第18話 甘えん坊

突然、夜空の下にいた。

何故だか俺は座っていて。

腕の中にはアライさんがいて。

でも…何故だか悲しくて。

「アライさん…行かないで…」

俺は何故だかないていて。

口から言葉が勝手に出てくる。

「アライさんはいつもメイのそばに居るのだ…」

「アライさんがいたから…俺は…われ…ん……」

段々声が不鮮明になっていく。

「大丈…な…だ………イ…んが……く…っ……、…イは大……のだ…」

やめてくれ…

これ以上は…やめて…

なんだか悲しくなって…





「行かないで!アライさん!!」

…夢?

嫌な夢だ。

そうだ、あれは夢。

夢であって夢なのだ。

なのに何故こんなにも悲しくなるのだろう。

「メイ…?」

「アライさん…」

俺はアライさんの元に行き、そして抱き締める。

「メイ?どうしたのだ?何かあったのか?」

「アライさん、俺の傍から離れないでくれ…いなくならないでくれ…行かないで…ずっと、一緒にいたいから…お願いだから…!!」

そう言っている間に、思わず泣き出してしまった。

「アライさんがいたから…俺は孤独じゃなくなった…!だからいなくならないで…俺はアライさんの事が好きだ…だから、絶対に…!!俺は守るから…アライさんの事…!」

「大丈夫なのだ。」

「アライさんは絶対にいなくならないし、絶対に傍から離れないのだ。そしてずっと一緒にいるのだ。お願いされなくたって、もとからそのつもりなのだ。」

「アライさん…」

「全く…メイは甘えん坊なのだ…泣かなくていいのだ…アライさんが傍にいるから。」

「ありがとう。アライさん。最近ずっと泣いてばかりで、心配させてごめん。」

「別にいいのだ!メイは泣きたい時は泣いていいし、嬉しい時は笑ってもいいのだ!アライさんが保証するのだ!」

「はは…」

思えば俺の人生、あまり甘えた事は無かった。

母が他界してからも俺は甘えることなく生きてきた。

甘えられる存在。それは俺の生活に必要だったのかもしれない。





卒業式ももうそろそろ。あと3日…

3年間通ってたこの高校にも別れを告げなければならない。

「この高校ももうそろそろか…」

「なんだ?別れが惜しいのか?」

「惜しいといえば惜しいかもしれない…」

「この高校にまだ甘えていたいんだろ?甘えん坊め!」

「甘えん坊…」

先程アライさんに言われた言葉だった。

俺はやっぱり1人で生きてきた分、誰かに甘えたくて、でも甘えられなかったんだろうな。

帰るべき場所。

それが今まで見つからなかった。

安心出来る場所。

心からそう思える場所なんて無かった。

でも、アライさんと出会った事が俺の運命を変えたんだ。

「なぁ…俺達はこれから、どんな"ミライ"を迎えるんだろうな?」

「さぁな…だけどよ、きっと良い世の中になるぜ!なぁ!親友!」

「そっか。」

思うに"ミライ"とは、自分自身で作り出すものであり、希望そのものである。

ひとりひとりが"ミライ"へ向かって、自分の目標を達成させるために歩き出すのだ…





珍しく夕方に特集をやってた。

そういえば、特集を見るのも、習慣になったよな…

『専門家がサンドスター火山を分析してくれました。』

『80%はサンドスターでしたが、残りの20%は黒い瘴気を纏った未知のサンドスターだったということです。』

『このサンドスターを専門家は「サンドスター・ロウ」と名付けました。危険な見た目をしているので、噴火した際には気を付けるよう専門家は呼びかけています。』

サンドスター・ロウ…か。

注意しておかなければ。

『キョウシュウ地方の大分エリアに新しく宿泊施設、「フレンズロッジ」ができました。ここではたくさんの観光客が…』





もう夜か、今日も疲れた…

「メイ!こっちに来てみるのだ!流れ星なのだー!」

「え?流れ星?」

窓を開け、ベランダに出ると綺麗な流れ星が…

これは…

「アライさんと出会った時も、こんな流れ星だったな…」

サンドスターが降ってきたのだ。

まだまだ謎が多いサンドスター。

それは俺に出会いをもたらしてくれた。

そしてこの流星群でまた、フレンズが新しく誕生していくんだな。

「アライさん、流れ星が消えるまでに願い事を言えたら、願い事が叶うんだって、ほら、願い事、言ってみて?」

「え!?す、すぐには思いつかないのだ!えーと、え~と…!!」

「め、メイとずっと一緒にいられますように!!」

アライさん…

ギュッ

「メイ?」

「アライさん…俺も、いつまでもずっと、一緒にいたい…」

「も、もちろんなのだ…//」

流星…サンドスターは今夜、奇跡の誕生をもたらし、そして奇跡の出会いをももたらす事になるだろう。

もっと色んなフレンズと出会いたい、話したい。

そうして俺達の絆はずっと、深まっていくんだ。

「メイ…大好きなのだ…ボソッ」

「ん?アライさん、何か言った?」

「な、なんでもないのだ!//」

最近のアライさんはよく照れるな…


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る