第13話 妖精さん達との節分

 節分です。

 豆まきしたり、歳の数だけ豆を食べたり、一年の無病息災を願うイベントです。

 最近では恵方巻きも流行り始めましたね。


 豆まきにはあまり興味が無いのですが、せっかくなので恵方巻きを作って貰おう!

 たまには、私も本気出そう。レッツ海鮮巻き!

 と言う訳で、やって来ました築地場外市場!

 そして何故か一緒に居る、裕子ちゃん。


 裕子ちゃんって私の事好きなの?

 いや違うな。目当ては海鮮巻きだな!

 この食欲魔人め!

 なんたって目利きをするのは、その道のプロ! お料理の妖精さんですよ!

 裕子ちゃんが食いつかないはず無いですよ。仕方なく連れて来ました。

 今日の裕子ちゃんは、荷物持ちを兼ねてます。


 流石築地、観光名所。

 沢山の人で溢れかえってます。

 と~ても賑やかです。

 朝早くやって来たかいが有るってもんです。


「マグロ! 大トロが食べたい!」


 馬鹿ですか? そんな高い物を買える訳が無いでしょ!

 何時も裕子ちゃんが食材を用意してくれるので、今日は私の奢りです。

 お料理の妖精さんには、私の予算を伝えて有ります。

 超超、ちょ~頑張りました!

 アルバイトとへそくりで溜めたお小遣いから一万円。これが今日の予算です。

 倹約家の私ですが、たまには贅沢するんです。


 私もマグロが食べたい。確かにそう思いますよ。

 お料理の妖精さんは、単に食材を見繕うのでは有りません。

 素材の良し悪しや、作る料理をちゃんと想定して、食材を選んでいきます。


 そして買ったのはマグロの中トロ、車海老、穴子、かんぴょう、飛び子、出汁用の昆布に鰹節と煮干し、海苔。

 歩き回りましたし、そこそこ荷物になりました。

 せっかくなので、場外市場で昼食を取った後、電車に乗って自宅へ戻ります。


 定番のだし巻き卵は、出汁から手作りです。

 当然、すし酢から煮切り醤油まで、お料理の妖精さんが作ります。

 ペチ達用にも何か作って貰う様に、頼んでおきます。

 だって、可哀そうじゃないですか。


 お料理の妖精さんが手際よく料理をしている中、私は妖精さん達を集合させます。


「あなた達、節分って知ってる?」


 妖精さん達は、一斉に頷きます。

 まあ、知らない筈が無いんですよ。物知りなお勉強の妖精さんが居ますし。


「鬼役と豆を投げる役を決めて、みんなで豆を投げっこしよう!」


 妖精さん達は一斉に話し合いを始めました。

 輪になってゴニョゴニョと暫く話し合っていました。


 結局、四大元素の妖精さんが鬼に決まった様です。

 豆を投げる役は、お勉強、お仕事、音楽、お花、予防医療の妖精さん、飼育の妖精さんもペチ達の世話を忘れてやる気みたいです。

 氷の妖精さんは、冷凍庫から出れないので不参加。

 お掃除の妖精さんは、後片付けを楽しみにしている様です。


「あんたって、いつもこんな馬鹿な事してるの?」


 妖精さんが見えない裕子ちゃんには、わかるまい。

 この妖精さん達のウキウキした笑顔。

 ついでに買って来た豆を持って、妖精さん達は今か今かと待ち焦がれています。


 本当は豆をまくのは夜なんでしょうけど、あんまり待たせちゃ悪いので豆まき開始! 

 飛び交う豆、飛び回る妖精さん達。一緒にはしゃぐ、ミィ、ペチ、モグ。

 狭いワンルームは、一気にお祭り騒ぎになります。


 妖精さんが見えてない裕子ちゃんには、ポルターガイストに見えるのでしょうが、流石になれた様で気にも留めてません。

 むしろお料理の様子を凝視してました。


 火、水、風、土の妖精さんがワンルームを所狭しと飛び回ります。

 お勉強の妖精さんと、お仕事、お花、予防医療の妖精さんが、ひらひらと舞い豆を投げます。

 飼育の妖精さんは、ペチ達の事を気にかけつつも、楽しそうに豆を投げてます。

 音楽の妖精さん達は、豆を投げずに音楽を奏で始めます。

 氷の妖精さんは、冷凍庫の隙間からみんなの様子を見て、クルクルと踊ってます。

 床に落ちた豆をペチ達が食べない様に、お掃除の妖精さんが即回収。

 飛び交う妖精さん達を追いかけ、ペチ達がジャンプします。

 なんでしょこのファンシーな空間!

 可愛さ満点!

 おぅ、鼻血でそう・・・


 ひとしきり豆まきを堪能し、ペチ達が疲れ切った所で、豆まき終了。

 妖精さん達は、大満足の笑みを浮かべています。

 良かった、良かった。


 豆まきが終わる頃、丁度海鮮巻きが出来上がります。

 うゎあ! なんて豪華な海鮮巻き!

 なんたって食材に超お金をかけた上に、お料理の妖精さんが本気を出した海鮮巻きですよ。

 見た目だけで、意識が持ってかれそう!


 裕子ちゃんは待ちきれずに、目をぎらつかせてます。

 私も待ちきれません。

 いざ実食!


「「うぉいうぉい、うぉいし~い!」」


 頑張って築地まで行ったかいが有った!


 穴子はふっくらと炊かれ、口の中でほぐれます。

 流石の目利き、中トロは脂の乗りが最高です。

 プリプリの車海老は舌を喜ばせ、飛び子のプチプチした食感は、良いアクセントとなってます。

 だし巻き玉子やかんぴょうは主張し過ぎず、各素材の味を引き立てます。


 因みに裕子ちゃんは、頬張りながらポロポロと涙を零していました。

 ペチ達も夢中で、特製猫ごはんを頬張ってます。


「幸せだ~!」 

「うぉ~!」


 二人で思わず叫んでしまいました。

 近所の方々すみません。

 美味しすぎる海鮮巻きが悪いのです。


「そう言えば、恵方を向いて無く無い?」

「あ~! でも食べちゃったね。先に言おうよ裕子ちゃん!」

「仕方ないでしょ! これを食べる為に今日一日あんたに付き合ったんだから」


 そんなこんなで夜が更けていきました。

 最高の節分、この調子で福がやって来ると良いな。

 あれ? もう福がやって来てるのでは? ハハハ・・・

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