第14ワン 理由を教えて欲しいです

塩梅連候補は勧められるままにソファーに座って言った。

「私は、あなた方の力になれます」

もし、塩梅連候補がトメコさんの名前を出していなければ、だまし討ちまで疑ったかもしれない。そのくらい驚いた。

「えっと…、塩梅連候補は対立候補ですよね?」

まずは現状把握である。塩梅連候補が隣の選挙区の候補者などであればある程度納得はいく。

「私は対立候補でした。今では支持者です」

実にハキハキとした口調は、この候補者が耄碌したとか発狂したとかそう言ったものではないことを物語っていた。

そして、塩梅連候補はジョンの目を見つめて自らがジョンを支援する理由を語った。

話は全世界老人連盟の発足から始まり、老人連盟日本支部内部のクーデター未遂事件の話になり、その場にいた全員が何の話をしていたか忘れかけていた時にその名前は出てきた。

「そのクーデター未遂事件を鎮圧したのが、当時日本支部事務局長代理を務めていたトメコさんなんです」

「ワン!(トメコさんってなんかすごい人なの?)」

ジョンの疑問は最もであった。ジョンやマサルの知っているトメコさんはお祭りなどの行事で近所の人々に対して強力なリーダーシップを発揮することはあっても世界規模の組織の日本支部のクーデターを鎮圧するような手腕の持ち主には見えない。

「クーデターに関しては本題ではないので割愛させていただきます」

塩梅連候補はそう言ったが、ジョンもマサルもカナエさんもクーデターの話を聞きたくてウズウズしていた。しかし、肝心の塩梅連候補はそんな若者たちの態度は気にせずに先を進めた。

「クーデターを鎮圧したトメコさんはとある問題に直面しました。クーデター首謀者はすでに全員死亡しており、責任を誰が取るかで揉めてしまったのです」

「クーデターってそんなに激しいものだったのですか?死者が出るほど?」

マサルの質問に塩梅連候補はキョトンとした表情を見せたが、やがて納得して答えてくれた。

「ああ、別にトメコさんが鎮圧で殺してしまったわけではありませんよ。全員老衰です」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る