第22話 お似合い
「よう、メイ。また会ったな。」
「あ、先輩!」
卒業してからツバキ先輩とよく会う。
彼とは本当に話しやすいし、頼りになる。
「メイ、頼み事が2つあるんだが…良いか?」
「良いですよ~、先輩。」
「まずその先輩という呼び名と敬語はやめてもらっていいかな…もうバイトやってないじゃん?」
「あ、そっか…わかった、ツバキ。」
「そうそう、それでいいよ。あと一つなんだけど…メイの家行っていいか?」
「え!?なんで急に…」
「暇だし…今日やることないし、バイトないし。」
「し、仕方ないな…」
ツバキとは本当に話しやすい。
まるで第2の親友だ。
最も、俺の一番の親友はカエデ。
あいつ…今何してんのかな?
◆
「ただいま~!」
「うぃぃぃぃぃっす!」
「おかえり~…なのだ?」
「あ、こっちはツバキ。元先輩。」
「あっさりした紹介だな…んで?彼女出来たんだね。」
「い、いや!?彼女じゃないよ!?」
「ねぇねぇ、メイの事、好き?」
「かのじょ…?とかよく分からないけど、もちろん好きなのだ!」
「アライさ~ん…///」
「照れちゃってもう…」
「本当、お前らお似合いのカップルって感じするわ…」
◆
「いい彼女ができたな、メイ。暗い顔をしてバイトしてた頃が嘘みたいだ。」
「彼女じゃないってば…でも、いい出会いだった。」
「友達は出来たのか?」
「もちろん…前とは違ってね。」
そう言いながら、俺はコンビニで買ってきた肉まんを差し出す。
「肉まん、食う?」
「あ、ありがとう。」
「そういやお前の親友…カエデはどうしたんだ?」
「あぁ…あいつ、遠くから学校に通ってたみたいでな、俺も今まで知らなかった。卒業してから、俺もあいつ見なくなったよ。またいつか来てくれないかな…」
カエデ…あいつは今どこで何をしているんだろう。
また会いたいな…
「そうか…って、お前大学は?」
「行くのやめた。」
「えぇ!?お前大学行かないのか…」
「将来の夢のためにな…」
「そうか…お前の夢は?」
「俺の夢はな、」
「ストップ。」
「え?」
不意に話を止められて少し驚く。
「…お前の夢はまだ聞かないことにしよう。なんとなく。」
「あ、あぁ…」
「それにしてもお前尻尾めっちゃ振ってんじゃねえかぁ?そんなに俺との話が楽しかったか?」
「え!?嘘!?そんなに振れてた?」
まさか俺が尻尾振ってたなんて気付かなかった。
本能的に楽しい、と感じたから振ってたのかな。
「それにしても…お前の尻尾、めっちゃモフモフだな~。」
「ひゃっ…!?ちょっ、そこはやめてよぉ…」
「はは、可愛い奴め。」
弱みを握られた気がする…
◆
ツバキが帰った後、俺は夕食を作ることにした。
さて、今日の夕食は何にしようか?
そこへアライさんがやってくる。
「メイ、お話楽しかったのだ?」
「まぁ楽しかったけど…」
「アライさんとのお話、楽しくないのだ?」
「え…そんなことないよ!」
「嘘なのだ…メイは最近、アライさんと話してくれないのだ…」
「…」
最初と比べて、確かに会話は減った気がする。
「メイはアライさんの事が嫌いになったのだ?アライさん、何か怒らせることしたのか?」
「そ、そんなこと!」
その時、俺はあの言葉を思い出した。
──その姿ならきっと、フレンズを守っていけるよ!
守るだけじゃダメなんだ…
共に笑い、共に泣き、たまには喧嘩する。
そんな関係でないといけない。
でも…俺自身彼女を泣かせたいわけでもないし、喧嘩したいわけでもない。
ならやる事は決まってるんだ…
「…!?」
アライさんの口を俺の口で塞ぐ。
少し長いキスを終え、俺はアライさんに言う。
「メイ、突然どうしたのだ…?」
「これはキスって言ってね…好きな人に、大切な時にするものなんだ…俺はアライさんが好きだし、ずっと一緒にいたい。嫌いになんてなったりしない。もっとお話したいし、一緒に色んなところに行きたい…!」
「メイ…それはアライさんも同じなのだ。ごめんなさい…なのだ。メイの事、少し疑っちゃったのだ…」
「俺も悪い…あまりアライさんとお話、出来てなかったね…」
そう言って俺はアライさんを抱き締める。
アライさんもお返しに俺の体を抱き締める。
あの時、俺がこんな生活、そしてこんな出会いを経験するなんて俺ですら予想出来なかった。
アライさんのお陰で…俺は変われたから。
「アライさん…いつもありがとう。」
「どういたしまして…なのだ!」
彼女はそう言って、とびっきりの笑顔を俺に見せた。
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