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「もう…治療やめようか?


そんなに辛い思いをしてさ

お金もこんなにかかってさ


治療する意味…本当にあるのかな?

そこまでして…

子供を手に入れる必要が本当にあるのかな…?」


彼の言葉がつらかった

子供があんなに好きで、欲しがっていた彼が


諦めようとしてる?


「なんで?

私がダメだから?」



「違うよ!!

でも、きみが…

そんな顔のきみは

もう見たくないんだ。


二人だけの生活でもいいんじゃない?」



なにも言い返せない。



生理が来るたびに

塞ぎこんで

泣いて

喚いて



彼だって疲れている。



わかっている…

わかっているのよ…。


『でも、赤ちゃん欲しいのよ。

私だってママになりたいの!』


言えない…

言えなかった。



諦められないのに…


彼に言えない。


頬を何かが撫でて行く


風?



風が吹いてきた?



あぁ…

窓があいていたんだ。


空気の入れ替えしようって思って

急に違和感でトイレに駆け込んで…

だから、そうだ…

窓が開けっ放し…


閉めなくちゃ…肌寒い…身体冷やしたらダメなのに…。



ベランダ…


最近何もする気になれなくて、汚れて散らかっている

片付けようかな…


ふと目をやると


転がっている小さな鉢

枯れてしまった小さな芽



まだ…捨ててなかったんだっけ?

枯れてしまった小さな…


「えっ?!」


枯れてしまった?!



「ねぇ!!これ!!みて!!」



思わず大声で彼を呼んだ。



「ん?どーした?」



「こ…これ!!」



ベランダに出て

小さな鉢を大切そうに抱えて微笑んだ彼女

喜びと

驚きで

手が震えている。


「花が…小さな花が咲いてるのよ!!」


それは

小さなちいさな

真っ白い朝顔だった。






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