第18話 妖精さん達のひな祭り

 三月三日と言えばなんでしょう?

 耳の日? いや、まぁそれも有りちゃ、有りなんでしょうけどね。

 ひな祭りですよ。暇なツリーじゃないですよ。

 そんな事を言う人は、それこそ耳鼻科に行った方が、良いんじゃないですか。


 ひな祭りと言えば何を想像しますか?

 雛あられとか、菱餅とか、ちらし寿司とかですか?

 もう、やめて下さいよ。食べ物の事ばっかり話してると、裕子ちゃんが襲ってきますよ。


 ひな祭りと言えば、お雛様じゃないですか?

 そんな事を言っても、お雛様なんて、持ってないですけどね。

 でも、居るじゃないですか。

 何がとか言わないで下さいよ。

 今まで散々、紹介したじゃないですか。

 妖精さんですよ、妖精さん。

 

 あの子達に、お雛様をやって貰おうと、思ってるんですよ。

 想像して下さい、いかがですか?

 可愛いでしょ?

 ときめくでしょ?

 鼻血ものですよ!


 そんな事をぽろっと話したら、妖精さん達がノリノリになりました。

 誰が何の役をするかの、擦った揉んだになりました。

 やはり一番の人気は、お内裏さまとお雛様のようです。


「みんなの気持ちは、よ~くわかったよ。ここはジャンケンで、勝負をしようね」

 

 私の言葉で、妖精さん達が集合して、輪になりました。

 おぅ、すごい人数になっちゃった。

 いつもイベント系に参加しない、お掃除の妖精さん達が、珍しくやる気みたいです。

 いつも口をモグモグさせてるだけの、予防医療の妖精さんも、輪の中に入ってます。

 四大元素の妖精さん達に、お花の妖精さん、お仕事の妖精さん、お勉強の妖精さん、ってこれほとんど集合してますね。


 音楽の妖精さんは、ひな祭りの歌を奏でてくれてます。

 お料理の妖精さん達からは、なにやら合図が。

 あ~、はいはい。ちらし寿司の材料を、買いに行きたいのね。

 後で連れてってあげるから、待っててね。

 

 ついでに、ミィも輪の中に加わってました。

 君はジャンケン出来ないでしょ。

 ミャって鳴いても、知らんべさ。


 ペチは日向ぼっこしてます。

 飼育の妖精さんは、モグに追いかけられてます。


 そんなこんなで、妖精さん達のじゃんけん大会が始まりました。

 小さい手を振り上げて、ジャンケンする妖精さん達の姿は、とっても癒されます。

 ミィが一緒になって、ちっちゃい前足を、ちょこちょこと動かしてます。

 うん、可愛いよミィ。


 ジャンケンに盛り上がってる妖精さん達を、のんびりと眺めていると、スマホがぶるぶると震えます。

 危険予測の妖精さんが、コクコクと頷いてます。

 あ~、そっか。そういう事ね。

 電話の相手は、裕子ちゃんでした。


「材料を持ってくからさ、ちらし寿司作ってよ。美夏も一緒だからね」


 何となく予感は有りましたけど、やはりこうなったかって感じです。

 お料理の妖精さんをチラッと見ると、いい笑顔でサムズアップしてます。

 そっか、あなた達がやる気なら、私はかまわないよ。


 おっと、そろそろジャンケンが終わった様です。

 役割も決まった様ですね。

 それでは発表しましょう、ジャーン!


 お内裏様は、火の妖精さんです。

 続いてお雛様は、お花の妖精さんです。

 それでもって、三人官女は水の妖精さん、風の妖精さん、お勉強の妖精さんに決まりました。

 最後の五人囃子は、土の妖精さん、お仕事の妖精さん、お掃除の妖精さんが二人、予防医療の妖精さんになりました。


 ひな壇はどうするって?

 そんな事くらい、考えてますって。

 本で段を作る様に重ねて、大きめの布をかければ、ひな壇の完成です。

 妖精さん達に並んでもらえば、妖精さん版のひな飾りが出来上がり。

 因みに、五人囃子が持つ楽器は、音楽の妖精さんから借りました。


 妖精さん達は、みんなニコニコと笑ってます。

 その上、ちょっとなりきってます。

 配役も良かったのかも知れません。

 元々おしとやかな雰囲気が有るお花の妖精さんは、お雛様にぴったりだし。

 ちょっとやんちゃな火の妖精さんは、お内裏様らしく立派な感じで、今日は炎抑え目で進行中です。

 三人官女のメンバー達は、今回ばかりは、しゃなりとしてます。

 五人囃子のメンバー達は、借りた楽器を抱えて、畏まってます。


 ミィがはしゃいで、妖精さん達の周りを飛び跳ねてます。

 日向でお昼寝していた、ペチも起きてはしゃぎ始めました。

 まぁ、モグは相変わらず、飼育の妖精さんを追いかけてますが。

 どうしよう。予想以上の可愛さになってしまいました。


 この可愛さを写真に残せたら。

 残念で仕方ありませんね。


 そんな私の癒しをぶち壊す呼び鈴が鳴ると、勝手にドアを開けて、裕子ちゃんが入って来ます。

 あの子には、人の家って自覚が無いんでしょうか?

 

「来たわよ~。ってあんた何してんの?」

「うわぁ~。雛飾りかな? 可愛いね。妖精のお雛様?」


 これ、誰が言ったかわかりますよね。

 最初が裕子ちゃんで、次が美夏ちゃんですよ。

 フフフ、妖精さんが見えない裕子ちゃんには、この可愛さがわかるまい。

 ビバ美夏ちゃん!


 まぁそこからは、いつもの暴食タイムです。

 裕子ちゃんのターンです。

 美夏ちゃんも負けじと食べます。

 五人前位あったちらし寿司を、ほとんど二人で食べてました。

 それからも、裕子ちゃんが持ち込んだ材料を使った、妖精さんの特製料理を何時間も食べ続けてました。

 凄いというか、なんというか。

 野生児の美夏ちゃんはともかく、裕子ちゃんは、そのうち太るんじゃないですか。


 妖精さん達は、満腹の裕子ちゃん達が帰るまで、ずうっとお雛様ごっこをしてました。

 とってもいい笑顔です。

 楽しんで貰えたなら良かったよ。

 わたしも、目の保養になったしね。


 何だかんだで、楽しいひな祭りになりました。

 妖精さん達に感謝して、一日が終わります。

 妖精さん達、ありがとう。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る