第29話 妖精さんの運動会 その1

 やってまいりました運動会シーズン。

 そんな訳で、私は一大イベントを開催しようと計画しました。

 名付けて、妖精さんだらけの大運動会!


 はい、今回頑張るのは私ではありません。

 妖精さん達です。

 企画の内容を聞いた時の妖精さん達の様子ときたら、そりゃあもう大騒ぎでしたよ。

 ヒャッホーなんてレベルじゃない位に、大喜びしてました。


 今回みたいなのは、企画するのも楽しいんです。

 徒競走はやりたいでしょ、リレーも必須よね。

 大玉転がしとか、借り物競争なんてのも良いよね。

 後は騎馬戦に、綱引きに、棒倒しに、大縄跳び!

 やりたい種目なんてあり過ぎて、目移りしちゃいます。

 ちっちゃい妖精さん達が、頑張る姿を見ると、癒しどころじゃ済みませんよ。

 まぁ見て楽しめるのは、私と美夏ちゃんくらいでしょうけど。

 

 ミャーミャーってモグ、君も参加するの? 

 私の膝をカリカリしても、って仕方ないモグ達も参加できる種目を考えようか。

 したら、やっぱり美夏ちゃんにも声かけないとね。


 でも場所はどうしようか?

 私のワンルームじゃ狭すぎるってより、既に妖精さん過多の部屋で、何しろって?

 どこかの公園で、ポルターガイストを起こす訳にはいかないし。

 区の施設でも借りますかって、それだと子猫達が参加できないね。

 でも、そんな問題は、意外にあっさり解決しました。


「キャンプ場に行けば良いじゃない。ぼく、良いところ知ってるよ。ついでに、裕子も誘おうよ」

「ほんとに? 運動会なんだよ!」

「だから、一緒にキャンプを楽しもうって事だよ。裕子なら、予約からレンタカーの段取りまで、全部やると思うよ。じゃあ、ぼくから伝えとくね。そんで、ぼくは現地に直接合流するから」


 まさかの裕子ちゃん合流ですが、もしかしたら今回、私は何もしなくて済むかも、フフフ。

 なんて冗談ですよ。

 企画者ですから、色々準備をしますよ。

 といっても、特別な事はありませんけど。

 精々作ったのは、綱引き用の綱とか、大繩飛び用の縄とか。

 白線用のテープも必要かな。

 あぁ、後は棒倒し用の棒ですね。

 

 本当はもっとやることあるって?

 えぇ、妖精さん達がそれぞれ準備しました。

 紅白のユニフォームは、洋裁の妖精さんが用意してくれました。

 チーム分けも、妖精さん会議で決まったみたいです。

 私は、種目を決めて妖精さんに伝えただけです。

 練習もそれぞれ勝手にやってます。

 私は、優秀な生徒を持った教師の感覚です。

 当日に私を驚かせようとする、妖精さん達の心遣いが感じられますね。


 そんなこんなで、出発前日です。

 RV車っていうんですか? 

 あのごっつい車を、裕子ちゃんがアパートに乗りつけました。

 中にはキャンプ用品の数々が。


「これってバーベキューグリルじゃない?」

「良く気が付いたわね! キャンプと言えばバーベキュー! そして肉よ!」

「凄いよ、裕子ちゃん! よくこんなの借りてきたね」

「美夏の伝手よ。私は連絡して取りに行っただけ。払いも美夏だし」


 なんて事でしょう。

 スポンサー力が半端ない。

 私は何もせずに美味しい思いをして良いんでしょうか?

 良いんですよ、きっと。

 日頃のご褒美なんです。


「あんたは、運動会とやらを楽しんでると良いわ。私はバーベキューをしながら飲みまくるから」


 あぁ、そう言うと思いましたよ。

 落ちとしては、上々ですね。

 何だかんだ言って、バーベキューのお肉を食べさせてくれるくせに。

 このツンデレさんめ。


 すっごく楽しみになってきました。

 妖精さん達も心なしかウキウキしています。

 そして私は、裕子ちゃんと乾杯しました。


「楽しみね~!」

「そうだね、運動会だよ!」

「そうじゃなくて、キャンプよキャンプ!」

「あ~。それもだね」

「それもじゃないわよ。それしかないじゃない! なんか良くわかんない運動会とやらは、あんた達で盛り上がれば良いじゃない。頼むわよ、バーベキューよ! すっごい食材用意したんだからね」

「ハイハイ。って私が作るんじゃないけどね~!」

「アハハハハ、確かに! あんた不器用だもんね~!」


 浮かれんなって?

 酔っ払い女子はお嫌いですか?

 まぁ良いじゃないですか、たまには。


 そんな訳で、翌朝はちょっと頭が痛いです。

 お料理の妖精さんは気が利きます。

 おじやみたいな軽めの朝食を裕子ちゃんと食べて、出発の準備です。

 冷蔵庫に入れたお肉達を、クーラーボックスに詰め込みます。

 もちろん、運動会の小道具も忘れずに。

 それと、あれ? お掃除セット?

 まぁ、必要なら車に入れてね。

 一応、モグ達のキャリーケースもね。


 準備が出来たら、いざ出発!

 みんな乗り込め~って狭いね。

 これって七人乗りだよね。

 もう後ろが見えないほど、車の中は妖精さんでいっぱいです。

 裕子ちゃんは、妖精さんが見えないから、後ろは見えるんでしょうけどね。

 何だか変な事を言ってます?

 気にしない、気にしない。


 ただ、裕子ちゃんは、美夏ちゃんとは違います。

 ガス欠にもならないし、笑顔で密林に突入したりしないんです。

 今日は無事にキャンプ場に着きました。


「さいっこ~!」


 確かに良い空気です。

 青空がまぶしいです。

 これが高原の空気なんですね。


 受付を済ませたら、早速テントを張って場所の確保します。

 運動会の準備も忘れていません。

 ビニールのテープで線を引きます、これが徒競走の走るラインになるんです。

 陸上のトラックみたいに、楕円型の線も引きます。

 何だかテンションが上がってきます。

 得点ボードみたいなのも作りましたので、設置します。

 フフフ、それだけではないのだよ。

 運動会と言えば、入場門でしょ!

 作りましたよ、DIYの妖精さんと一緒に!


 段々、運動会っぽくなってきました。

 妖精さん達のテンションも、予想以上に上がっています。

 準備を進めていた頃に、美夏ちゃんが到着しました。

 

「やっほ~! 久しぶりだね~!」

「美夏! おっそい!」

「美夏ちゃん、久しぶり!」


 サバイバルの妖精さんが、みんなに集まってハイタッチしてます。

 これで全員集合ね。

 一部、肉ってうるさい人が居るけど、気にしないで下さい。

 お料理の妖精さんは、バーベキュー班と運動会班に分かれて参加です。


 妖精さんが全員そろって、可愛く入場門から行進してきます。

 音楽の妖精のマーチングバンド付きです。

 

「お~!」


 美夏ちゃん、わかってるね。

 この可愛さは、プライスレス!


 次に選手宣誓は、火の妖精さんです。

 やる気満々でボゥって燃えてます。

 周りの芝生を燃やしたら怒られるから、注意してね。

  

 裕子ちゃんが、お肉をモグモグしている間に、最初の種目が行われます。

 先ずは大玉転がしです。

 大玉はサッカーボールを使います。

 赤いユニフォームのお掃除の妖精さんチームと、白いユニフォームのお料理の妖精さんチームに分かれて勝負です。

 自分の体より大きなサッカーボールを、コロコロ転がす妖精さん達。

 ヤバいです、鼻血でそう。

 勝負の結果?

 そんなのどうでも良いです。

 可愛いは最強なんです。


 次は徒競走かな。

 これはほぼ全員参加です。

 普段はフワフワと飛んでる事が多い妖精さん達ですが、今日は走ります。

 ちっちゃい足をチョコチョコ動かしてる姿は、一見の価値ありです。

 流石に運動の妖精さんは、足が早いですね。

 動かす足の残像が見える様だね。

 お花の妖精さんは、少し遅いかな。

 でも、そんなの関係ねぇ~んですよ。

 みんな楽しそうにしてるから、良いんです。


 みんな走り終わったところで少し休憩です。

 私もお腹空いたし。

 でも、妖精さん達は止まりません。


 休憩タイムは、マーチングバンドの出番です。

 音楽に合わせて、お仕事の妖精さんとお勉強の妖精さん、それにサバイバルの妖精さんが、ダンスを披露してくれました。

 まるで、プロスポーツのハーフタイムショーみたいです。

 完成度がすっごく高いです。

 

 そんな可愛いくも凄いショーを見ながら、昼食のバーベキューを頂く。

 こんな贅沢があって良いのでしょうか?

 眼福です、至福です、もうたまりません。


「みんな元気だね~。それに可愛いね」


 うんうん、気持ちはわかるよ美夏ちゃん。

 花より団子の裕子ちゃんとは、一味違うね。


 妖精さん達は、すっごく嬉しそうにはしゃいでます。

 楽しい運動会になりました。

 午後の部も、お楽しみに! 

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