ボーイミーツガール2
「さっきから携帯見ては首を傾げてどうしたの?」と声をかけてきたのは職場の先輩である田中沙希子であった。黒髪を真ん中で分けた髪型の似合う美人であり、1番職場で歳の近い先輩でもあるからか比較的に仲良くさせてもらっている。
「美容室の予約を迷っていただけです。僕美容室の無理に話す感じが得意じゃなくて。」
「確かに気持ちは分からなくもないなー。けど仲良い人とかできたら楽しいし、こういう仕事してると人と話して経験値貯めて自分を構築していくみたいなの大切だなーって思う。」
沙希子さんの言っている事は正しい。
20歳も越えれば僕は1人で生きてきたなどと言う人は本当に少ないと思う。様々な人と出会っては関わり良い事も悪い事も含めて自分を自覚し成長していくものだと思っている。
しかしそうだとは分かっていても必要以上に他人と関わる事を避けたりし、自分の知っている界隈の中で心地よく生きていたい人も少なくはないだろう。
僕だってどちらかといえばそういう人間である。
「話し飛んじゃうんですけど、沙希子さんは後悔とかあんましなさそうですよね。」
僕のいきなりの言葉にも田中沙希子という人間は驚いた雰囲気も出さずに返答をしてきた。
「後悔することだってあるよ?まあ、でもそれは何か行動した上での後悔だからそんな重荷にはならないんだけどね。よしっ、休憩終わり、お先に!」
そう言って先に休憩室を出て言った沙希子さんに影響されたのかは分からないが、僕は半分無意識で予約ボタンを押していた。
その日の仕事を終え、帰宅しながら携帯に届いた予約確定のメールを見ながらため息をついていた。
まださっきの自分の行動を理解できていない。
というのも僕らしくないからだ。
先輩にいいアドバイスをもらったからといって半分無意識のままそのまま行動に出るタイプではない。
ずっと言っているようにそうしないで後悔する生き方こそが僕らしい。
まあ予約なんてものはこの便利なご時世キャンセルもボタン一つだ。そうこの世界、逃げることなんて簡単にできてしまう。
しかし、僕だっていつまでも後悔病でいたいわけではないのも確かではある。
そう思いながらいつもと同じ最寄駅でおり、いつもと変わらない街並みと人達をみながら、いつもと違う帰り道を通って、そして僕はいつもと違う選択をしてみる事にした。
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