第19話 なのだ禁止
卒業まであと少し。
カエデともこれまで上手くやってきた。
だから…最後まで上手くやりたいところだ。
もう会えなくなるかもしれないが…
「いってらっしゃい、なのだ!」
アライさんはよくなのだ、なのだと口調に付けるなぁ…
そうだ、帰ってきたらちょっと仕掛けてみるか。
「いってくるよ。」
◆
「カエデ…卒業まであと少しだな。」
「あぁ…多分二度と会えないと思うぞ。」
「どうしてさ?」
「言ってなかったか?僕は遠くからはるばるこの高校に通ってるんだ。でも、そんな生活もあと少しでおさらばだ…」
「ならさ、俺の家に来るってのはどう?」
「いや、いいよ…僕も決まった時間に帰らないといけないし、何よりさ、君達、仲良くやってるんだろ?」
「気遣いありがと。」
カエデとは小学校からの仲だった。
いつも傍にいて、俺の話し相手にもなってくれるし…
「そういやさ、大学どこ行くの?まだ聞いてないけど。」
「えっ」
「ん?どうした?」
「い、いや、大学ね、大学はな、〇〇大学に行くんだ。」
「お前…俺になにか隠してねぇよな?」
「おいおい、信じてくれよ…昔からの仲だろ?」
「はは、違いねぇ。」
◆
「アライさん、ちょっとこっち来て。」
「どうしたのだ~?」
「アライさんって、結構なのだ、なのだって付けるよね。」
「ぐぬぬ~、アライさんはそんなに付けないのだ!」
「本当~?」
「本当なのだ!」
「よし、今日寝るまでなのだを禁止してみる?」
「お、お易い御用な…だ!」
言いそうになってるけど大丈夫か?
◆
「アライさ~ん、遊びに来たよ~。」
「フェネック!会いに来て嬉しい…よ!」
「今日は何して遊ぶの~?」
「公園に行きたいの…行きたい!」
「アライさ~ん、今日、なんか変だよ~?」
「そ、そんなことない…よ。」
まずいのだ!
なのだ禁止ってすごい難しいのだ!
思わず言っちゃいそうなのだ…
「アライさ~ん、私はフクロウカフェに行きたいな、ダメかな?」
「わかった!早速行くよ!」
◆
「よく来たのです。」
「今日は何の用なのですか?」
「いや~?ただ遊びに来ただけだよ~。」
「いらっしゃいませ、何かお飲みになりますか?」
「私はミルクティーでいいかな~。」
「アライさんはオレンジジュースが飲みたいの…飲みたい!」
「アライグマ、お前何か変なのです。」
「いつもなら"なのだ"を付けるはずなのです。」
「あ、そういえばそうだね~。」
「きょ、今日1日は"なのだ"を使わないようにするんだ…」
「あ、今使った。」
「そ、それは数えない~!」
「アホなのです。」
◆
「ただいま…」
「あ、おかえりアライさん。」
何やら落ち込んでるけど、何かあったのかな?
外で何かあったのか?
「アライさん、何かあったの?」
「"なのだ"が使えないのは辛い~!」
「あぁ、そういう事か。ごめんね、そんなに辛かったんだ。いいよ、もう使って。」
「やったのだ!やっと使えるのだ!これで我慢しなくて済むのだ♪」
「やっぱりアライさんは"なのだ"が無きゃね。」
◆
明日は卒業式だ。
カエデとの別れの日。
出会いと別れを繰り返し、人は成長する。
だけど、やっぱり別れは寂しくて、悲しい。
それでも俺は笑顔で…カエデに心配かけないように、泣かないように。
別れても、俺達の絆は永遠に繋がってるから。
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