機械翻訳の発展は小説家を殺す猛毒か、小説家を活かすエリクサーか

最近よく未来のことについて考えてるんですよね。

というのも、この10年5年の技術の進歩が凄まじすぎて5年後10年後の未来は今の人類が想像出来ないぐらい激変した世界になっていそうなので注目せざるを得ないというか、ここをしっかり把握して付いていかないと『小説家』という1000年前から続いている存在であっても普通に時代に取り残されて消えているかもしれないという危機感があるわけです。


例えば、定義にもよるけど『WEB小説』という存在は10年前には既にあったし『小説家になろう』も2004年4月2日設立だし、ケータイ小説を除けば今のなろう系WEB小説の書籍化が始まったのは2010年頃(うろ覚え)だったはずで、それが本格化してきたのは2011年頃から。せいぜい8年9年というぐらいの話。

つまり10年前、運が良ければ書籍化の可能性は多少あるにせよ、本気で書籍化を狙ってWEBに小説を載せようとする小説家志望者なんてほとんどいなかったはず。

10年で小説業界もそれぐらい変わってきている。

今から10年後には我々が想像も出来ないぐらいの激変が訪れていても不思議ではない、ということ。


そんな今、小説業界を激変させる可能性がかなり高そうな未来の技術は『機械翻訳』だと思う。

機械翻訳とは、文章をコンピューターが自動的に翻訳してくれる技術のことで、Google翻訳などと同じと考えていいと思う。現時点では翻訳する言葉の文法がしっかりしていればそれなりに実用的な文章に訳せるが、小説などを翻訳するのは難しいというぐらいのレベルらしい。

以前どこかで読んだことがある話で、

『イギリスのクイーンのボヘミアン・ラプソディ』

という文章を機械翻訳にかけた場合、『イギリスのクイーン』をバンドのQueenかエリザベス女王か判別出来ずに文章がおかしくなるとか、そんな話を見たけど。様々な専門家の意見を読む限り小説などの型にはまらない書き方の文章を翻訳するのは将来的にも難しいという見解が現時点の主流である気がする。


しかし、不可能だと思われていたことが数年後に覆るなんて稀によくある話で。機械翻訳に関しても、ある日突然、新技術が開発されて一気に世界中の文字や音声のデジタルデータが翻訳されてインターネットがボーダレスになる可能性も否定出来ない。


では、もしそんな日が来たらどうなるのか。

ここでタイトルの話になるけど、小説家に起こるであろう大きな出来事は2つある、と予想してみよう。

まず、日本の(日本以外でも世界中のWEBサイトにある)小説を読む人がグローバル化すること。

今までは(日本では)日本で売れた小説が出版社によって翻訳されて海外に出るという流れがほぼ必須だったけど、これがもっとダイレクトに繋がるようになるだろう。

もしAmazonがそういう高性能機械翻訳を開発したとしたら、作品を超低コストで翻訳して海外へ向けて販売するようなビジネスモデルを確立しようとするだろうし。

もしGoogleがGoogle翻訳を進化させてそういうモノにした場合、もっと根本的なところから全てが変わり、そもそもWEBでは自国のサービスを使う必要がなくなってしまう。

言葉の壁がなくなったのなら世界中に存在するサービスの中からそれぞれ個々人が使いやすいサービスを選んで使えばよくなる。

世界中の日本のサブカルが好きな層が日本のサイトに集まってくるかもしれないし、逆に我々は日本のサービスを使う必要性が薄くなって、例えば小説なら小説家になろうの何十倍ものユーザー数がある英語圏や中華圏の小説投稿サイトを使ってもよくなる。

そうなると読者数も激増するだろうし、もしかすると書籍化やメディアミックスを海外の企業が提案してくるようになるかもしれない。

それはかなり大きなチャンスになるだろう。

例えば、日本では日本人にまったくウケなくて小説投稿サイトの片隅で眠っている作品がアメリカ人にはウケるかもしれないし。もっと言えば何故かケニアのユーザーにはバカウケで現地で出版されてベストセラーになる可能性だってある。

が、現時点ではそういう作品を日本で書いても日本でウケない時点で海外展開はされないので日の目を見ることなく消えてしまう。

それはもう普通に消えてしまう。

それが普通に評価される場に届く可能性が出てくるはずだ。

これは日本的な評価基準からの開放で、大躍進する人も増えるだろう。


そしてもう1つ。

言葉の壁がなくなって、誰もが世界中のサービスにアクセス出来るようになるということ。それはこれまでチャンスの可能性すらなかったような世界中の人々がチャンスを得られるようになるということだろう。

近年、中国企業がアフリカへの投資を拡大しているが、実際どういう投資を行っているかと言うと、例えば中国の通信会社が水道すらないようなアフリカの奥地にまで鉄塔を建て、現地の村人に無料で携帯電話を配っていると。そのおかげで実はアフリカも現在はかなり3Gの通信網が整ってきつつあり、携帯電話の普及率もかなり高くなってきているらしい。

つまり、以前はただ貧しい国だと思われていた多くの国の人々が世界へと繋がれる下準備は現時点でも整ってきていて、これが機械翻訳を得て言葉の壁を超えて世界へダイレクトに繋がったとしたらどうなるかと。

アフリカの田舎の村に住む子供が携帯電話で執筆した小説が世界中の人々を唸らせるような超名作で、ノーベル文学賞を取る時代が来るかもしれないのだ。


所詮、我々日本人は先進国のインフラを使って最低限のリテラシーとマーケットへのアクセス権を得てチャンスを与えられていただけで、そのあたりが技術で世界中ボーダレスになってきた場合、これまでインフラがないせいでチャンスを得られなかっただけの世界中の人々とガチの能力勝負することになるわけで……。

ぶっちゃけこれが幸福な結果をもたらすか不幸な結果をもたらすかは分からない。しかし人によって大きく明暗を分けそうだと感じるところ。


この機械翻訳という謎の劇薬は、多くの小説家を殺す猛毒になり、多くの小説家を活かす霊薬にもなりそうな気がする。

まぁ未来は分からないけど、これについては少し考えておいても損はないかなと。

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