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そんなある日

砂場でトンネルを掘っていた一人の男の子が

僕を見つけて呟いた。



「あれ?ボール?」



一瞬身構えた。


動けない僕をまた…埋めてしまうの?


今度こそ…

真上に広がる空さえ

見えなくなってしまうの?



そっと僕に触れたその手で砂を退かし始めた。


「サッカーボールじゃん!」


砂を払ってその子の瞳は僕を真っ直ぐ見つめていた。



「汚れちゃってるけど…使えるよね?」



ポーンと僕を蹴った

空に届きそうになるこの瞬間が僕は大好き。


まさか…また空を飛べると思わなかった。



「使えるじゃん!!」



男の子はまるで宝物を掘り当てたような笑顔で、僕を抱きしめた。



「綺麗になるかなぁ?」



水道に連れていかれて

水をかけられ

ぞうきんでゴシゴシ拭かれた。

くすぐったかった。



「よ~し。ピカピカにしてやるぞ!」



その子は楽しそうに僕を磨きだした。


すっかり見違えるほどピカピカに変身した僕を満足げにみつめると


ボールがたくさん入っている籠に僕を入れた。



磨くだけ?



僕はちょっとガッカリした。



けれど…

その日を境に、子供たちが取り合うほどの人気者に僕はなった。



「このボールでサッカーすると上手くなれる気がする。」



誰かが言ってくれた。



「このボールすごい飛ぶんだよ!」


誰かが言ってくれた。



みんなが、順番を待って使ってくれる。



僕はなんども、何度も空に近づいては

みんなの笑顔に戻って行った。


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