第28話 手合わせ

「ふぁ~…眠い…あれ、アライさんは?ミライさんもいないし…」


そういえば今日手合わせだったな…


「ヒグマどんぐらい強いかなぁ?」

怪我しないようにしないと…無理だろうけど。





「あれ、ミライさん何してるんですか?」

「ご飯作ってます。昨日はお世話になってばっかりだったので…」

「アライさんも手伝ってるのだ!」

「アライさん…怪我しないようにね?」

「言われなくても怪我しないのだ!アライさんは器用なのだ! 」


そう言われてアライさんの手元を見てみると、あ、意外と器用…

結構やるじゃないか…


「出来ましたよ、主菜は目玉焼き、ウインナーで副菜はドレッシング入サラダ、汁物は味噌汁です。主食のご飯とともにどうぞ。」

「かなり本格的ですね!?」

「はい、アライさんも手伝ってくれたので上手く行きました!」

「アライさんがいれば無敵の婦人なのだ!」


婦人て…


「栄養が偏ってなくていいですね。俺、いつも偏ってるから…」

「健康には気をつけた方がいいですよ!」

「はい…」





「今日はどこかに行くんですか?」

「はい…山に用がありまして。」

「芝刈りですか?」

「違いますよ!なんで俺桃太郎のおじいさん役になってるんですか!」

「冗談ですよ、冗談。」


この人冗談上手いな…


「あるフレンズと手合わせをする約束で…」

「…それって、つまり戦うってことじゃ…」

「メイ!戦うのは良くないのだ!無茶はしちゃだめなのだ!」

「い、いやあくまで手合わせですよ?戦いと言ってもそこまで激しくはないかな…」

「じゃあアライさんもついて行くのだ!メイがまた無茶したら心配なのだ…」

「アライさん…」

「じゃあ私もついて行きますね。」


いやあなたは元々ついて行く気満々でしょうが。


「じゃあ早速山に行きましょう。2時に待ち合わせです。途中でレストランに行ったりして昼食取りましょう。」

「メイさんが起きたの12時ですよ?もう昼食食べたじゃないですか。」

「結構俺起きるの遅かったんですね、すいません。でも、早いに越したことはないし、行きましょう。」





「来たか、メイ。」

「いやなんでもういるんですか…」

「早いに越したことはないからな。」

「俺と同じこと言ってるよ…」


後ろを振り返ると、うわぁ、やっぱりアライさん怯えてるよ…


「そんなに怯えなくてもいいんだぞ?」

「は、はじめまして、なのだ!あ、アライさんはアライグマ、なのだ!」

「アライさん、結構緊張してるね?」

「初めまして、ミライです。あなたはなんのフレンズさんですか?」

「ヒグマだ。よろしく頼む。」

「さて、早速手合わせ、だな。」

「ま、そんなに大きな事ではない。とりあえずそこに座りな。」


ヒグマの指差す先は…休憩スペース?

椅子と机が用意されてる…


「えっと、手合わせするんだよね?」

「そうだが…?」

「ま、いいや、座っちゃう。」





「では…始めるぞ。」

「えぇ…なんだこれ。」


休憩スペースに座るとすぐにヒグマは背中から何かを取り出した。

これは…将棋盤?

おい、手合わせってまさか


「これは…将棋ですか?」

「将棋?ってなんなのだ?」

「まだ難しいですよ。」

「将棋の手合わせだったのか…てっきり殴り合いかと。」

「そんなことをするはずが無いだろう。私たちはフレンズであり、戦う理由が見当たらないが。」


ま、それもそうか…


「せっかくの将棋だ、圧勝してみるぜ…!」

「ほう、中々自信ありげだな。」


こう見えて俺は小さい頃からボードゲームが強かった…

俺、この手合わせに勝ったら、アライさんと海に行くんだ…夏に。


「では…私から始めるぞ。」

「あぁ…こい!」

「メイ、頑張るのだ!」

「退屈になりそうですね…」





「メイ、もうやめたらどうなのだ?勝ち目がないのだ!」

「い、いや、次こそ勝てる!絶対に!」

「圧倒的に弱いな、お前…」

「これで100敗目ですよ…弱すぎます。」

「あの時感じた戦闘センスは気のせいだったのか…」

「どの時に将棋の戦闘センス感じたんだよ!?」


気付けばもう夕方。

俺そんなに弱かったか…

いや、ヒグマが強いのか?


「ごめん、時間食ったね。」

「いや、こちらこそ時間を食ってすまない。」

「さ、メイ!早く帰るのだ!」

「もうちょっと将棋の練習しましょう?」

「よ、余計なお世話です!」


彼らの姿を見ていると、なんだか寂しくなる。

私にも友、というものが欲しいものだ。

いつ出会えるのか…私にはわからない。


「きっといつか、私にも友が…」


…叶わぬ夢かもしれない。

でも、願えば願うほどきっと願いは叶うと思うし、諦めれば諦めるほど願いは叶わない。


「さて…帰るか。」

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