選挙編
第2ワン それは3か月前に始まりました
時は3か月ほどさかのぼる。埼玉県某所、弁護士であるマサルは自宅の整理された居間でテレビを見ながら愛犬ジョンと話していた。ジョンは毛並みの良い引き締まった体をリラックスさせ、70インチテレビの画面を凝視している。
その隣では飼い主のマサルがいかにも寝起きといった格好でコーヒー片手につまらなそうにテレビ画面を見つめていた。
「こんなの見て何が楽しいんだい?」
「ワン!!(テレビの醍醐味は非現実じゃないか。これは最高のエンターテイメントだよ)」
「そりゃ、君にとってはエンターテイメントかもしれないけど、この議論の推移で生活が変わりかねないと思うと見てて疲れるよ」
1人と1匹が見ていたのは国会中継だった。画面の中ではおそろいに見える高級そうなスーツに身を包んだ年配の男、時々女が必死な形相で喧k…、失礼、議論をしていた。
ここまでで疑問に思った方もいるだろうが実はマサル、愛犬のジョンと会話ができる。ほかの犬とは出来ないが。
一応保証するが、この会話はマサルの幻聴ではない。
「ワン!(マサル、相談があるんだけど)」
「なんだい?」
「ワン!(僕もこれやってみたい)」
「コーヒーが飲みたいのか?犬ってカフェイン大丈夫だったかな?」
「ワン!!(違うよ、テレビの中のやつだよ!)」
「…」
「…」
「すると何か?国会議員になりたいって、そういいたいのか?」
「クーン(そうそう!それそれ!やってみたい!あの立派な椅子の上で思いっきり遠吠えがしたい!)」
ジョンがしっぽを千切れんばかりに振りながら足に体をこすりつけてくると、マサルからジョンを国会議員にする方法を考える以外の選択肢はきれいさっぱり消えたのであった。
「よし!選挙管理委員会に電話してみよう!大丈夫コネがあるから」
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