ミサイルのち晴れ
結城 基
ミサイルのち晴れ
「明日の死ぬかもしれないのに受験勉強してる俺らって、不幸だよな」
今年になって活発さを増したミサイル打ち上げのニュースと迫り来る大学受験に、友人のぼやきは日に日に増えていく。確かに、と苦笑しながら、僕は今朝方の祖母との会話を思い出していた。
「いってくるよ」
「ああ学校かい、頑張っておいで。ばあちゃんも頑張るさかいなぁ」
日々繰り返される『頑張る頑張れ』そんな言葉に辟易している僕は
「寝てるだけのばぁちゃんが何を頑張るのさ」
と、ここ半年ほど寝付いたままの祖母に悪態をついた。
「ばあちゃんは頑張って休むんさ。明日にはまた畑出られるようになぁ。今日も一生懸命休むんやよ」
「休むのを頑張るってなんだそれ」
横たわり目を瞑ったまま、それでもニッコリ微笑む祖母を僕は見つめる。
明日死ぬかもしれないのに、と受験勉強を嘆く友と、明日も生きるために頑張って休むと笑う祖母。僕は一体、どんな明日を歩いていくのだろう。窓から吹き込む冷たい風に、ボロボロの参考書がぱたぱたと音を立てる。
ミサイルのち晴れ 結城 基 @Azyu-Seeds
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