第30話 目撃者
謎の物体…あれは研究の結果、サンドスターと無機物が反応して出来たものらしい。
サンドスター、及びフレンズを吸収する、と…
やっぱり俺の仮説はあっていたんだ。
そしてあの物体はセルリアンと名付けられた…
今、あのセルリアンはほとんどいない。
よかった、安心だ…!
◆
『目撃者がいる…僕はもう長くないから話せない。』
目撃者…見当は付いている。
カエデの自殺現場を目撃した者…
普通はカエデの親友である俺には黙っているはずだ。
それを秘密として隠し通す。
でも俺にはわかる。
俺でなくてもわかる。
彼女は嘘をつくのが下手だから、人を傷つけたくないからわかる。
「とりあえず…探すか。アライさん、ちょっと行ってくるね。」
「いってらっしゃいなのだ!家事はアライさんに任せるのだ!」
ここ数週間でアライさんはすっかり家事もできるようになった。
彼女の器用さは俺を越えている、と言っても過言ではないだろう。
そして俺は玄関のドアを閉め、彼女を探しに行ったのであった。
◆
「サーバルちゃん!」
「うみゃ!?メ、メイちゃん…ど、どうしたの?」
相変わらず秘密を守るのが下手だ…
アニメのようなリアクション、というのはこういうことを言うんだな。
「何か…隠してること、無い?」
「な、なんのことかな~?」
サーバルちゃんはわかりやすく誤魔化し、目を逸らす。
やっぱり知ってるんだな?
「…カエデのこと、知ってるでしょ?」
「!」
「正直に…話してほしいの。」
俺がそう言うと、サーバルちゃんは暗い顔をしながら俺に話し始めた。
「あのね、カエデちゃんはね、苦しかったんだよ!ぼくがぼくのままでいられない…って、私にはわっかんなかったけど…でも、苦しそうに見えたの!」
「そうか…なんで苦しかったか、分かる?」
「家にいても、ぼくがぼくのままでいられないまましぬって、言ってたの…」
「そっか…」
サーバルちゃんはとても暗い顔をして、それも今にも泣き出しそうな顔で。
人の自殺現場を目撃するというのは、やっぱり精神的にきつい事で、それでも独りで抱え込んで…
「ダメだよ、サーバルちゃん。」
「え?」
「サーバルちゃんが暗い顔をすると、俺も悲しくなる、みんな悲しくなる。だから、いつも通りの笑顔で…いよう?それに、独りで抱え込んじゃダメだよ?悩み、打ち明けた方がいいか迷う時、自分の信用できる人に話すんだ。そしたらどう?気持ちは晴れるよ。サーバルちゃんもきっと笑顔になれる!」
「メイちゃん…」
サーバルちゃんは下を向いて数秒何かを考えていたようだった。
そして俺の目を見つめ、いつも通り笑った。
笑顔だ。
ドジだけど、憎めないサーバルちゃんの笑顔。
「ごめんね!今まで黙ってて…」
「大丈夫だよ、次からはちゃんと言ってよ?」
「わかったよ、メイちゃん!」
◆
「なぁ、メイ。そういやお前が会ってる子ってほとんど肉食じゃねぇか?」
「え?」
言われてみればそうだった。
ほとんど元肉食動物と俺は会っていたんだ。
いやぁ、気付かなかった…
「てことでよ、メイ。多分俺の推測だけど…」
ゴクリ、と唾を飲み込む。
ツバキは珍しく真面目な顔をして、俺を見つめる。
「あのフレンズ達は…」
「な、なんだよ…早く言ってくれ。」
──肉が好きに違いない。
「は?」
「聞こえなかったか?もう1度言うけど…」
──肉が好きに違いない。
「…随分と単純な推測だな。」
「てことでよ、メイ。今度焼肉パーティでも連れてってあげたらどうだ?俺が金だすよ。」
「えぇ、焼肉?俺はあんまり好きじゃないんだけど…」
「とか言って、尻尾めっちゃ振ってんじゃねぇか。体は正直だな。」
「え…」
やっぱ俺も肉食動物。
昔は好きじゃなかったのに、肉食フレンズになってから焼肉が好きになったのかな…?
「…わかった、今度連れてく。」
「んじゃ、はい金。」
「いやもう金用意してたの!?行かせる気満々だったやん…」
「当たり前でしょ。」
何気ないツバキの発言が
ニホンオオカミのメイを傷つけた。
…じゃなくて!
何気ないツバキの発言が
大波乱の焼肉パーティを生む事になるなんて、この時誰が予想しただろうか…
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