第32話 段々と
『これまで注目され続けてきた未知の物体、サンドスターですが、新しい性質がある事が分かりました。』
久しぶりの特集に思わず俺も驚く。
最近は研究が遅れてるのか、それとも難航しているのか。
セルリアン以来特集は無かった。
『自然化現象と言われるもので、サンドスターは独自の地域を構成することができます。特定の条件、特定の場所で、ゆっくりと地域を構成します。』
「ん?」
どういう事だ?
地域って?自然化…てことは間違いなく自然に還る…って事だよね。
『わかりやすく言いますと、サバンナやジャングルといった地域が構成されます。』
「は?なんだよそれ!?」
思わず声を上げてしまい、アライさんを驚かせてしまう。
もうなんでもありじゃないか…
『そしてですね、この現象が進んでるのは…』
次の瞬間、俺は驚く事となった。
──キョーシュー地方・大分エリアです。
大分エリア!?それって俺が住んでる…
いやいや、これどうなっちまうんだよ…
『自然化が進めば、人々が建てた建物は崩れ去っていくでしょう…その自然化は、更に拡大もするので、放っておけばキョーシュー地方全域に広がってしまうでしょう…そこで政府は、大分エリアを切り離し、管理する事に決定しました。』
切り離すだって?
『サンドスターを使ってエリアを切り離す。サンドスターは物理法則でさえも無視してしまうので、そんなことが出来てしまうのです。政府は二ヶ月後にエリアを切り離す予定です。大分の住民には未だ命令は下っていません…』
はぁ…
てなるとここから引っ越すのか?
「メイ…さっきから声上げたり変な顔したりして…どこか悪いのか?」
「あ、いや、大丈夫だよ。ごめんね?驚かせちゃって。今ご飯作るからね。」
「変なメイなのだ…?」
◆
先ほど血液検査の結果が届いた。
「なんだこれ…?」
間違いなく親の遺伝子は含まれている。
もちろんサンドスターも。
しかし、親の遺伝子が問題だったようだが。
「おいおい、こんなのありえるかよ…」
«貴殿の遺伝子には、絶滅種ニホンオオカミの遺伝子が僅かに含まれていた。ありえない話だが、先祖はニホンオオカミだったのかもしれない。»
先祖がニホンオオカミ…?
てなると、俺の今の体の中にはニホンオオカミの血が僅かながら流れていて、人間の血が主に流れているわけだ…
しかしそれだけではフレンズにはなり得ない…
『ぶつかるぅぅぅぅ!?』
そうだ、アライさんと初めて会った夜、俺はサンドスターとぶつかった。
それの影響、そしてニホンオオカミの血が少なかったので、少しずつフレンズ化が進んだってわけか…
「しかし先祖がニホンオオカミとはな…これは驚きだ。」
段々と謎は解明されていくが、やっぱ謎は多い…
◆
ツバキに頼ってばかりじゃ申し訳ないと思った俺は、アルバイトを探す。
面接しては落ち、面接しては落ちる…
何がダメなのだろうか?
フレンズが働くってそんなに…
「またメイは難しい顔をしてるのだ。」
「アライさん…」
「そんなに難しい顔をしないで、明るく考えるのだ!楽しいこと、面白いことをやれればそれでいいのだ!」
「でもなぁ…お金ツバキに借りっぱなしなのはよくないかなぁ…」
どうすればいいか分からなくなり、頭をかきむしる。
爪が鋭いので普通に痛い。
「何回失敗してもいいのだ!その後成功した時にとても嬉しくなるのだ!アライさんもそれは同じなのだ!」
アライさんは親指を立ててそう言う。
最近の俺は何かと難しい事を考えがちで、自分の祖先とか、人間とか、フレンズとか。
難しい事を考える度にアライさんが指摘してくれる。
やっぱ俺もこの癖治さなけりゃな…
「…うん、難しい事、考えすぎないようにするよ。今度どこか行く? 」
「ふぇ!?えぇ~と…いきなり言われてもわからないのだ!」
「それもそっか。ん~、じゃあどこにしようかな…」
その時、俺のスマホが着信音を上げる。
この番号…俺が働いてた場所…
「はい…もしもし。」
『もしもし?メイさん?突然すみません。早速ですが…』
『…また働いてくれませんか?』
「え…何故ですか?」
『やっぱフレンズだから、って理由で解雇は良くないかな…と思いまして。もし良ければ、明日の正午に来てください。フレンズになってから少し生活が変わったかと思いますが、もし難しい事があったらちゃんとサポートは致します。』
「もちろんです…!明日ですね!ありがとうございます!」
電話で話してるのにお辞儀をしてしまう。
「変なメイ…なのだ?」
これでツバキにもう借りなくて済む…
ツバキ、今までごめんね?
「また働けるって…これでツバキにお金借りなくて済むよ!」
「本当か!?やったのだ!メイはやっぱりすごいのだ!!」
アライさんはそう言って俺に飛びつく。
それをしっかり受け止める俺。
「アルバイト、しっかり頑張るのだ!」
「うん!」
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