韓国漫画と中国漫画の傾向から見る国民性の違いと流行の傾向
最近、本を紙で買うという習慣がなくなり、電子書籍で読むようになってきたせいで、スマホで読みやすい韓国漫画と中国漫画をよく見るようになってきたのだけど、何作品か読んでいると日本漫画とは違う傾向のようなモノが見えてきた気がしたのでまとめておきたいと思う。
◆◆◆
まず韓国漫画。
作中のエリートキャラ、悪役キャラなどが『大財閥の御曹司』なことが印象的。
要するにスネ夫キャラ、ジャイアンキャラ等が大体、大財閥の御曹司になるのだ。
「でもスネ夫の父親も会社社長だよね?」
と思う人もいるかもしれないけど、骨川家の金持ち度って比較的常識的な範囲というか、確かに金持ちではあるけど『あぁ、これぐらいの金持ち一家の子、自分も学生時代に見たわ』と思えるぐらいと言うのかな。
まぁこれならどの町にもいるよね?というぐらいのレベルで一般人でも想像が出来るレベルの金持ちだと思うわけですよ。
しかし韓国漫画のそういうキャラの金持ち度って国有数の金持ちというレベルなんですよね。
そして主人公が成り上がる系の話ならライバルキャラ、悪役キャラと、そしてヒロインが大財閥の関係者になってることが多いのも印象的。
なんというか、韓国におけるエリート、権力者、悪人、富裕層、憧れの的とかそういうのが全てそこに集中しているようなイメージ。憧れと憎悪を一点に引き受けてるような感じかなと。
しかし、何故このことが印象的に感じるかというと、何かにつけて大体は大財閥がキャラ設定として使われるからなわけですよ。
例えば、お嬢様ヒロインが出てきたらそれは大財閥の令嬢だし、金持ちの悪役キャラが出てきたら大財閥の令息だし、主人公と対立する悪役組織は大財閥だし、主人公を助ける組織も大財閥だし、女性向けの恋愛作品で主人公の相手役になるのは大財閥の令息だし、主人公のライバルキャラも大財閥の令息だし。
これが日本漫画なら、例えば花男ならF4の中にも茶道の家元の子がいたり、桜蘭高校ホスト部だと武道の名家の子とか貴族の末裔がいたり、経済力以外、例えば伝統とか文化的な要素で評価を受けるキャラがいるけど、韓国作品の場合はそれがあまりない感じがする。
だから妙に印象に残る感じ。
そして作中の大企業の権力が異常に強い傾向もあると感じる。
大企業を敵に回すと国内では完全終了、みたいな描写とか。ベンチャー企業が画期的な発明をしても大企業に売るしかなくなるとか。
日本人からするとちょっと違和感がある描写になっている。
これは韓国のGDPの1/5を作り出していたりする企業があって、サムスン帝国とも言われる国ならではの感覚なのかもしれない。
あとこれは翻訳の問題なのかもしれないけど、父親の呼び方がどの漫画も『お父さん』に統一されているのが謎い。
傲慢そうなキャラとか荒くれ者キャラでも父親を呼ぶ時は「お父さん!」と呼ぶから違和感が半端ないわけです。
複数の漫画でこうなっているから何らかの共通した事情があるのだと思うけど、そこが見えてこないから謎なんですよね。
そして韓国漫画は大体ローカライズされる時にキャラと舞台を日本に変えているので、キャラの名前が日本人名に変わり、主人公が生まれた場所が日本になる。
そのおかげで少々おかしなことが起こっていたりする。
まず複数の国が出てくるような展開の作品でも韓国という国が出てこなくなる。
それにちょっぴり扱いが悪くて変な名前の謎のアジアの島国が出てくる場合もある。
ドコノクニナンダロウナー。
でも、基本的に漫画に関しては日本人と韓国人の感性的なモノは近いんだろうなと感じる。
面白いと思ったり嫌だと思ったりの感覚の部分の話。
↓に書く中国漫画の傾向を見てると余計にそう感じる。中国漫画は日本人的な感覚との違いを大きく感じるから。
なので韓国漫画は違和感なく見れると個人的には思う。
言われなきゃ韓国漫画とは気付かないぐらい。
◆◆◆
そして中国漫画。
中国漫画は武侠作品が異常に多い印象。
武侠モノとは、簡単に言えば中国版時代劇といった感じのモノと言っていいと思う。
系統的には日本で言うところの水戸黄門とか暴れん坊将軍などの歴史系勧善懲悪モノに近いけど、武侠モノは武術家を主役・主軸として描いている。
武術と言ってもリアル系のカンフーではなく、ドラゴンボール的な方のだけど。
簡単に言うと、日本の(歴史モノは除く)時代劇では主に侍が侍としての武力や地位を使って悪を成敗していく展開になるけど、中国の武侠モノでは中国拳法の武人が修行したりして力をつけて悪を成敗していく感じ。
そして現代の武侠モノではそこに成り上がり要素とか恋愛要素(或いはハーレム要素)に、モノによっては異世界転生要素とかが含まれているようで、恐らくそのおかげで若者からの支持も集められたのだと思われる。これに関しては、言い方は悪いけど高齢層向けに半ばなってしまっている日本の時代劇とは少し違う感じだろうか。
面白いのが異世界モノとかSFでもとりあえず武侠入れとけ感があること。
中国では本当に武侠モノが人気なんだなと感じる。
しかし、中国の武侠モノを見ていて日本人とは感覚が違うな、と思ったところがあって。
それは、事が起これば主人公が容赦なくアクセルを踏み込んでいくところなのだ。
日本の時代劇の場合は、
「助さん格さん!懲らしめてやりなさい!」
↓
「もういいでしょう!」
↓
「この紋所が目に入らぬのか!」
↓
「奉行から追って沙汰があろう」
になるけど、
中国の武侠モノの場合は、
「王さん張さん!懲らしめてやりなさい!」
↓
「はっはぁー!汚物は消毒だっ!」
↓
「全員、ぶっ○したぞ!」
みたいな。
一言では言えないけどこんな感じの違いがあるように感じた。
『こいつは敵なんだから潰すのが普通だよね?』的な。
勿論、日本でもそういった主人公がやりすぎな作品はあるのだけど……説明が難しいけど、そういうのともまたちょっと違う感じがしてる。
それに僕が読んだ限りだと、中国漫画はかなりの確率で主人公がそういった感じのような気がする。
誤解しないでいただきたいのは、別にそういった作品が悪いと言っているわけではなくて、単純にそういった物語が中国では傾向的にかなり多いように感じる、という話。
なんかこう……日本でそこまでやっちゃう作品を書くと、流石にやりすぎすぎてむしろ読者に引かれてしまうのでは?と不安に感じるラインをどの主人公達も簡単に飛び越えていってしまうイメージ。
勿論、元々そういった容赦ない無茶苦茶やるタイプのキャラがそういった行動を取っている。といった作品は日本にもどこにでもよくあるし、それならばなにも問題はないと思うのだけど。そういったモノではなくて、いかにも武侠という名から想像出来るような、義に生きて礼節を知っている的なキャラが主人公なのに、いざ相対する者が敵となれば容赦なく手段を選ばず潰しに行く的な感じにやっちゃうところが余計に気になる感じ。
そのキャラ付けなのに、この主人公、情け容赦なさすぎません?みたいな。
あとは、そういう主人公なのに、かなり打算的というか腹黒い一面を普通に見せることとかあってちょっと困惑する場面もある。
特に主人公が力を手に入れた瞬間。それまでおとなしそうな性格をしていたのにいきなり豹変し、口の端に笑みを浮かべながら反逆し始めるような、そんな描写。
それって日本では良くてダークヒーロー的な扱いになるし、普通なら悪役キャラがされそうな描写。下手すると小物キャラが描かれる時に使われそうなモノだと思う。
そういうのって恐らく日本ではネガティブな印象を与えるような行為で描写なんだけど、中国ではそうではないのかな?と不思議に思う。
『強い者が自由に力を振るってなにか問題があるのか?』と、真顔で問われてるような、そんな気分。
それと、ぶっちゃけ全てのキャラクターが露骨に主人公の引き立て役になることが多い印象。
主人公に手軽にぶっ飛ばされるゴロツキが引き立て役になるのは当然としても、主人公の親友までが露骨な引き立て役にされているのが分かる描き方だったりとか、かなりあからさまにやる印象。
例えば、主人公の親友がゴロツキに絡まれてぶん殴られていて、そこで主人公が助けに入ってゴロツキをぶっ飛ばし、親友が「主人公はスゲーぜ!」みたいな。
或いは主人公の親友キャラの見た目や性格がアレな感じだったりとか。
そして敵キャラとかライバルキャラがあからさまに主人公を見下していて、それを主人公がぶっ潰すという展開をよくやりがちな印象。
それを何度もこするので、主人公が何度能力を示しても必ず主人公を見下す変なキャラがどこからともなく現れるような違和感のある展開がある。
それらの一連の流れをスムーズに行うために物語の最初に主人公をどん底に叩き落とし、そこからの下剋上をする展開を書きがち。というか、かなりこのパターンな気がする。
ここまであからさまにやるのは日本の作品でも韓国の作品でもあまり見ない気がする。
主人公のタイプ的には、
①義に生き礼節を知ってるタイプ
②偉そうな王様キャラタイプ
大体この二種類が多いイメージ。
上で書いたように、①タイプは違和感があって、むしろ②の方が最初から傲慢さを前面に出してるから個人的には主人公に好感が持てる。
あと、両親。特に父親や父親キャラが主人公に激甘な印象。
主人公がゲスくてもクズ行動を取っていても父親は諌めることも少なく全部許すみたいな。
この辺りは一人っ子政策で両親とその両親の6人から溺愛されて『小皇帝』『小公主』と呼ばれるぐらい大事に育てられるようになる中国独自の状況から来ているのかも。
で、個人的に中国漫画の最大の問題点だと思うのは、どの漫画にも武侠要素を追加してるため武侠的な修行を主人公がするのだけど、そもそも武侠のシステムをまったく説明しないから、外国人からするとなにがどうなってるのか分かりにくいところだと思う。
主人公が武功書と呼ばれている武術の極意が書かれた書物を読んで技を習得し、強くなったのは理解出来るけど、それがどう強くなったのか、どれぐらい強いのか、凄いのかが分かりくいんだよね。
修行のシステムもよく分からなくて。強くなったら階位が上がり、強さによって『先天』とか『化境』とか呼び名が変わるけど、その辺りの説明がないから瞬間的にイメージしにくい。
ファンタジー作品のレベルシステムとランクシステムは分かりやすくて偉大なんだなと改めて思うところ。
◆◆◆
総合的に結論を書くと、韓国漫画は日本人にも違和感なくかなり読みやすいと思う。
展開の持って行き方とかも自然に感じるし、キャラの性格とか心理にも違和感がない。
でも中国漫画は全体的にちょっと違和感がある。ってのが個人的な感想。
キャラにしても設定にしても描写にしても、かなり露骨な描き方が多い。
よく日本でもなろう系のチートモノ作品がご都合主義的な展開が多いと批判されたりするけど、中国漫画はもっと露骨にそれをやってくる感じ。
基本は『こまけぇこたぁいいんだよ!』の精神で流れとかより主人公が活躍出来る要素をガツガツぶちこんでくるので、そういうのが好きな人には良いかもしれない。
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