ベーコンエピが旨いパン屋ではなに食っても旨い説

個人的にはだけど、初めて行くパン屋では必ずベーコンエピを買う。

なぜか、というと『ベーコンエピが旨いパン屋ではなに食っても旨い』と思っているからだ。


ベーコンエピとは――というか『エピ』とはフランス語で『麦の穂』という意味らしく、つまり『ベーコンの麦の穂』という感じの意味になるんだろうけど、実際に小さなパンがいくつも連結して麦の穂みたいな形をしている。


で、どうして『ベーコンエピが旨いパン屋ではなに食っても旨い』と思うのか。

世間では『食パンが旨い店はなにを食っても旨い』っていう話はたまに聞く気がするけど、個人的には食パンよりベーコンエピの方が確度が高いと思っている。

それは、ベーコンエピがかなり絶妙なバランスで成り立っているパンだからだ。

説明すると、ベーコンエピはバゲット生地の中にベーコンが入っていて、それが小さな実のような一口サイズの(まぁ実際には二口ぐらいだけど)大きさで複数連結している、ただそれだけのシンプルなパンなのだが、このシンプルさが作り手に絶妙なバランスを要求していると感じる。

以下、箇条書き。


①一口サイズ

他のパンのように食べる角度とか場所によって味にばらつきがおきにくいため、作り手が意図した味のバランスをそのまま感じやすい。


②味をごまかせない

パンとベーコンだけなので、どちらかがマズいと普通にマズくなる。

なのでコンビニとか工場生産のパン屋ではあまり作られない。


③ベーコンの塩加減

実質的にベーコン内の塩でパン全体の塩味をつけているはずで、パン生地の量とベーコン内の塩分量とベーコンの大きさを上手く合わせないと味のバランスが悪くなってしまう。


つまり、パン生地とベーコンだけというシンプルなパンであり。小さなパンの集合体だから、1つの小さなパンの中で味を完結させる必要があり。塩気がほぼベーコンからだけなので、ベーコンの塩分濃度と量とパン生地の量を絶妙に調整しなければ味のバランスが悪くなって美味しくなくなると。

パン生地が多すぎると味が薄いし、ベーコンが少なすぎても薄いし、ベーコンの塩分量が少なすぎても駄目。

これが他のパンならそんな微妙なバランスなんてあまり気にならないけど、ベーコンエピに関しては素材がシンプルすぎてそれがダイレクトに味に直結するからバランスが悪いと凄く気になってしまうのだ。


これが他の惣菜パンだと比較的誤魔化しようがあるというか。例えばチーズとかなんらかのソース類で味を複雑化したり味を上塗り出来るから、そこまで素材の微妙なバランスにこだわる必要はなくて、それらが良ければ総合的にはそこそこ美味しい味に出来ちゃう場合もあると思うんですよ。

逆に食パンとかに関しては、パンそのものだからパン屋にとっては基本の部分であって、それはそのパン屋が師匠から受け継いだレシピや職人的な技術の要素が高い部分だと思う。

当然それも重要なのだけど、ベーコンエピ含めた惣菜パンはパンと具材の融合であるから、つまりそれは料理の領域であって、パンが単純に旨いだけでは成立しないわけで。その中でもベーコンエピはパンとベーコンだけで『旨い』と思わせなければならないシンプルなパンだから、パンの旨さは勿論のこと、そこに合わせるベーコンの質と量を絶妙に合わせられる必要があると。


なので、色々と考えていくと、ベーコンエピが旨いパン屋は旨いパンを作れることは当然として、自分が作ったハードバゲットの味と使うベーコンの味をしっかり把握して最適な分量調整が出来る舌を持っていることになる、と思うのだ。

そこから考えると、そんな良い舌を持っているパン屋のパンならなにを食べても美味しいはずだよね? という理論が成り立つはずで、つまり『ベーコンエピが旨いパン屋ではなに食っても旨い』という理論に行き着いた、という話です。


◆◆◆


学生時代に利用していたパン屋。とにかくベーコンエピが旨くてヘビロテしてたが、原材料高騰が叫ばれる頃、ベーコンエピの値札に『ベーコン変えました』の文字があり、嫌な予感がしたが案の定、美味しくなくなっていた。

その時『あぁ、ベーコン1つでこんなに味が落ちるんだ』と驚いた記憶があるのだが、その時から初めてのパン屋では必ずベーコンエピを注文するようになった。


誤解なきよう1つ言っておくと『パンは旨いけどベーコンエピがイマイチ』な店も普通にあるってこと。

つまりこれだけでパン屋の質が計れるわけではないけど、それでもベーコンエピが旨い店は大体他のパンも旨いのはガチだと思ってる。


……いやまぁ長く語ってきたけど結局のところ、僕がベーコンエピが好きなだけって話ですよね。

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