第17話 雪
「…どうだった?」
「まだ歌詞の意味がわからないところがあるのだ…でも、いつか分かるようになるのだ!アライさんは分かるようになるまで、一生懸命勉強するのだ!」
「そっか…」
やっぱり「ぼくのフレンド」はまだアライさんには難しい歌詞だったのかな…
◆
『解放するのだ…内なる野生を…』
うわっ、またこの夢かよ。
内なる野生を解放して何が起こるんですか…
「あのー、質問良いですか?」
『良いぞ。』
あ、すんなりとOKしてくれた。
「"内なる野生"…ってなんですか?」
『時期が来たらいずれ分かる…
守りたいものを守るべき時…』
「守りたいもの…」
「解放…って、どうやったら…」
『君が考えるんだ…』
質問の答えになっていないよ…
全く、これだから父さんは…
父さん?
◆
「…やっぱり夢か。」
父さん…な訳が無いよな。
俺が物心付いた時にはもういないんだ。
きっと俺の思い過ごしなんだろう…
「てか、やけに寒いな…」
そう言いつつ、外を見てみる。
「これは…」
"真っ白な世界"
その言葉が一番合うであろう。
夜の間に降ったのだろうか、雪はかなり積もっている。
「アライさん、起きて!見て見て!これ!」
「ん~、なんなのだ~…アライさんはまだ寝ていたいのだ…」
「って!これなんなのだ~!?」
「雪って言ってね、白くて、触ると冷たいんだ。暖かくなると溶けちゃうけどね。」
「アライさん、雪で遊ぶのだ!」
「あ、ちょっと待ってよ!アライさ~ん!」
◆
「わぁ~!真っ白なのだ♪」
「ここまで見事に白いと驚きだな~。」
ところでフレンズって、冬眠をするのだろうか?
考えてみたら、まだまだフレンズには謎が多いように感じる。
「あれは…なんなのだ?」
「ぁ、あぁ、あれは雪だるまって言うんだ。
雪で作れるんだよ。」
「メイと一緒に作るのだ!」
◆
「出来たのだー♪」
「いやぁ、意外に大変だったね~」
「最後に目を付けて…人参を鼻の代わりにして…っと、これで仕上げ完了!」
ふと振り返ってみると、誰かがこちらにやって来ているのに気付いた。
今日はあまり人はいない、こんな寒い中ご苦労な事だ…
「お前ら、ここで何をしている?」
「え?」
まさか話しかけられるなんて思ってもいなかった。
話しかけきた人をよく見ると、白い服に…ミニスカート!?こんな寒い中よくそれで大丈夫だな?…んで、なにか武器のようなものを担いでいるが…それ何?
「えぇと、あなたはどちら様でしょうか…」
「敬語で話さなくてもいい、私はヒグマだ。お前は誰だ?」
「ヒグマ、さん?ですね、俺はメイと言います…こっちは、アライグマのアライさんです…」
「敬語はいらないと言っただろう…ヒグマでいい。」
ヒグマ…熊もフレンズになったのか。
確か日本最大級の獣?だっけかな。
珍しい事もあるようで…
「わかった、ヒグマ。所で、俺たちに何か用?」
「あぁ…お前ら、ここで何をしてるんだ?」
「何って…雪遊びだよ。」
「あぁ、そうか…邪魔してすまなかった。」
「所で、その武器?はなんだ?」
「この姿になった時にはもう既にあったんだ…きっといつか役に立つ時が来るかもしれん。」
「そっか…じゃあ、またね。」
「あぁ…お前らと会ったのも何かの縁かもしれない。またいつか。」
ヒグマはそう言ってから何処かへと歩いていった。
ヒグマの武器…役に立つ時が来るかもしれないと言っていた。
役に立つ時なんて、来ないのが一番いいんだ…
「アライさん、雪遊びの続きしようか…アライさん?」
「あ、あのフレンズ怖いのだ!」
アライさんはいつの間にか俺の後ろでガタガタ震えてた。
これが日本最大級の獣の威圧…って奴か?
◆
あいつ…メイだっけか…
何だろうか、あいつの中から何か野生感を感じるような…
メイ、不思議な奴だ。
たまたま出会ったあいつだけど、なんかまた会えるような気がする。
今まで1人だったが…仲良くなれれば、いいな。
◆
街はすっかり雪景色になり、ちょっと凍ってて危ないところも…
「アライさん、転ばないように気をつけてね?」
「のだ~!?」ズッテーン
「遅かったか…」
その時、路地裏から声がした。
怪しげな声…
また危機の予感?
「アライさん、そこで待ってて。」
「わ、分かったのだ!」
◆
「可愛いなぁ~??」
「こいつ捕まえて売り飛ばしちゃう?」
「いや、いっそ誘拐でいいでしょ!」
「「「いいね~…」」」
「お、おい!お前ら!これ以上近付くと本当に攻撃するぞ!良いのか!」
「うっせぇなぁ…黙ってろよ!」
クソッ、こんなところで力なんて使いたくない!
生身の人間が喰らったらただではすまないはずだ、ここは攻撃せずにどうか収められればいいのだが…
「おい、てめぇら。何やってんだ。」
声が聞こえた。
聞き覚えのある声が。
「あぁ?今俺達は忙しいんだ、黙ってろカス!」
不良の1人が殴りかかるが、その攻撃は軽々と避けられてしまう。
彼は爪で不良を引っ掻く。
「ガァッ…!?」
「この野郎!良くもやりやがったな!」
引っ掻かれた不良と共に三人同時に殴りかかる。
しかし彼は…目にも止まらないような凄まじいスピードで、爪を使い不良を斬り裂いていく。
不良は地面に倒れたが、重症ではない。
彼はあまりダメージを与えずに不良達の戦意を失わせたのだ。
「あれっ、君って…」
「お、お前は!」
「ヒグマじゃないか!」
「メイ!どうしたんだよ、こんなところで!」
こんなに早く会えるとは思わなかったぞ…
しかしあの戦闘センス、かなり良かった。
「礼を言う。私の力だったらこの不良達を最悪殺しかねなかったんだ。そしたら、また人間は私達を嫌うだろう。私は抵抗しない事に決めていたんだ。」
「そうか…でも、助かってよかったよ。いつかその力も、自分の大切な人のために尽くせればいいね。」
大切…私には縁がない言葉だった。
いつか私にも、そんなフレンズとの出会いが来るのだろうか?
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