第4滴 Spreading Sympathy


 「そう邪険にするなよ。怖がってうずくまったりなんかして。大丈夫、喰ったりしないさ」


「あなた、誰?」


「私? 私は吸血鬼さ。この東の国では見かけないと思うがねぇ。あんたの引き連れてる魔物は、全部このあたりのやつらばかりだから」


「吸血鬼――あなたも、西洋から?」


「ああそうさ。好きな男がいたもんで、ちょいと追いかけちまったのさ。そしたらこんなに遠くまで来てしまった」


「好きな、男――?」


「ああ。あんたの逆さ」


「どうして、私のことを?」


「あんたのことは何でも知ってるさ。なんてったって、私はあんた。あんたは私だからね」


「どういうこと?」


 「……あんたも辛い思いをしただろう。選んだわけでもないのに、その体質からいじめられ、忌み嫌われ、隆盛の姫がこっちじゃ世間知らずの一般市民だ」


「……素性が知れ渡ってはいけないもの。いいの、ここで大人になるのを待っていれば、私は遠くへ旅立てる」


「それって、昔あんたがした約束のことか?」


「え?」


「知ってるさ。……だがどこまで信用できるかわかったもんじゃないぜ」


「どう――して?」


「時の流れは残酷だ。無垢な王子も、逃げ出したお前にいつまでも構っていられねぇさ。もしかしたら、別の娘と連れ添うつもりかもしれないぜ?」


「そんなこと、ない――」


「あーあーかわいそうだこと。生まれてから死ぬまでついちゃいねぇ。――今のままじゃな」


「え?」


 「悔しいだろ? 愚かな父親によって虐待された日々、愛する者と結ばれない不幸――こっちじゃ一般市民だって好き勝手してるってのに、境遇1つ違えば地獄だ」


「っ――」


「そんなにオフダを握んなくても大丈夫だって。私はただ提案してるだけさ」


「提案?」


? 私たちならそれができる。

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