第17話 雪

「…どうだった?」

「まだ歌詞の意味がわからないところがあるのだ…でも、いつか分かるようになるのだ!アライさんは分かるようになるまで、一生懸命勉強するのだ!」

「そっか…」

やっぱり「ぼくのフレンド」はまだアライさんには難しい歌詞だったのかな…





『解放するのだ…内なる野生を…』

うわっ、またこの夢かよ。

内なる野生を解放して何が起こるんですか…

「あのー、質問良いですか?」

『良いぞ。』

あ、すんなりとOKしてくれた。

「"内なる野生"…ってなんですか?」

『時期が来たらいずれ分かる…

守りたいものを守るべき時…』

「守りたいもの…」

「解放…って、どうやったら…」

『君が考えるんだ…』

質問の答えになっていないよ…

全く、これだから父さんは…



父さん?





「…やっぱり夢か。」

父さん…な訳が無いよな。

俺が物心付いた時にはもういないんだ。

きっと俺の思い過ごしなんだろう…

「てか、やけに寒いな…」

そう言いつつ、外を見てみる。

「これは…」

"真っ白な世界"

その言葉が一番合うであろう。

夜の間に降ったのだろうか、雪はかなり積もっている。

「アライさん、起きて!見て見て!これ!」

「ん~、なんなのだ~…アライさんはまだ寝ていたいのだ…」

「って!これなんなのだ~!?」

「雪って言ってね、白くて、触ると冷たいんだ。暖かくなると溶けちゃうけどね。」

「アライさん、雪で遊ぶのだ!」

「あ、ちょっと待ってよ!アライさ~ん!」





「わぁ~!真っ白なのだ♪」

「ここまで見事に白いと驚きだな~。」

ところでフレンズって、冬眠をするのだろうか?

考えてみたら、まだまだフレンズには謎が多いように感じる。

「あれは…なんなのだ?」

「ぁ、あぁ、あれは雪だるまって言うんだ。

雪で作れるんだよ。」

「メイと一緒に作るのだ!」





「出来たのだー♪」

「いやぁ、意外に大変だったね~」

「最後に目を付けて…人参を鼻の代わりにして…っと、これで仕上げ完了!」

ふと振り返ってみると、誰かがこちらにやって来ているのに気付いた。

今日はあまり人はいない、こんな寒い中ご苦労な事だ…

「お前ら、ここで何をしている?」

「え?」

まさか話しかけられるなんて思ってもいなかった。

話しかけきた人をよく見ると、白い服に…ミニスカート!?こんな寒い中よくそれで大丈夫だな?…んで、なにか武器のようなものを担いでいるが…それ何?

「えぇと、あなたはどちら様でしょうか…」

「敬語で話さなくてもいい、私はヒグマだ。お前は誰だ?」

「ヒグマ、さん?ですね、俺はメイと言います…こっちは、アライグマのアライさんです…」

「敬語はいらないと言っただろう…ヒグマでいい。」

ヒグマ…熊もフレンズになったのか。

確か日本最大級の獣?だっけかな。

珍しい事もあるようで…

「わかった、ヒグマ。所で、俺たちに何か用?」

「あぁ…お前ら、ここで何をしてるんだ?」

「何って…雪遊びだよ。」

「あぁ、そうか…邪魔してすまなかった。」

「所で、その武器?はなんだ?」

「この姿になった時にはもう既にあったんだ…きっといつか役に立つ時が来るかもしれん。」

「そっか…じゃあ、またね。」

「あぁ…お前らと会ったのも何かの縁かもしれない。またいつか。」

ヒグマはそう言ってから何処かへと歩いていった。

ヒグマの武器…役に立つ時が来るかもしれないと言っていた。

役に立つ時なんて、来ないのが一番いいんだ…

「アライさん、雪遊びの続きしようか…アライさん?」

「あ、あのフレンズ怖いのだ!」

アライさんはいつの間にか俺の後ろでガタガタ震えてた。

これが日本最大級の獣の威圧…って奴か?





あいつ…メイだっけか…

何だろうか、あいつの中から何か野生感を感じるような…

メイ、不思議な奴だ。

たまたま出会ったあいつだけど、なんかまた会えるような気がする。

今まで1人だったが…仲良くなれれば、いいな。





街はすっかり雪景色になり、ちょっと凍ってて危ないところも…

「アライさん、転ばないように気をつけてね?」

「のだ~!?」ズッテーン

「遅かったか…」

その時、路地裏から声がした。

怪しげな声…

また危機の予感?

「アライさん、そこで待ってて。」

「わ、分かったのだ!」





「可愛いなぁ~??」

「こいつ捕まえて売り飛ばしちゃう?」

「いや、いっそ誘拐でいいでしょ!」

「「「いいね~…」」」

「お、おい!お前ら!これ以上近付くと本当に攻撃するぞ!良いのか!」

「うっせぇなぁ…黙ってろよ!」

クソッ、こんなところで力なんて使いたくない!

生身の人間が喰らったらただではすまないはずだ、ここは攻撃せずにどうか収められればいいのだが…

「おい、てめぇら。何やってんだ。」

声が聞こえた。

聞き覚えのある声が。

「あぁ?今俺達は忙しいんだ、黙ってろカス!」

不良の1人が殴りかかるが、その攻撃は軽々と避けられてしまう。

彼は爪で不良を引っ掻く。

「ガァッ…!?」

「この野郎!良くもやりやがったな!」

引っ掻かれた不良と共に三人同時に殴りかかる。

しかし彼は…目にも止まらないような凄まじいスピードで、爪を使い不良を斬り裂いていく。

不良は地面に倒れたが、重症ではない。

彼はあまりダメージを与えずに不良達の戦意を失わせたのだ。

「あれっ、君って…」

「お、お前は!」

「ヒグマじゃないか!」

「メイ!どうしたんだよ、こんなところで!」

こんなに早く会えるとは思わなかったぞ…

しかしあの戦闘センス、かなり良かった。

「礼を言う。私の力だったらこの不良達を最悪殺しかねなかったんだ。そしたら、また人間は私達を嫌うだろう。私は抵抗しない事に決めていたんだ。」

「そうか…でも、助かってよかったよ。いつかその力も、自分の大切な人のために尽くせればいいね。」

大切…私には縁がない言葉だった。

いつか私にも、そんなフレンズとの出会いが来るのだろうか?

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