第5話 朝ごはん

 ぐぅぅぅ…


 互いの腹が鳴る。

 そういえば、まだ朝ごはんを食べていなかった。

 この子をどうするかはさておき、まずは朝ごはんを作ることにした。


「ご飯作るからさ、ちょっと待ってて」


 適当に卵とソーセージ、それから味噌汁のもとを取り出す。

 朝はこれくらい適当でいいのだ。


 まず、お湯を沸かす。

 卵をとくため、それ用の皿を持っておいたところで問題が発生した。



 ◆



「メイ。アライさんに手伝えることはないか?」


「無いかな。アライさんには料理は難しいと思うからね」


 そう言って、卵を割る。

 スクランブルエッグを二人分作ることにしてるため、二つ目を割ろうとしたのだが。


「心配無用なのだ!これはアライさんにおまかせなのだ」


 と、意気揚々に、アライさん卵を掴む。


「あ、ちょっと!?」


 彼女の手の中の卵を掴もうとすると、見事に卵が手からすり抜け床に落ちた。


 なんということでしょう。

 生まれて初めて卵を床に落としたかもしれない。


「あー…やっちゃったね」


「こ、これはもう使えないのか…?」


 まだ希望を残しているのか、震え声で彼女はそう聞いてくる。


「使えないね」


 悲しいが、現実はいつも非情だ。

 事実を突きつけると、彼女は少し落ち込んだ。


「ごめんなさい、なのだ」


 さっきまで元気だった子がこんなんになってるのを見てるこっちも辛くなるので、卵の扱い方を教えることにする。


「大丈夫。まだ替えはある。それよりも見ていて」


「まず、卵を割る時はヒビが入るくらい弱目に、何度か机に打ち付けるんだ。そしたら、ヒビの間に指を入れて、真っ二つに割る。気をつけてね、落としたり強く打ち付けたら割れるよ。

 これから覚えていけばいいからね」


 そう言いながら、卵を割って、そして床の卵を片付ける。

 多分、次もミスする。

 しばらくはミスするかもしれないが、仕方ない、誰だって最初はそうなんだから。


「は、はい!なのだ!アライさん、次からは失敗しないように頑張るのだ!」


「OK!次から頑張ろう!」


 そんな感じで、初日の朝はいつもよりドタバタしていて、賑やかだった。

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