とある作者の執筆日記
刻一(こくいち)
異世界のお酒と言えばエール
★……で、エールって何?
★この話の後に直接つながる閑話的なお話を、『深夜、コンビニ、探訪録 』の第12話『★エールを探しに行く』で書いています。
が、読まなくても大きな支障はないと思います。
★冒頭部分の話は『サマル振りヒーラーの異世界冒険~神聖魔法が便利すぎて怖い~』の第21話の話になります。
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「ハンスさんは残ったエールをグビッと一気飲みする……っと」
キーボードをカタカタを叩いて、文字を入力していく。
今、書いているのは主人公が酒場で先輩冒険者から情報を集めているシーンだ。ここは主人公と読者がこの異世界のシステムについて一つ理解する……はずの場面で、地味に無くてはならない場面になっている。
その場面を書こうとした時、『ファンタジー』『冒険者』『酒場』と単語が浮かび、そして出てきたのが『エール』という飲み物だった。
「やっぱりこういう場面にはエールだよな」
仕事終わりの冒険者が酒場でその日の獲物について語り合いながら、木製のジョッキでゴクゴクっとエールを飲み干す。
なんだか凄く絵になっている。
やっぱり中世ファンタジーにはエールではなかろうか。いや、中世ファンタジー、と言うか、ファンタジー世界の庶民の酒場的なところでガブガブと飲んでいるようなイメージ。
やっぱりエールだよな。
うん。間違いない。エールだわ。
…………
……
「……で、エールって何だ?」
何だろう?
エール、エールってずっと何となく言ってたが、エールが何なのかまったく知らない。
いや、ビールの親戚か何かで、似たような味なのは分かってる。
……ビールに似たような味だよな?
そういやエールって飲んだことないぞ……。
飲んだこともないのにエールが美味い美味いと書くのか?
うーん……それは何かダメな感じがするぞ。せめてどんなモノかぐらいは理解しときたい。
「……じゃあ、まぁとりあえず適当にググってみますか」
えぇっと……『エール』で、検索……っと。
キーボードをカタカタっと叩いて検索する。
中世ファンタジーも良いが、現代も便利な箱があって良いね。
「エール、YELL……歌」
……これは某生物大好きな人の歌だわ。
「エール、応援……」
まんまやな。違う。
「エリウー・イェール……」
アメリカ生まれのイギリスの慈善事業家。コネチカットに大学を作る際に最大の寄付者となる。それが今日のイェール大学である。
へぇーそうなんだ。それは知らなかったわ。
いや……違う、そうじゃない。
「これはダメだ。検索ワードを『エール ビール』に変更しよう」
またカチカチカタカタとググってみる。
……えぇっと、なになに。ラガーとエールの違い、か……。
ラガーとエール?
何か根本的なところから勘違いしていたような感じがする。
「つまり、エールはビールの親戚ではなく、ビールの中にラガーとエールと言う種類がある、という事か」
どんどん読み進めて、何となくエールが何なのか理解出来てきた。
エールとは麦から作られた醸造酒で、常温で作れる事から古くから飲まれてきた飲み物。
元々はホップが入っていない増醸酒の事。
後にホップ入りのエールが一般的し、今は発酵方法の違いでラガーとエールを分けている。
ラガーが下面発酵でエールが上面発酵と呼ばれている。
低温で作るラガーの方が雑菌の繁殖を抑えられ作りやすい事は作りやすかったが、昔は低温を維持する事が冬場にしか不可能だったため、ラガーが一般化したのは冷蔵庫が誕生してから。
なるほどね。だからエールに中世ファンタジーのイメージがあるのか。
じゃあ中世ファンタジーにエールってのは何もおかしくはない、のかな?
さらに検索していく。
エールとラガーの味の違いは、ラガーがスッキリした味わいなのに対して、エールは濃厚な味と芳醇な香りが特徴。
あれっ……、何だかイメージしてたのと違うな。
エールってもっと大味な飲み物だと思い込んでたわ。だから現代ではラガーが主流なのだとばかり……。
「……あぁラガーが圧倒的に強いのは日本の話で、ヨーロッパではエールも人気なのね」
何故、日本ではラガーが主流になっちゃってるのだろうか?
気になるが、今は関係ないか。
「うーん……。エールについては何となく理解は出来てきた。あとは……やっぱり味が気になるな」
ラガーより濃厚で芳醇なビールって何だか物凄く美味しそうに感じる。
これは是非とも一度、試してみたい。
いや、今すぐに試してみたい!
「エールってコンビニに売ってたりしないかな?」
いや、売ってたら流石に気付いてるだろうし、それはないか。
……まぁとりあえずググって確かめてみよう。
『エール コンビニ』で検索っと……。
またキーボードをカタカタカタ、ターン!とスタイリッシュに叩いて検索する。
……えーっと、なになに? コンビニやスーパーで買えるビールについて。
『よなよなエール』『ホワイトベルグ』『白濁』『プレミアムモルツ』『百人のキセキ』などがあると。
へー、コンビニで買えそうなエールって意外と多いぞ。
今までコンビニよく行ってたけどまったく気付かなかったよ……。
「じゃあとりあえず、コンビニで買ってきましょうかね」
そうして、とある作者は深夜にコンビニへと出かけるのであった。
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