第7話 公園

「…ふぅ」


 俺はため息をついた。

 新学期が近いのもあるし、今日は休みなのに早めに起きて眠いということもあるが、昨日までに集中して起きた、訳の分からないことが俺に一番そうさせた。

 ちょっと疲れているのかもしれない。

 休みなのに。


 それを見たアライさんは、「どうしたのだ?」と聞いてくる。


「いや、なんでもないよ。そうだ、そこに公園がある。ちょっとベンチで休んでいかない?」


「こう…えん?」


「あー…行ったら分かるよ」



 ◆



 公園は、いつもと変わらない様子でこちらを出迎えてくれた。


 だが、見渡すと、様々なアニマルガールがいる。

 自然に近い場所ということもあって、ここに集まるのだろうか?


 今のところは、何も被害はない。

 だが、警戒する必要はあるだろう。


「な、なんなのだ…?このよくわからないものは」


 彼女は滑り台や鉄棒を当然知らないので、それらを指さしながらそう言う。

 この反応を見てるとちょっとクスってくる。


「滑り台、そして鉄棒だね。滑り台は、上に登ってツルーっと滑るもの。鉄棒は…まぁ、アライさんにとっては危険だし、あまり気にしなくていいよ」


「ぬぬ~?それはどういうことなのだ?」


「アライさんおっちょこちょいだから、頭から落ちたら大変だしね」


 それを聞いた彼女は、頬をふくらませて「そ、そんなこと…!」とまで言ったところで言葉を途切れさせた。


「…そういえば、あったのだ」


「自覚してたんだ…あはは。ま、とりあえず遊んできていいよ。俺はちょっとベンチで休んでるからさ」


 威勢のいい返事をして走り去る彼女を見ながら、ベンチに腰をかけた。


 と同時に、頭に違和感を感じた。

 何かに踏まれてるような感覚だ、というか完全に踏まれてる。


 ガッ!

 漫画なら間違いなくそんな擬音がついているだろう。

 ともかく、俺はその正体を探るべく、頭の上にあるであろうそのを掴んだ。


「う、うぇぇ!?」


 声の主は何故かこれを想定していなかったのか、情けない声を出してバランスを崩しているようだった。


「あのー…降りてくれませんか」


 ゆっくり休めなさそうな予感がする。



 ◆



 その正体は二人のアニマルガールだった。

 よく分からないが、器用に頭に生えている翼(?)を使って飛んでいたところ、足場としてちょうどいい頭があったのでそこに止まったらしい。


「いや誰が足場だ」


 思わずそう突っ込んでしまった。

 頭に止まっていた、厚着も髪も翼も全体的に灰色な子はアフリカオオコノハズク。

 止まらずホバリングしていた、今度は全体的に茶色な子はワシミミズク。

 彼女らは、自分でそう名乗った。


「私のことはコノハと呼ぶのです!」


「私のことはミミちゃんと呼ぶのです!」


 と、しっかり呼び名まで決めてある。

 ワシミミズクの方は、ちゃっかりちゃん付けの呼び名だ。


「あぁ、そうなの…よろしく」


「ちょっと反応が薄いと思うのです」


「我々はここのリーダー、なのですよ?」


 そしてこの二人、何故かキメ顔である。

 話によれば、夜、二人が気がついた時にはここにいたとのことだ。

 だから、先駆者である我々はリーダー…と。


 縄張り争いみたいだな、知らないけど。


「そ、そうなんだねぇ…へぇ~」


 そう誤魔化した後に、思わぬ誤解を招いていたことに気付かされた。


「ところで、さっきからお前は、あのフレンズを見てニヤニヤしていたのですが…なにか企んでますね?」


 コノハがそう言ったのだ。

 俺は勘違いされていた…不審者に。

 いや、この二人しかそう思ってないかもしれないのだが。


「え、いや、違うよ」


「正直に白状した方がいいのですよ。」


「いや、本当に俺そんなんじゃなくて…」


 これを説明するのにかなり時間がかかった。

 流石公園のリーダー(?)である。

 しっかり治安維持も考慮している。



 ◆



「今日は楽しかったのだ!フェネックとも友達になれたしー!」


 一方、アライさんには友達ができたらしい。

 公園のリーダーの対応で全く姿を見れてなかった。

 ちょっと見てみたい気持ちがある。


 …ところで、あのアニマルガール達はどこに住んでいるんだろう。

 もしかして野良?…いやいや、まさかね。


「良かったね、アライさん。とりあえず、早く帰ってもう夕飯にしよう」


「よし!そうと決まればダッシュなのだー!」


 転びそうなくらい、彼女は駆け出した。

 彼女の足はなかなかに速い。

 俺も早く追いつくように、駆け出した。



 ◆



「ほう、これは興味深い」


「何故この板に人が?」


 家に帰ると、何故か公園のリーダーがいた。

 何故…何故俺の家はここまでセキュリティが穴だらけなのか。

 何故…何故アニマルガールはテレビを見て板だというのか。


「…誰なのだ?」


 とりあえず、アライさんには後で詳しく説明しておかなければならないだろう。


「ねぇ二人とも、なんでいるの…?」


「お前のような不審者のあとを付いてきたのですよ」


「そして先回りして、証拠を掴んでおき、それを突きつけるのです。さすれば、平和は保たれる、そう思ったのです」


 なるほど、さっきまでの会話は一ミリも響いてなかった。

 恐らく、しばらくこの二人は不定期的にここを訪れるし、この二人の中では俺は不審者なのだろう。


 …骨が折れるなぁ。

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