あの空と笑顔と僕と。

東雲光流

1

気づいたらここにいた…。

ここはどこなんだろう?

僕は…なんでここにいるんだろう?


いつも大事にしてくれていたあの子はどこ?




目が覚めると

子どもたちの声がたくさんする。




『だれか!!助けて!!僕に気づいて!』



誰かに届くように

力いっぱい僕は叫んだ。




僕はサッカーボール。


砂に半分埋まった状態で動けなくなっていた。




砂場から見える建物の屋根に文字が書いてある。


『ひまわり幼稚園?

ここ…幼稚園?


なんでこんなところに?』



どうやってここに来て

なんで砂に半分埋まってしまって

そして…置いていかれたのか…。


僕は思い出そうとしたけれど

思い出せなかった。



見えるのは“ひまわり幼稚園”と文字のある建物と真上に広がる空だけ。




広い空に不安になる。


『早くだれか見つけてくれないかなぁ…

僕はここに居るのに…』


呟いてみても誰にも声は届かない。



晴れている日は

外で遊ぶ子供たちが見つけてくれるんじゃないかと期待した。



誰もいなくなる夜は

寂しくて心細かった。



雨の日は

汚れていく自分を感じながら、悲しくなった。


けれど、一番悲しかったのは

待ち望んでた誰かが気づいてくれた日。



「わぁ~汚いボールがあるよ~」


と言って、触ろうともしてくれない。



「もっと埋めちゃえ!」


と砂をかけられた。



空気はまだパンパンなのに、心が萎んでいくようだった。



僕はもう、

見つけてもらう事を諦めたんだ。

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