第18話 甘えん坊
突然、夜空の下にいた。
何故だか俺は座っていて。
腕の中にはアライさんがいて。
でも…何故だか悲しくて。
「アライさん…行かないで…」
俺は何故だかないていて。
口から言葉が勝手に出てくる。
「アライさんはいつもメイのそばに居るのだ…」
「アライさんがいたから…俺は…われ…ん……」
段々声が不鮮明になっていく。
「大丈…な…だ………イ…んが……く…っ……、…イは大……のだ…」
やめてくれ…
これ以上は…やめて…
なんだか悲しくなって…
◆
「行かないで!アライさん!!」
…夢?
嫌な夢だ。
そうだ、あれは夢。
夢であって夢なのだ。
なのに何故こんなにも悲しくなるのだろう。
「メイ…?」
「アライさん…」
俺はアライさんの元に行き、そして抱き締める。
「メイ?どうしたのだ?何かあったのか?」
「アライさん、俺の傍から離れないでくれ…いなくならないでくれ…行かないで…ずっと、一緒にいたいから…お願いだから…!!」
そう言っている間に、思わず泣き出してしまった。
「アライさんがいたから…俺は孤独じゃなくなった…!だからいなくならないで…俺はアライさんの事が好きだ…だから、絶対に…!!俺は守るから…アライさんの事…!」
「大丈夫なのだ。」
「アライさんは絶対にいなくならないし、絶対に傍から離れないのだ。そしてずっと一緒にいるのだ。お願いされなくたって、もとからそのつもりなのだ。」
「アライさん…」
「全く…メイは甘えん坊なのだ…泣かなくていいのだ…アライさんが傍にいるから。」
「ありがとう。アライさん。最近ずっと泣いてばかりで、心配させてごめん。」
「別にいいのだ!メイは泣きたい時は泣いていいし、嬉しい時は笑ってもいいのだ!アライさんが保証するのだ!」
「はは…」
思えば俺の人生、あまり甘えた事は無かった。
母が他界してからも俺は甘えることなく生きてきた。
甘えられる存在。それは俺の生活に必要だったのかもしれない。
◆
卒業式ももうそろそろ。あと3日…
3年間通ってたこの高校にも別れを告げなければならない。
「この高校ももうそろそろか…」
「なんだ?別れが惜しいのか?」
「惜しいといえば惜しいかもしれない…」
「この高校にまだ甘えていたいんだろ?甘えん坊め!」
「甘えん坊…」
先程アライさんに言われた言葉だった。
俺はやっぱり1人で生きてきた分、誰かに甘えたくて、でも甘えられなかったんだろうな。
帰るべき場所。
それが今まで見つからなかった。
安心出来る場所。
心からそう思える場所なんて無かった。
でも、アライさんと出会った事が俺の運命を変えたんだ。
「なぁ…俺達はこれから、どんな"ミライ"を迎えるんだろうな?」
「さぁな…だけどよ、きっと良い世の中になるぜ!なぁ!親友!」
「そっか。」
思うに"ミライ"とは、自分自身で作り出すものであり、希望そのものである。
ひとりひとりが"ミライ"へ向かって、自分の目標を達成させるために歩き出すのだ…
◆
珍しく夕方に特集をやってた。
そういえば、特集を見るのも、習慣になったよな…
『専門家がサンドスター火山を分析してくれました。』
『80%はサンドスターでしたが、残りの20%は黒い瘴気を纏った未知のサンドスターだったということです。』
『このサンドスターを専門家は「サンドスター・ロウ」と名付けました。危険な見た目をしているので、噴火した際には気を付けるよう専門家は呼びかけています。』
サンドスター・ロウ…か。
注意しておかなければ。
『キョウシュウ地方の大分エリアに新しく宿泊施設、「フレンズロッジ」ができました。ここではたくさんの観光客が…』
◆
もう夜か、今日も疲れた…
「メイ!こっちに来てみるのだ!流れ星なのだー!」
「え?流れ星?」
窓を開け、ベランダに出ると綺麗な流れ星が…
これは…
「アライさんと出会った時も、こんな流れ星だったな…」
サンドスターが降ってきたのだ。
まだまだ謎が多いサンドスター。
それは俺に出会いをもたらしてくれた。
そしてこの流星群でまた、フレンズが新しく誕生していくんだな。
「アライさん、流れ星が消えるまでに願い事を言えたら、願い事が叶うんだって、ほら、願い事、言ってみて?」
「え!?す、すぐには思いつかないのだ!えーと、え~と…!!」
「め、メイとずっと一緒にいられますように!!」
アライさん…
ギュッ
「メイ?」
「アライさん…俺も、いつまでもずっと、一緒にいたい…」
「も、もちろんなのだ…//」
流星…サンドスターは今夜、奇跡の誕生をもたらし、そして奇跡の出会いをももたらす事になるだろう。
もっと色んなフレンズと出会いたい、話したい。
そうして俺達の絆はずっと、深まっていくんだ。
「メイ…大好きなのだ…ボソッ」
「ん?アライさん、何か言った?」
「な、なんでもないのだ!//」
最近のアライさんはよく照れるな…
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