第31話 続くキャンプの夜

 個人的には大満足の運動会を終えて、私は少しのんびりとしています。

 キャンプ用のチェアにどへっと埋まって、みんなの様子を眺めてます。


 モグとペチは、草原を走り回ってじゃれています。

 さっきまで寝てたのに、元気ですね。

 たまにお外に出る二匹ですが、草原は一味違うんでしょうか。

 いつもとは、少しテンションが違う気がします。

 ミィはモグ達の近くで、丸くなって寝てます。

 あのさミィ、なんか毛玉みたいになってるよ。


 妖精さん達も楽しそうです。

 運動会の興奮が抜けてないみたいで、走り回ってたりします。

 火の妖精さんが気になるけど、水の妖精さんが居るから心配ないでしょ。

 運動会のお片付けを楽しそうにやっていたお掃除の妖精さん達は、他の妖精さん達と追いかけっこしてます。

 ちょっと心配はしてたんですよ、自分の役割みたいなのが無くなったら、妖精さん達の元気が無くなっちゃうんじゃないかってね。

 そうでも無かったみたいですね。

 それはそれみたいな感じで、キャンプという非日常の空間を楽しんでるみたいです。


 特に幸せそうなのが、お花の妖精さんですね。

 緑が豊かな草原にいるのが、嬉しいんでしょうね。

 クルっと回ってから、ニコって笑顔を見せてくれます。

 一回転して笑顔、クルっニコを何度も繰り返して、体中で喜びを表現しているみたいです。

 

 う~ん、平和ですね。

 いい景色と幸せな光景は、心を洗い流してくれる気がします。


 何よりも平和なのが、裕子ちゃんが酔っぱらって寝ている事でしょうね。

 何だかんだで、車やキャンプ道具の手配に加えて、朝から運転してここまで連れてきてくれたんですし、ゆっくりと休ませてあげましょう。

 そろそろ夕方だし、ブランケットでもかけてあげましょう。


 起こしたらやかまし、もとい面倒くさい、う~ん適切な表現が見つからない。

 とにかく元気な裕子ちゃんが静かなのも、たまには良いと思うんです。

 それにしても、キャンプ場に着くなり、モリモリ食べて飲んで寝ちゃうなんて、どこのお父さんでしょう。

 そう言えば、裕子ちゃんの苗字は音尾さんでしたっけ。

 どうでも良いですか? そうですか。


 ちなみに、美夏ちゃんはまだ帰ってきてません。

 サバイバルの妖精さんが、着いていったから迷子の心配はないと思いますけど、何て言うかわんぱくですね。

 最近では、まるで女の子みたいな男の子を、男の娘と呼ぶようですが、色んな属性を兼ね備えた美夏ちゃんは、何にカテゴライズされるんでしょう。

 ボクっ娘でしょうか?

 わんぱくっ娘でしょうか?

 脳筋サバイバーでしょうか?

 どっちにしても、女の子の呼び方とは思えませんね。

 見た目はとっても可愛くて、彼氏なんてわんさか出来そうな気がしますけど。

 いまだに男っ気が無い、残念な子です。

 いい子なんです、自由奔放っぷりを理解してくれる男性諸君、美夏ちゃんはお勧めの逸材です。

 ってかこれ、何の紹介ですか!

 人の事をとやかく言ってる場合じゃないって?

 私も彼氏が居ないです、グスン。


 裕子ちゃんは、何のカテゴリーかって?

 何を仰いますか、食欲魔王に決まってるじゃないですか。

 あれだけ食べてるくせに、ナイスバディって意味がわかりませんよ。

 もう都市伝説レベルですよ。

 あの食欲のせいで、彼氏に振られたんですよきっと。

 まぁ、個人的には剛田君か、武君と呼んであげて欲しいですけど。

 とは言え、私の事をのび子と呼ぶのは禁止です。


 そう言えば、この間たまたまやった相性占いで、裕子ちゃんと私の相性は抜群に良かったです。

 一応ね、はっきり言っときます。

 私は百合ではありません。

 もし、裕子ちゃんが男だったら?

 う~ん、知らない間に彼女認定されてそうで、怖いですね。

 それで気が付いたら入籍してたとか、ありそうで怖いです。

 子供は二人くらいで、モグ達にも子供が出来て、お帰りなさいあなたって、何を言わせるんですか!

 やめて下さい、そういう関係じゃないんです!


 それはさておき、キャンプですよキャンプ。

 せっかくのキャンプなんです、しかも近くに温泉が有るんです。

 最高なんです。

 まぁ、こんな妄想している位にゆっくりできるのが、一番の最高なんでしょうね。


 あ~、夕焼けが素敵!

 妖精さん達もずらっと揃って、山の稜線に日が沈んでいく所を眺めています。

 なんだか、青春の一幕みたいで、微笑ましいですね。

 

 流石に日が沈む頃には、だいぶ涼しくなってきますね。 

 さて、焚火でもしますかって、着火の心配はしなくて良いんですよ。

 火の妖精さんがボウって、色々燃やしてくれますから。

 

 薪の暖かな光に包まれて、お料理の妖精さんが夕食の準備をします。

 匂いに釣られて、裕子ちゃんが目を覚まします。

 流石は食欲魔王です。

 そんでもって、ようやく帰ってきた美夏ちゃんは、泥だらけになってました。

 どこで何してきたのやら、ミス泥ん子と呼んであげましょう。


 仕方なく、温泉に連れて行きましたよ。

 もちろん、裕子ちゃんも一緒にね。

 普通は、食事より温泉に目を輝かせるのが、女子ってもんじゃないですか?

 それが裕子ちゃんときたら。


「先に食事よ! 決まってるじゃない!」


 私は、裕子ちゃんの首根っこを摑まえて、温泉に連れて行きましたよ。

 マイペースな美夏ちゃんは、適当に体を洗って、湯船でふい~って言ってます。


「あ゛ぁ~!」

「裕子ちゃん。おっさんみたいだよ」

「いいのよ。それにしても、温泉最高ね! 夕食が余計に楽しみになってきたわ」

「裕子って、ご飯の事ばっかりだよね」

「うっさいわよ、美夏!」

「そんな美夏ちゃんは、何処で何をしてたのよ!」

「ちょっと山の方まで行ったら、遭難しかけちゃってさ。転んで崖から滑り降りたりしてたのさ」


 色気が無くて済みません。

 温泉回なのに、ポロリが無くて済みません。

 って、ポロリなんてする訳ないっしょ!


 そもそも女子トークって、もっと楽しそうだろって?

 いやいや、何を期待している男の子達よ、夢を壊してすまんです。

 女子のトークは、キャッキャウフフみたいな、ときめき色はしてないですよ。

 場合によっては、どす黒い色してますからね。


 とりあえず温泉効果で、夕食のおいしさがマシマシでしたね。

 でも、幸せなひと時もこれで終わりです。

 昼間に寝まくってた裕子ちゃんが、夜はこれからよ! みたいなテンションになってます。

 

 テントに入って、寝袋に包まれた所までは良かったです。

 そこからは、裕子ちゃんと美夏ちゃんの、リアルホラー話が始まっちゃいました。

 私の怪談には笑い転げていた妖精さん達が、怖がってテントから出てっちゃいました。

 私は、怖くて一人でトイレにも行けずに、おまけに眠れずにいました。

 そんな私を置いて、話し疲れた二人は先に寝ちゃいました、コンニャロ!

 因みに、モグ達は猫用のテントで寛いでいたみたいです。

 

 はい、朝日が目に優しくなかったです。

 でも、朝食は美味しかったです。

 そして帰りに助手席でウトウトしていると、裕子ちゃんに叩かれました。

 とっても理不尽です、グスン。


 運動会は楽しかったし、外での料理も格別でしたけど、暫くキャンプはいいや。

 それにしても旅をした後、自宅に辿り着いた時のほっとした感ってなんでしょうね。


 あぁ、言い忘れてました。

 実はお土産があります。

 美夏ちゃんが、着いてきました。

 暫く私の自宅に居候するそうです。

 あぁ、面倒くさい予感がします。

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