第28話 手合わせ
「ふぁ~…眠い…あれ、アライさんは?ミライさんもいないし…」
そういえば今日手合わせだったな…
「ヒグマどんぐらい強いかなぁ?」
怪我しないようにしないと…無理だろうけど。
◆
「あれ、ミライさん何してるんですか?」
「ご飯作ってます。昨日はお世話になってばっかりだったので…」
「アライさんも手伝ってるのだ!」
「アライさん…怪我しないようにね?」
「言われなくても怪我しないのだ!アライさんは器用なのだ! 」
そう言われてアライさんの手元を見てみると、あ、意外と器用…
結構やるじゃないか…
「出来ましたよ、主菜は目玉焼き、ウインナーで副菜はドレッシング入サラダ、汁物は味噌汁です。主食のご飯とともにどうぞ。」
「かなり本格的ですね!?」
「はい、アライさんも手伝ってくれたので上手く行きました!」
「アライさんがいれば無敵の婦人なのだ!」
婦人て…
「栄養が偏ってなくていいですね。俺、いつも偏ってるから…」
「健康には気をつけた方がいいですよ!」
「はい…」
◆
「今日はどこかに行くんですか?」
「はい…山に用がありまして。」
「芝刈りですか?」
「違いますよ!なんで俺桃太郎のおじいさん役になってるんですか!」
「冗談ですよ、冗談。」
この人冗談上手いな…
「あるフレンズと手合わせをする約束で…」
「…それって、つまり戦うってことじゃ…」
「メイ!戦うのは良くないのだ!無茶はしちゃだめなのだ!」
「い、いやあくまで手合わせですよ?戦いと言ってもそこまで激しくはないかな…」
「じゃあアライさんもついて行くのだ!メイがまた無茶したら心配なのだ…」
「アライさん…」
「じゃあ私もついて行きますね。」
いやあなたは元々ついて行く気満々でしょうが。
「じゃあ早速山に行きましょう。2時に待ち合わせです。途中でレストランに行ったりして昼食取りましょう。」
「メイさんが起きたの12時ですよ?もう昼食食べたじゃないですか。」
「結構俺起きるの遅かったんですね、すいません。でも、早いに越したことはないし、行きましょう。」
◆
「来たか、メイ。」
「いやなんでもういるんですか…」
「早いに越したことはないからな。」
「俺と同じこと言ってるよ…」
後ろを振り返ると、うわぁ、やっぱりアライさん怯えてるよ…
「そんなに怯えなくてもいいんだぞ?」
「は、はじめまして、なのだ!あ、アライさんはアライグマ、なのだ!」
「アライさん、結構緊張してるね?」
「初めまして、ミライです。あなたはなんのフレンズさんですか?」
「ヒグマだ。よろしく頼む。」
「さて、早速手合わせ、だな。」
「ま、そんなに大きな事ではない。とりあえずそこに座りな。」
ヒグマの指差す先は…休憩スペース?
椅子と机が用意されてる…
「えっと、手合わせするんだよね?」
「そうだが…?」
「ま、いいや、座っちゃう。」
◆
「では…始めるぞ。」
「えぇ…なんだこれ。」
休憩スペースに座るとすぐにヒグマは背中から何かを取り出した。
これは…将棋盤?
おい、手合わせってまさか
「これは…将棋ですか?」
「将棋?ってなんなのだ?」
「まだ難しいですよ。」
「将棋の手合わせだったのか…てっきり殴り合いかと。」
「そんなことをするはずが無いだろう。私たちはフレンズであり、戦う理由が見当たらないが。」
ま、それもそうか…
「せっかくの将棋だ、圧勝してみるぜ…!」
「ほう、中々自信ありげだな。」
こう見えて俺は小さい頃からボードゲームが強かった…
俺、この手合わせに勝ったら、アライさんと海に行くんだ…夏に。
「では…私から始めるぞ。」
「あぁ…こい!」
「メイ、頑張るのだ!」
「退屈になりそうですね…」
◆
「メイ、もうやめたらどうなのだ?勝ち目がないのだ!」
「い、いや、次こそ勝てる!絶対に!」
「圧倒的に弱いな、お前…」
「これで100敗目ですよ…弱すぎます。」
「あの時感じた戦闘センスは気のせいだったのか…」
「どの時に将棋の戦闘センス感じたんだよ!?」
気付けばもう夕方。
俺そんなに弱かったか…
いや、ヒグマが強いのか?
「ごめん、時間食ったね。」
「いや、こちらこそ時間を食ってすまない。」
「さ、メイ!早く帰るのだ!」
「もうちょっと将棋の練習しましょう?」
「よ、余計なお世話です!」
彼らの姿を見ていると、なんだか寂しくなる。
私にも友、というものが欲しいものだ。
いつ出会えるのか…私にはわからない。
「きっといつか、私にも友が…」
…叶わぬ夢かもしれない。
でも、願えば願うほどきっと願いは叶うと思うし、諦めれば諦めるほど願いは叶わない。
「さて…帰るか。」
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