第21話 変化

「しっかし俺がフレンズになるなんてな…」

そう言いながら鏡を見る。

改めて見ると、やはり人間だった頃の俺とは違う所が出てくる。

獣耳、尻尾はもちろん、お得意の爪だって更に鋭くなっている。手からは毛皮?のようなものが生えてきてるし…

目の色結構茶色っぽくなってるし…

髪型は変わらないものの、髪は茶色になっている。とはいえ若干ゃ髪はボサボサ。

服もいつの間にか制服から茶色いコートに変わっていた。

更に長ズボン…

声はあまり変わっていないが、少しソフトになった?

顔、男の象徴ともに変わらない所を見ると、フレンズだがアニマルガールではない、と言った所だろうか。

「にしてもなぁ、俺がニホンオオカミのフレンズだったとは…」

これはちょっと知り合いに説明するのも大変やな…

しかし何故俺がフレンズになったのか?

サンドスターが動物に当たればフレンズになるとは聞いたが、俺は当たってから2、3ヶ月は経ってるはずだが?

「細かい事気にしない方がいいのかな…」





「め、メイ、な、なんなのですかそれは!?」

「あぁ、なんか昨日フレンズになっちゃって。」

「人がフレンズになる事なんて聞いたことがないのです。」

「俺だって聞いたことがないよ…しかも絶滅種?のニホンオオカミのフレンズだから尚更フレンズになった理由もわからないし…」

「まぁいいのです。姿形変わろうともメイはメイなのです。」

「それよりも今度また料理を作って欲しいのです。」

「レストランにもつれていくのですよ。」

「2人は相変わらずだね…」

知り合い全員に説明に回るのがこんなに大変だなんて…!





「あ、サーバルちゃん!」

「みゃ?え~と、誰?」

「あぁ、ごめん。昨日フレンズになったんだ、俺だよ、メイだよ。ニホンオオカミのフレンズ。」

「メイちゃん!?」

「今知り合い全員に説明しに行ってるんだ。大変だよ…」

「そ、そっか…」

「サーバルちゃん、暗い顔をしてどうしたの?」

「な、なんでもないよ!じゃあまたね、メイちゃん!」

「あ、バイバイ…」

サーバルちゃん、何を隠してるんだろう…





「ヒグマー!」

ヒグマっていつも何処にいるんだろう…

「結局あの人が一番見つけるのが大変だな…」

「あの人って誰の事だ?」

「って!ヒグマ!」

「あぁ?…よくよくみたらメイじゃないか、どうしたんだ?その姿は。」

「昨日フレンズになって…ニホンオオカミ。」

「そうか…世の中不思議なこともあるものだな。」

「じゃあ俺他の知り合いにも言わないといけないから!」

「あ、ちょっと待て!メイ!」

「ん?どうしたの?」

「今度手合わせを願いたいのだが…良いか?」

「手合わせかぁ…そんなに強くないけど…俺でいいなら。」

「分かった。じゃあな、メイ。」

次はバイト先かぁ…





コンコン

「し、失礼します…」

「誰だね…と、その見覚えのある顔はメイか。どうした?コスプレでもしたか?」

「い、いえ、昨日何故かこの姿になってしまって…」

「本当か?この耳とか尻尾取れないのか?」

「いててててて!取れないですって!」

「ふむ…私の店ではあまりフレンズなどが好きではない客が多くてな、すまんが辞めてもらう。」

「そう…ですか。」

「すまんな、メイ。生活苦しいのに…」

「いえ…良いんです。また新しく見つけることが出来れば…」





「はぁ…どうしよ。」

「あ…椿(ツバキ)先輩!?」

「お、その見覚えのある顔、まさしくメイじゃないか!」

「店長と同じ事言われた…」

ツバキ先輩

俺と同じバイト先で働いている人。

俺よりもずっと前から働いてるらしい。

「それにしてもどうしたんだ?その姿は。」

「実は昨日この姿になっちゃって…」

「そっか。」

「そっかって…軽いなぁ、先輩。俺この姿になったおかげでバイトクビですよ…」

「うーん…じゃあ、俺が食費とかその他もろもろ金あげるよ。」

「え!?先輩、本当にいいんですか?」

「あぁ、構わないよ。最近株で大当たりしてね…♪まだまだ絶好調って感じなんだよね!」

それ大丈夫かよ…

「とりあえず、今月の分は賄えそうなので、来月から借ります。」

「あ、借りた金は返さなくてもいいよ。」

「太っ腹の先輩…マジ感謝!!」

「ほんじゃまたねー。」

「さようならー。」





最後は俺の住んでいるアパートの大家さん…

家賃を無料にしてくれるいい人。

生活苦しい中でこれは助かる…!

おかげで結構余裕できたし。

コンコン

「大家さーん。」

「あらま、その声はメイじゃないかい?」

「元気にやってたかぃ?」

「はい、お陰様で。」

「ところで…それ、どうしたんだぃ?」

「あ、昨日からこの姿になりまして…知り合いを回ってるんです。」

「そうかぃ、まぁ、頑張るんじゃよ。こんな老いぼれには家賃無料しかやれる事はないからねぇ。」

「すいません…本当に、いつもありがとうございます!」

「気にしなくていいんだよぉ。」





よく考えてみたら、俺は色んな人に支えられていた。

でも、あまりそんな生活には満足出来なかった。

なんでだろう?

人間というのは不思議で、例え不自由のない生活を送れたとしても、なぜか不満に思う人だっているらしい。

でも今は違う。

俺は新しい俺を手に入れ、そして俺にはアライさんがいる。

今日も、明日も一緒にいるんだ。

そして俺はいつも通りドアを開け、こういう。

「ただいま~!」

「おかえりなのだ、メイ!」

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