2
そんなある日
砂場でトンネルを掘っていた一人の男の子が
僕を見つけて呟いた。
「あれ?ボール?」
一瞬身構えた。
動けない僕をまた…埋めてしまうの?
今度こそ…
真上に広がる空さえ
見えなくなってしまうの?
そっと僕に触れたその手で砂を退かし始めた。
「サッカーボールじゃん!」
砂を払ってその子の瞳は僕を真っ直ぐ見つめていた。
「汚れちゃってるけど…使えるよね?」
ポーンと僕を蹴った
空に届きそうになるこの瞬間が僕は大好き。
まさか…また空を飛べると思わなかった。
「使えるじゃん!!」
男の子はまるで宝物を掘り当てたような笑顔で、僕を抱きしめた。
「綺麗になるかなぁ?」
水道に連れていかれて
水をかけられ
ぞうきんでゴシゴシ拭かれた。
くすぐったかった。
「よ~し。ピカピカにしてやるぞ!」
その子は楽しそうに僕を磨きだした。
すっかり見違えるほどピカピカに変身した僕を満足げにみつめると
ボールがたくさん入っている籠に僕を入れた。
磨くだけ?
僕はちょっとガッカリした。
けれど…
その日を境に、子供たちが取り合うほどの人気者に僕はなった。
「このボールでサッカーすると上手くなれる気がする。」
誰かが言ってくれた。
「このボールすごい飛ぶんだよ!」
誰かが言ってくれた。
みんなが、順番を待って使ってくれる。
僕はなんども、何度も空に近づいては
みんなの笑顔に戻って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます