します!メイ先輩、宜しくお願いします!」

「あ、あぁ。こちらこそ。」


自己紹介なのにとんでもない気迫を放ってくる彼女に思わず後ずさりしてしまった。

これは…バイトも楽しくなりそうだなぁ。


ガチャン

「「いらっしゃいませー!」」


久しぶりのバイトを再開する時が来た。





「あぁー…どっと疲れた…」


なんだか今日はホント疲れてしまった。

やっと家だよ…まったく…

やっぱ久しぶりだから慣れてなかったのかな?


「ただいまー…」

「おかえりなのだ!メイはきっと疲れてるだろうと思って、アライさんがご飯を作っておいたのだ!」

「ありがとう、アライさん。」


アライさんに導かれるまま席に座る。

結構豪華ですね…?

アライさんここまで料理が上手くなってただなんて…


「「いただきます!」」


あぁ…美味しい。

アライさん特製のハンバーグはとてもジューシーかつ柔らか。

俺よりも料理上手いかも?


「アライさん、これ美味しいよ!」

「メイが喜んでくれてアライさんはとても嬉しいのだ…//」


帰ってきたら料理が用意されている。

異性の作った料理。同居人の作った料理。

2人で料理を食べる。

美味しい料理を。

これってなんだか新婚生活…のような?

そう考えてると顔が熱くなるような感覚を覚えたのは気のせいかな?

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