第22話 お似合い

「よう、メイ。また会ったな。」

「あ、先輩!」

卒業してからツバキ先輩とよく会う。

彼とは本当に話しやすいし、頼りになる。

「メイ、頼み事が2つあるんだが…良いか?」

「良いですよ~、先輩。」

「まずその先輩という呼び名と敬語はやめてもらっていいかな…もうバイトやってないじゃん?」

「あ、そっか…わかった、ツバキ。」

「そうそう、それでいいよ。あと一つなんだけど…メイの家行っていいか?」

「え!?なんで急に…」

「暇だし…今日やることないし、バイトないし。」

「し、仕方ないな…」

ツバキとは本当に話しやすい。

まるで第2の親友だ。

最も、俺の一番の親友はカエデ。

あいつ…今何してんのかな?





「ただいま~!」

「うぃぃぃぃぃっす!」

「おかえり~…なのだ?」

「あ、こっちはツバキ。元先輩。」

「あっさりした紹介だな…んで?彼女出来たんだね。」

「い、いや!?彼女じゃないよ!?」

「ねぇねぇ、メイの事、好き?」

「かのじょ…?とかよく分からないけど、もちろん好きなのだ!」

「アライさ~ん…///」

「照れちゃってもう…」

「本当、お前らお似合いのカップルって感じするわ…」





「いい彼女ができたな、メイ。暗い顔をしてバイトしてた頃が嘘みたいだ。」

「彼女じゃないってば…でも、いい出会いだった。」

「友達は出来たのか?」

「もちろん…前とは違ってね。」

そう言いながら、俺はコンビニで買ってきた肉まんを差し出す。

「肉まん、食う?」

「あ、ありがとう。」

「そういやお前の親友…カエデはどうしたんだ?」

「あぁ…あいつ、遠くから学校に通ってたみたいでな、俺も今まで知らなかった。卒業してから、俺もあいつ見なくなったよ。またいつか来てくれないかな…」

カエデ…あいつは今どこで何をしているんだろう。

また会いたいな…

「そうか…って、お前大学は?」

「行くのやめた。」

「えぇ!?お前大学行かないのか…」

「将来の夢のためにな…」

「そうか…お前の夢は?」

「俺の夢はな、」

「ストップ。」

「え?」

不意に話を止められて少し驚く。

「…お前の夢はまだ聞かないことにしよう。なんとなく。」

「あ、あぁ…」

「それにしてもお前尻尾めっちゃ振ってんじゃねえかぁ?そんなに俺との話が楽しかったか?」

「え!?嘘!?そんなに振れてた?」

まさか俺が尻尾振ってたなんて気付かなかった。

本能的に楽しい、と感じたから振ってたのかな。

「それにしても…お前の尻尾、めっちゃモフモフだな~。」

「ひゃっ…!?ちょっ、そこはやめてよぉ…」

「はは、可愛い奴め。」

弱みを握られた気がする…





ツバキが帰った後、俺は夕食を作ることにした。

さて、今日の夕食は何にしようか?

そこへアライさんがやってくる。

「メイ、お話楽しかったのだ?」

「まぁ楽しかったけど…」

「アライさんとのお話、楽しくないのだ?」

「え…そんなことないよ!」

「嘘なのだ…メイは最近、アライさんと話してくれないのだ…」

「…」

最初と比べて、確かに会話は減った気がする。

「メイはアライさんの事が嫌いになったのだ?アライさん、何か怒らせることしたのか?」

「そ、そんなこと!」

その時、俺はあの言葉を思い出した。



──その姿ならきっと、フレンズを守っていけるよ!



守るだけじゃダメなんだ…

共に笑い、共に泣き、たまには喧嘩する。

そんな関係でないといけない。

でも…俺自身彼女を泣かせたいわけでもないし、喧嘩したいわけでもない。

ならやる事は決まってるんだ…

「…!?」

アライさんの口を俺の口で塞ぐ。

少し長いキスを終え、俺はアライさんに言う。

「メイ、突然どうしたのだ…?」

「これはキスって言ってね…好きな人に、大切な時にするものなんだ…俺はアライさんが好きだし、ずっと一緒にいたい。嫌いになんてなったりしない。もっとお話したいし、一緒に色んなところに行きたい…!」

「メイ…それはアライさんも同じなのだ。ごめんなさい…なのだ。メイの事、少し疑っちゃったのだ…」

「俺も悪い…あまりアライさんとお話、出来てなかったね…」

そう言って俺はアライさんを抱き締める。

アライさんもお返しに俺の体を抱き締める。

あの時、俺がこんな生活、そしてこんな出会いを経験するなんて俺ですら予想出来なかった。

アライさんのお陰で…俺は変われたから。

「アライさん…いつもありがとう。」

「どういたしまして…なのだ!」

彼女はそう言って、とびっきりの笑顔を俺に見せた。

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