第32話 段々と

『これまで注目され続けてきた未知の物体、サンドスターですが、新しい性質がある事が分かりました。』


久しぶりの特集に思わず俺も驚く。

最近は研究が遅れてるのか、それとも難航しているのか。

セルリアン以来特集は無かった。


『自然化現象と言われるもので、サンドスターは独自の地域を構成することができます。特定の条件、特定の場所で、ゆっくりと地域を構成します。』

「ん?」


どういう事だ?

地域って?自然化…てことは間違いなく自然に還る…って事だよね。


『わかりやすく言いますと、サバンナやジャングルといった地域が構成されます。』

「は?なんだよそれ!?」


思わず声を上げてしまい、アライさんを驚かせてしまう。

もうなんでもありじゃないか…


『そしてですね、この現象が進んでるのは…』


次の瞬間、俺は驚く事となった。



──キョーシュー地方・大分エリアです。


大分エリア!?それって俺が住んでる…

いやいや、これどうなっちまうんだよ…


『自然化が進めば、人々が建てた建物は崩れ去っていくでしょう…その自然化は、更に拡大もするので、放っておけばキョーシュー地方全域に広がってしまうでしょう…そこで政府は、大分エリアを切り離し、管理する事に決定しました。』


切り離すだって?


『サンドスターを使ってエリアを切り離す。サンドスターは物理法則でさえも無視してしまうので、そんなことが出来てしまうのです。政府は二ヶ月後にエリアを切り離す予定です。大分の住民には未だ命令は下っていません…』


はぁ…

てなるとここから引っ越すのか?


「メイ…さっきから声上げたり変な顔したりして…どこか悪いのか?」

「あ、いや、大丈夫だよ。ごめんね?驚かせちゃって。今ご飯作るからね。」

「変なメイなのだ…?」





先ほど血液検査の結果が届いた。


「なんだこれ…?」


間違いなく親の遺伝子は含まれている。

もちろんサンドスターも。

しかし、親の遺伝子が問題だったようだが。


「おいおい、こんなのありえるかよ…」


«貴殿の遺伝子には、絶滅種ニホンオオカミの遺伝子が僅かに含まれていた。ありえない話だが、先祖はニホンオオカミだったのかもしれない。»


先祖がニホンオオカミ…?

てなると、俺の今の体の中にはニホンオオカミの血が僅かながら流れていて、人間の血が主に流れているわけだ…

しかしそれだけではフレンズにはなり得ない…


『ぶつかるぅぅぅぅ!?』


そうだ、アライさんと初めて会った夜、俺はサンドスターとぶつかった。

それの影響、そしてニホンオオカミの血が少なかったので、少しずつフレンズ化が進んだってわけか…


「しかし先祖がニホンオオカミとはな…これは驚きだ。」


段々と謎は解明されていくが、やっぱ謎は多い…





ツバキに頼ってばかりじゃ申し訳ないと思った俺は、アルバイトを探す。

面接しては落ち、面接しては落ちる…

何がダメなのだろうか?

フレンズが働くってそんなに…


「またメイは難しい顔をしてるのだ。」

「アライさん…」

「そんなに難しい顔をしないで、明るく考えるのだ!楽しいこと、面白いことをやれればそれでいいのだ!」

「でもなぁ…お金ツバキに借りっぱなしなのはよくないかなぁ…」


どうすればいいか分からなくなり、頭をかきむしる。

爪が鋭いので普通に痛い。


「何回失敗してもいいのだ!その後成功した時にとても嬉しくなるのだ!アライさんもそれは同じなのだ!」


アライさんは親指を立ててそう言う。

最近の俺は何かと難しい事を考えがちで、自分の祖先とか、人間とか、フレンズとか。

難しい事を考える度にアライさんが指摘してくれる。

やっぱ俺もこの癖治さなけりゃな…


「…うん、難しい事、考えすぎないようにするよ。今度どこか行く? 」

「ふぇ!?えぇ~と…いきなり言われてもわからないのだ!」

「それもそっか。ん~、じゃあどこにしようかな…」


その時、俺のスマホが着信音を上げる。

この番号…俺が働いてた場所…


「はい…もしもし。」

『もしもし?メイさん?突然すみません。早速ですが…』

『…また働いてくれませんか?』

「え…何故ですか?」

『やっぱフレンズだから、って理由で解雇は良くないかな…と思いまして。もし良ければ、明日の正午に来てください。フレンズになってから少し生活が変わったかと思いますが、もし難しい事があったらちゃんとサポートは致します。』

「もちろんです…!明日ですね!ありがとうございます!」


電話で話してるのにお辞儀をしてしまう。


「変なメイ…なのだ?」


これでツバキにもう借りなくて済む…

ツバキ、今までごめんね?


「また働けるって…これでツバキにお金借りなくて済むよ!」

「本当か!?やったのだ!メイはやっぱりすごいのだ!!」


アライさんはそう言って俺に飛びつく。

それをしっかり受け止める俺。


「アルバイト、しっかり頑張るのだ!」

「うん!」

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