‐バーテンダー異世界に転移する‐

時刻は夜、高層ビルのバー、最上階にあるこの店からは所せましと並ぶビル群、地上で行き交かう車に光、幻想的な夜景を楽しめるパノラマ席、グランドピアノから流れる穏やかな旋律、大人のデートスポットであり特にバーテンダーの女性が美人で作るカクテルはとても美味く様々な客層に人気であり本日も満席で店内の入り口には空席待ちの客がいる。


「楓は今日も綺麗だね…」


「…なんですかいきなり?」


「君の瞳に乾杯!!」

「部長なにいってんすか!楓さんすいません…でもお綺麗ですよ」


「ありがとうございます」


女性バーテンダー日暮 楓27歳、実家が京都で酒屋をやっており自身も酒好きのことからアメリカや中国、イタリアやフランス、数多くの国を若い時から渡り飲み歩き、飲むことだけでは飽き足らず製法など様々な知識を身に着けた。

今現在は各地を周っていた際にしりあった店のオーナーと知り合いその伝で働かせてもらっている大好きなお酒に囲まれた最高の職場…今日も彼女は笑顔である。



「今日もお疲れさまでした」


仕事を終えて帰宅の準備をし帰りの挨拶のためまだ残っている店員達に声を掛ける


「楓さんおつかれさまです」

「今度でいいので私にもカクテルの作り方教えてください」

「あ、ずりぃ…俺にも!」

「ずるいって…そもそも君まだ未成年でしょ」

「ちぇ~」


「帰るついでにゴミだしておくよ…これね…結構重い…」


今度、カクテルの作り方を教えることを約束し本日でた可燃物の袋を持ち店を後にする。ビルの店舗フロアから共用スペースにでてダストシュートの蓋を開けて可燃物のゴミを持ち上げて…


「あ~ほんと重い…女性店員も多いからもう一回りでも小さい袋にするように意見書だそう…それにしても30近くなって体にもガタがでてきたか・・・いやいやいやまだ27!!こないだ27になったばっかり!」


ダストシュートにゴミを投下したところで…


「え?やだ…時計が引っかかって…嫌…誰か助け…きゃああああああああああ」


楓の叫び声を聞きつけて複数の足音が近づいてくる


「いま誰かの叫び声聞こえなかったか?」

「気のせいだろう…それにしても誰だよ開けっぱなしの奴、ちゃんと閉めろよな…開口がひろくってあぶねーんだよな~」

「早く帰りましょうよ先輩たち…そういえばダストシュートって廃止を進めていくんですよね転落事故とかいろいろと多いみたいだし…」


男たち3人が入ってきた時には誰もいなかった…



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「体が動かない…なんか暗い…臭い…私はダストシュートに落ちて…」


体に触れるやわらかい茶色く濁ったなにか…これがクッションになったのか生きている…鼻を突くような臭い。昔に外国のトイレでこんな臭いを嗅いだような…というかそのままのような…


「うまく立てない…ほんと臭い…なによこれ!」


周りは暗く、悪臭はひどい、身動きはできず体は痛い…恐怖からパニックを起こしていると声が聞こえてくる。


「あれ~誰かいるんですか?…まさかね…早く清掃して新しいの準備しないと…まったく使用禁止と書いてあるのになんで使うかな~」


女性の声だ! 私は助けを求めた!


「誰かいるの? お願い! 助けて! 身動きが取れない… 」


「え、嘘…本当に誰かいる!! この奥かな? 今助けますね!! 」


少ししたら明かりが見えてきた…黒髪の女性…マスクをしている…清掃の人かしら、かなりの時間気を失っていたのか本来ならゴミ回収は早朝のはずなのに…


「大丈夫ですか?なんで汚物処理室に人が…フィンちょっと手伝って」


汚物?!え…この臭いってまさか…


「汚物処理の専門家とか転移してこないかな~お水槽とか発明してくれないかな…今はスライムに吸収させて臭いも魔道具使うしかないし…」


転移? スライム? なにを言っているの?


「よし…これで最後…女性の方でしたか! 大丈夫ですか? あっ私イズミっていいます!」


「助けてくれてありがとう…」


「社長この人臭いです…洗い流していいですか?」


「そうね…さすがに汚水まみれだし自己紹介は後にして…すいませんちょっと目をつぶっててくださいね」


なにがなんだか解らないが話が進み…もう一人の人物が


「水の妖精よ清らかな水の恵みを与えたまえウォーター!」


え? 妖精? 緑の髪に耳が長い? うわっぷ…水?!


「とりあえずここを出ましょう! それと…服もどうにかしないと…とりあえず家にきますか?」


「なにがなんだか分からないけど助けてくれてありがとう…あとお願いします。


イズミと名乗る黒髪の女性と緑の髪の女性に連れられて暗い場所を歩いていく…少しあるくと明るい通路にでる…さきほどいたような場所が通り沿いに何個もあるようだけれどもどう考えても私が働いているビルの施設ではない


「この梯子のぼりますよー、スライムの粘液がついてるから足元きをつけてくださいね?」


さきに上っていき私の後方にいた子が「どうぞお先に…」と声を掛けてくれる映画やアニメで見たエルフ?に似ているけ今は…梯子を上っていくとイズミさんが手を差し伸べてくた。


そして地上にでて私が見た光景は…映画などでしか見たことない景色が広がっていた…腰や背に下げた剣や斧、犬や猫、狐の尻尾らしきものが生えた人や竜の顔?広い通りの奥にはお城が見える…


「その驚き用は転移者かな?ようこそ王都リ・ワールドへ?改めまして私はイズミ!橘いずみ!」


「私は…日暮…日暮 楓」


「よろしくお願いしますね…それと隣にいるのがフィン、フィンは見ての通りエルフです」

「よろしく…」


「よろしくお願いします」


やはり彼女はエルフらしい、さきほどは暗い所にいたから容姿がみれなかったが腰までのびた綺麗な翡翠色の髪と賢明で神秘的な顔に全てを見通してそうな眼、薄い黄色の眼にはずぶ濡れで薄汚れた…


「いろいろと聞きたいこともあるんだろうし説明しないといけないけどまずは…お風呂と服をどうにかしないと…さすがに…」


「……すいませんお願いします」



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王都の地下から現れた賃貸屋二人と悪臭漂う女性、奇妙な三人は周りの視線を集めながら賃貸屋ISEKAICHINTAIへ向かう。

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