第30話 目撃者

謎の物体…あれは研究の結果、サンドスターと無機物が反応して出来たものらしい。

サンドスター、及びフレンズを吸収する、と…

やっぱり俺の仮説はあっていたんだ。

そしてあの物体はセルリアンと名付けられた…

今、あのセルリアンはほとんどいない。

よかった、安心だ…!





『目撃者がいる…僕はもう長くないから話せない。』


目撃者…見当は付いている。

カエデの自殺現場を目撃した者…

普通はカエデの親友である俺には黙っているはずだ。

それを秘密として隠し通す。

でも俺にはわかる。

俺でなくてもわかる。

彼女は嘘をつくのが下手だから、人を傷つけたくないからわかる。


「とりあえず…探すか。アライさん、ちょっと行ってくるね。」

「いってらっしゃいなのだ!家事はアライさんに任せるのだ!」


ここ数週間でアライさんはすっかり家事もできるようになった。

彼女の器用さは俺を越えている、と言っても過言ではないだろう。

そして俺は玄関のドアを閉め、彼女を探しに行ったのであった。





「サーバルちゃん!」

「うみゃ!?メ、メイちゃん…ど、どうしたの?」


相変わらず秘密を守るのが下手だ…

アニメのようなリアクション、というのはこういうことを言うんだな。


「何か…隠してること、無い?」

「な、なんのことかな~?」


サーバルちゃんはわかりやすく誤魔化し、目を逸らす。

やっぱり知ってるんだな?


「…カエデのこと、知ってるでしょ?」

「!」

「正直に…話してほしいの。」


俺がそう言うと、サーバルちゃんは暗い顔をしながら俺に話し始めた。


「あのね、カエデちゃんはね、苦しかったんだよ!ぼくがぼくのままでいられない…って、私にはわっかんなかったけど…でも、苦しそうに見えたの!」

「そうか…なんで苦しかったか、分かる?」

「家にいても、ぼくがぼくのままでいられないまましぬって、言ってたの…」

「そっか…」


サーバルちゃんはとても暗い顔をして、それも今にも泣き出しそうな顔で。

人の自殺現場を目撃するというのは、やっぱり精神的にきつい事で、それでも独りで抱え込んで…


「ダメだよ、サーバルちゃん。」

「え?」

「サーバルちゃんが暗い顔をすると、俺も悲しくなる、みんな悲しくなる。だから、いつも通りの笑顔で…いよう?それに、独りで抱え込んじゃダメだよ?悩み、打ち明けた方がいいか迷う時、自分の信用できる人に話すんだ。そしたらどう?気持ちは晴れるよ。サーバルちゃんもきっと笑顔になれる!」

「メイちゃん…」


サーバルちゃんは下を向いて数秒何かを考えていたようだった。

そして俺の目を見つめ、いつも通り笑った。

笑顔だ。

ドジだけど、憎めないサーバルちゃんの笑顔。


「ごめんね!今まで黙ってて…」

「大丈夫だよ、次からはちゃんと言ってよ?」

「わかったよ、メイちゃん!」





「なぁ、メイ。そういやお前が会ってる子ってほとんど肉食じゃねぇか?」

「え?」


言われてみればそうだった。

ほとんど元肉食動物と俺は会っていたんだ。

いやぁ、気付かなかった…


「てことでよ、メイ。多分俺の推測だけど…」


ゴクリ、と唾を飲み込む。

ツバキは珍しく真面目な顔をして、俺を見つめる。


「あのフレンズ達は…」

「な、なんだよ…早く言ってくれ。」



──肉が好きに違いない。


「は?」

「聞こえなかったか?もう1度言うけど…」



──肉が好きに違いない。


「…随分と単純な推測だな。」

「てことでよ、メイ。今度焼肉パーティでも連れてってあげたらどうだ?俺が金だすよ。」

「えぇ、焼肉?俺はあんまり好きじゃないんだけど…」

「とか言って、尻尾めっちゃ振ってんじゃねぇか。体は正直だな。」

「え…」


やっぱ俺も肉食動物。

昔は好きじゃなかったのに、肉食フレンズになってから焼肉が好きになったのかな…?


「…わかった、今度連れてく。」

「んじゃ、はい金。」

「いやもう金用意してたの!?行かせる気満々だったやん…」

「当たり前でしょ。」


何気ないツバキの発言が

ニホンオオカミのメイを傷つけた。

…じゃなくて!

何気ないツバキの発言が

大波乱の焼肉パーティを生む事になるなんて、この時誰が予想しただろうか…




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