第6ワン 老人会を味方につけました
ジョンが河川敷の公園にいくと、6人ほどの男女がゲートボールに興じていた。6人の共通点はみな65歳以上であることと、老人会という地域のグループに入っていることだった。もちろん全員ゲートボールが大好きである。あまりに毎日いるので、「深夜に河川敷でゲートボールをしていた」「大雪の日に半袖でゲートボールをしているのを見た」「台風の日に…(以下略)」などなど怪談の類が生まれるほどである。そしてジョンの友人たちだ。
「ワン!(おはよう!おじいさん、おばあさん)」
ジョンが駆け寄ると6人はプレーを中断して集まってきた。
「おはよう、ジョン君。今日も一緒にゲートボールをするかい?」
おじいさんの親切な申し出にジョンは尻尾を振ることで答えた。そして背のひときわ高い、すこし意地悪なおばあさんがジョンの着ている服に気づいた。
「なんだいこの妙ちくりんな服は?選挙のたすきみたいだね」
ジョンは『妙ちくりん』と言われたことが気に障ったらしく低くうなったが、マサルはおばあさんの勘の良さに感心した。
「そうなんですよ。ジョンは今度の選挙に立候補することになったんです」
意地悪なおばあさんは「犬が選挙に出てどうするつもりだい?」といったがほかの5人は違った。
「ジョン君選挙に出るのか?これはジョン君が国会議員になるまで死ねないな?」
最初にジョンをゲートボールに誘ったおじいさんがそういうと。
「いいえ、私はジョン君が大臣になるまで死ねませんわ!」
隣にいた少しフリルのある服をきたおばあさんが対抗してきた。
「いや、俺はジョン君が総理大臣になるまで死ねん!」
普段は無口のおじいさんまで対抗してきた。
「みなさんまだまだですな。私はジョン君がアメリカの大統領になるまで死にませんぞ!」
高級そうなスーツにおしゃれなベレー帽をかぶった普段はクールなおじいさんまで対抗して不死宣言(注:アメリカ合衆国大統領は規定によりアメリカ出身者しかなることができいません)が出たところで上品さを漂わす長老格のおばあさんが話しかけてきた。
「ジョン君にはいも一緒に遊んでいただいていますからね。もちろん我々老人会としても微力ながら協力させていただきます」
「トメコさん、ありがとうございます」
「ワン!(みんなありがとう!そんなことよりゲートボールやらない?)」
「ジョンは早くゲートボールがやりたいみたいですね」
見ると、ジョンはすでにボールのほうに向かって駆け出していた。
それから、ジョンは老人会の皆さんと一緒にゲートボールに興じていた。といってもジョンはゲートボールで使用するスティックを持てないので必然的にルールを無視したゲームになる。
マサルがベンチでゲートボールを眺めていると、長老格のトメコさんが隣に座ってきた。
「マサルさん、私はかれこれ1世紀ほど生きていく中で様々な人物を見てきました。そして大成する人物には言葉にはしづらいですがある共通点があることにきづいたのです」
マサルは、「なるほど」と相槌をうつ。
「そしてジョン君にはその大成する共通点を見事に体現していると私はおもいます。真に偉大な成功者となる運命にあるといっていいでしょう」
その『真に偉大な成功者になる運命』のシェパードはおじいさんの打ったボールがゲートに入ることを泥だらけになりながら阻止していた。
「成功者への第一歩はゲートボールとサッカーの違いを覚えることですね」
トメコさんはそう呟いた。
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